先日、京都へ出張したとき、留守中の犬猫の世話を頼んでいた家族から連絡が入った。
「福ちゃんの尿に、血が混じっている」
スマホを見た途端、頭の中が一気にざわついた。
すぐに帰るべきか、それとも―――と、落ち着きなく思考が行き来する。
しかし、なんでまたこのタイミングで…。
困った出来事はなぜか「どうしてこのタイミング」で、やってくる。
この現象にだれか名前をつけてほしい。
* * *
そわそわ、きょろきょろと落ち着かない僕を見て、
「たぶん膀胱炎だと思うよ、元気があるようなら、きっと大丈夫」
と、同行者が言った。
長く犬と暮らしてきた人で僕に犬を飼うことをすすめてくれた張本人である。
* * *
その言葉に少しだけ呼吸を整えることができたけれど、やっぱり仕事の間じゅう、気持ちはずっと福のところにあった。
出張を終えて、大急ぎで家に帰る。
* * *
ドアを開けるといつものように福が駆け寄ってきた。
「どうしたの?」とでも言いたげな顔で、キョトンとこちらを見上げている。
その姿を見た瞬間、拍子抜け。
ああ、よかった。
* * *
まずはひと安心。
ただ、その後も少量ではあるが血尿は続いたので病院へ行った。
検査結果として告げられたのはストルバイト結石だった。
犬では比較的よく見られるもので、尿がアルカリ性に傾いたり、水分が不足するとできやすいらしい。
福の場合は、大きさ的にはすぐに手術という段階ではないらしく、尿のpHが下がれば、自然に溶ける可能性もあるという。
* * *
当面は、食事療法。
ただ、最近まとめて買ったばかりのフードがある。
12キロの大袋。
しばらくはこれで大丈夫だろうと思っていたものだ。
やっぱり「どうしてこのタイミング」である。
いったんそれを脇に置き、新たに獣医師にすすめられたフードを買う。
原因ははっきりしないけれど、食いつきをよくするために長い期間、鶏肝をトッピングにしていたのがよくなかったのかな。
そう考えはじめると、どうしても「自分のせいではないか」という思いが顔を出す。
とにかくできることはなんでも試そう。
水分を多くとらせるために鶏の茹で汁をうすめてフードにかけてみたり、サプリメントを混ぜてみたり、ヨーグルトを与えてみたり。
* * *
もうすぐ10歳。
人間の年齢に換算するとほとんど同級生のようなものらしいけれど、福の時間はこれからも駆け足で進んで、僕はもう追いつくことができない。
そのことを思うと胸の奥が締めつけられる。
いやいや大丈夫、ほらまだまだ変わらず元気だよ、と思いながらも、なんだか寝ている時間が増えてきたとも感じる。
子どものような寝顔。
呑気なイビキを聞きながら、この時間が、ただ続いてくれればいいなあ、そんなことを思っている。