週末はちょっとディープな福井旅へ。心ときめく、個性豊かな「私設ミュージアム」巡り。

    週末はちょっとディープな福井旅へ。心ときめく、個性豊かな「私設ミュージアム」巡り。

    ぷかぷかクラゲ、異国の音色、蘇る山野草、そして時を超えて輝く鉱物。

    ひとつの分野を愛し、情熱と時間を捧げた先に生まれた、福井県内の個性豊かな4つのミュージアムを訪ねます。

      古代生物ミュージアム【福井市】

      黒ベースで落ち着いた雰囲気のある店内。ライトの下でゆらゆら動くクラゲは幻想的

      自由にたゆたうクラゲの美しき謎。

      「皆さんがよく目にするミズクラゲや、長い触手のアカクラゲ、瓜の形をしたウリクラゲに水玉模様のタコクラゲ…。季節により変わりますが、赤ちゃんも含め常時10種ほどのクラゲがいますよ」と話すのは、福井市鮎川町にある「古代生物ミュージアム」オーナーの小島貞昭さん。

      幼少期にクラゲに魅了され、大学で研究に没頭。

      水族館のクラゲ担当を経て「エチゼンクラゲが一番とれる」と福井へ移住しました。

      「古代から地球にいるのに生態は謎だらけ。ロマンを感じますよね。あと純粋にフォルムが美しくて」とクラゲの採集と研究に心血を注ぎます。

      小島さんイチオシの「アカクラゲ」は名の通り褐色のストライプが特徴

      淡い褐色と青白い色のドット模様がユニークな「タコクラゲ」。ぽわぽわと水中を舞う姿がキュート

      「カミクラゲ」は長い触手が髪の毛のようにヒラヒラなびきます。兜の形に見える「カブトクラゲ」。体に生える小さな毛の束に光が反射して、虹色に輝く

      今の目標は深海に生息するクラゲに会いに行くこと。

      「特にムラサキカムリクラゲが好きなんですけど、調査船などを活用しないといけないし、なかなか現れない。いつかいろんな研究者の力を借りて、展示したいな」と目を輝かせます。

      体の90%以上が水で、脳がなく意思もない、漂うだけのクラゲ。

      「もしかしたら人類が滅んでも、彼らだけは生き残るかもしれませんね」と笑う小島さんの心には、まだ見ぬクラゲへの飽くなき憧れが満ちています。

      「エチゼンクラゲ」の標本。クラゲ界ではトップクラスの大きさで傘は直径1m以上、重さは100kg以上

       

      鑑賞が楽しくなるミズクラゲの生態。

      【目はどこにあるの?】
      傘の縁にある8箇所の切れ込み(感覚器)の中にある16個の点がクラゲの目。明るさが分かる程度の機能。


      オス


      メス

      【オスメスの見分け方】
      ミズクラゲは傘の裏側にある「口腕(こうわん)」付近で見分けるのがポイント。オス(写真上)は4つのリボン状になっているのに対して、メス(写真下)は成熟すると卵や幼生を育てるための「保育嚢(ほいくのう)」と呼ばれるフリルのようなヒダになっています。


      【クラゲの「ポリプ」を知ろう】
      成体になる前の形態の一つ。石や貝殻にくっついた状態だと半永久的(!)に生存が可能。環境によってクラゲに変化します。

       

      古代生物ミュージアム

      福井県福井市鮎川町167-3-6
      ☎090-9446-8778
      【営】12:00~17:00
      【休】月~金曜
      ホームページ

       

      民族音楽屋ココペリ【坂井市】

      上段のビーズなどを編み込んだひょうたんを叩いたり振ったりする「シェケレ」、下段左は小型の弦楽器「チャランゴ」、青いロープで括られた太鼓の「ボンボ」

      心のままに民族音楽の愛を届ける。

      坂井市三国町で楽器店を営む堀建一さんは生粋の民族楽器好き。

      南米のアンデス地方に伝わる縦笛「ケーナ」をメインに自ら演奏も行います。

      堀さんが愛用しているケーナ。どこか切ない哀愁漂う音色が特徴で、アンデス地方の名曲「コンドルが飛んでいく」で有名

      開店の契機となったのは20年ほど前の三国祭。

      笛や太鼓を手に、若者たちが自由に“野良打ち”で演奏するのを目にし「三国はなんて祭囃子の似合う町なんだ」と感銘を受けました。

      「湊町・三国の空気は、きっと民族音楽とも相性が良い」、そんな思いを温め続け、2021年に「民族音楽屋ココペリ」を開きました。

      仏教の儀式や瞑想で使われる「シンギングボウル」はスティックで叩いたり、縁に沿ってこすり回すことで「倍音」と言われる音色を奏でます

      金属部分の切り込みが“舌”のような「タングドラム」。マレットや指で鳴らすとまろやかで澄んだ音が響きます

      店内には、南米を中心にケーナやサンポーニャ、チャランゴ、ボンボ、シェケレ、カリンバなど個性豊かな楽器が並びます。

      「民族音楽の魅力は楽譜に縛られないフリーダムさ。リズムが少しずれても構わない。大切なのは“グルーヴ”なんですよね」と熱く語ります。

      「穴が開いているもの、叩けるものがあれば音楽になる」と自由自在に奏でるココペリでは、今日も愉快な音楽が生まれています。

       

      とっておきのレア民族楽器。

      【チャフチャス】
      乾燥させた牛や山羊などの爪を束ねて紐に結び付け、振ったり揉んだりして鳴らします。「ジャラジャラ」とした音は川のせせらぎのようにも。


      【鼻笛】
      本体に鼻と口を当て、鼻から息を吹き込み鳴らします。口の開き方を変えることで音程も変えられるそう。オカリナのような音色。


      【ティンシャ】
      小さなシンバルの形をした魔除けや浄化のために使われる密教法具。ヨガ、ヒーリングなどリラックスツールとしても用いられます。

       

      民族音楽屋ココペリ

      福井県坂井市三国町北本町4-1-21
      ☎090-7899-4996
      【営】11:00~17:00
      【休】水曜
      Instagram

       

      市川鉱物研究室【越前市】

      木造2階建ての研究室。1階には福井県を中心とした鉱物が3,400点、2階は全国の鉱物が4,300点ほど並びます

      すべてを水晶に注いだ、まばゆい好奇心。

      越前市にある「市川鉱物研究室」は生涯を鉱物の研究に捧げ、「水晶博士」と呼ばれた不屈の学者・市川新松の残した約7700点もの鉱物や岩石、化石の標本が保管されています。

      水晶をはじめとした鉱物に対する彼の探究心は、常識や肩書を軽々と飛び越えるほど強いものでした。

      昭和8年に天皇陛下に献上した水晶球の人口蝕像標本

      山梨県の金峯山で採集した、2つ以上の結晶が特定の法則を持って接合された「双晶」と呼ばれる水晶

      小学校卒という学歴ながら、23歳のとき独学で教員になった新松は、10年後京都帝国大学で目にした鉱物の結晶の美しさに心を奪われます。

      その後、水晶発祥の地といわれる山梨県での教員時代に、「蝕像(しょくぞう)(結晶の表面が自然に溶けてできた模様)」の研究に没頭。

      水晶を溶かす実験を続け、その本質が四面体であることの解明などに独学で挑みました。

      やがて研究欲が抑えきれず39歳で辞職。

      論文を書き続け、猛勉強して身に付けた英語で、海外の学術誌に論文が掲載されるという功績を得ました。

      研究室を歩くと、彼の壮大な志や想いが感じられ、鉱物はその魂が宿るかのように輝いていました。

      越前市の味真野村蓑脇で採集された「透明方解石」。日本最大とされています

      水晶の成長過程で別の鉱物が内部に取り込まれ、草や苔が入っているように見える「草入り水晶」。甲州東山梨郡竹森鉱山産

      加賀国遊泉寺鉱山産の「水入り紫水晶」。その名の通り内部に水分が含まれます

       

      研究室に収蔵される色とりどりの鉱物。

      【滑石(かっせき)】
      滑らかな感触の粘土鉱物。ナイフや紙やすりで簡単に削ることができ、やわらかく粉砕しやすい。

      【緑簾石(りょくれんせき)】
      カルシウム・アルミニウム・鉄を含むケイ酸塩鉱物で、鉄の含有量が増えるほど、より濃い緑色になる。


      【方解石(ほうかいせき)】
      地球上に最も多く存在するとされる炭酸塩鉱物の一つ。不純物によってオレンジ色になります。


      【瑪瑙(めのう)】
      水晶と同じ二酸化ケイ素の細かい結晶が集まってできます。独自のグラ デーションや縞模様が美しい。

      市川鉱物研究室

      福井県越前市中新庄町(詳しい住所は見学者にのみ連絡)
      ☎0778-23-4604(北新庄公民館)
      見学は要予約

       

      農家民宿このは【大野市】

      自然観察は宿の横や自然保護センターなど、往復約60分のコース。森の仕組みや植物の紹介、生き物たちの音に耳を傾けながら、散策を楽しめます

      大野の森を蘇らせた自然のミュージアム。

      幼少期から山に親しみ「山に行けば食べ物がある」と笑う矢尾政士さんは、大野市南六呂師で農家民宿を営み、山菜料理で客をもてなします。

      この地で植物を育て始めたきっかけは2006年、外来種の影響で在来種が減少した高原の姿に危機を感じたことでした。

      「山野草を増やし、本来の景観を蘇らせたい」という一心で、区民から聞いた昭和30年代の話や資料をもとに、独学で勉強や栽培を開始。

      今では、絶滅していたオキナグサや絶滅危惧種のチョウジソウ、キキョウ、オミナエシなど、約30種の植物が生き生きと葉を広げます。

      キンポウゲ科の多年草「オキナグサ」の白い綿毛がたくさん。10株から200株まで増やしたそう

      その熱意に共感した知人からも植物が集まり、矢尾さんが守り育てる空間は、かつての故郷を伝える植物のミュージアムとなりつつあります。

      現在は山野草を見に来る人も増え、観察ガイドも開催しています。

      「ヤマオダマキ」はうつむきながら花を咲かせます

      ふんわりとした小さなピンク色の花「シモツケ」

      白くて細い糸状の花が咲く「シライトソウ」

      「チョウジソウ」は淡いブルーが美しい

      少し湿った林の中に生える「シソバタツナミ」

      「森に入ると心が和むんです。目で美しさを感じ、植物が放つリラックス成分“フィトンチッド”でリフレッシュしてほしい」と語る矢尾さんのガーデンには、自然を守る使命感と新たな発見を楽しむ探究者としての熱意も咲き誇っていました。

       

      植物を見分けるための3ステップ。

      【step1.】イラスト図鑑でチェック
      写真は個体差や光の影に影響されやすいため、特徴が強調されて描かれた精密なイラスト図鑑がおすすめ。茎の毛の生え方や葉脈のパターンなどの重要ポイントを正しく理解できます。


      【step2.】実物と図鑑を比べる
      植物と図鑑を並べ、ルーペや顕微鏡を使って葉の細胞レベルまで観察します。図鑑の記述と実物の特徴が一致しているかを検証。


      【step3.】写真集で生きた姿を最終確認
      仕上げは写真集や生態写真で確認。イラストだけでは分かりにくい、自立している姿や鮮やかさを見比べましょう。

       

      農家民宿このは

      福井県大野市南六呂師169-52
      ☎0779-67-1217
      自然観察は要予約
      【料】一般税込1,000円、小学生税込500円、小学生未満無料
      ホームページ

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