中学時代の同窓会の案内が届いた。
差出人は軟式テニス部のチームメイト。
なつかしい名前を見た途端、当時の景色が蘇る。
今年、僕らの年代は還暦を迎える。
その節目に会が催されるらしい。
参加しなければ、もう二度と出会えない人もいるだろう。
でもその日は仕事。
残念ながら欠席の返事を投函した。
* * *
還暦だなんてね。
だけど、体は衰えても頭の中にいる「ぼく」は、中学生の頃とあまり変わっていない。
あの頃は還暦なんて人生を終えたようなおじさんだと思っていたのに、いざその年齢が近づくと、中学生の僕も今の僕も、同じ「ぼく」のままだ。
* * *
少し前、ガールフレンドからこんな質問をされた。
「年齢も、お金も、人の目も気にしなくていいとしたら、本当は何をやってみたい?」
* * *
僕はもじもじしながら「ファッションモデルの仕事」と答えた。
じつは彼女、ちょっと不思議な力をもっていて、対話しながら人の心の中にスーッと入って、いつの間にかこころを整理してくれる。
そして、本来、じぶんのあるべき姿を認識させてくれて、気がつけばそれが叶ってしまう!という。
本業はモデルなのだが、最近は評判が広がり、カウンセラーの仕事が忙しくなっているのだ。
* * *
還暦のおじさんがモデルになりたいだなんて、ちょっとあなた調子に乗りすぎていませんか?
とお叱りをうけてしまいそうだけど、坊主頭でテニスボールを追いかけていた中学生の頃から、おしゃれが好きだった。
『POPYE』や『Hot-Dog PRESS』を読み漁り、その延長線上で雑誌の編集者を目指した。
けれど、モデルの仕事そのものに関わりたいという気持ちは、どこかですっかり心の奥にしまい込んでいた。
* * *
ところが、そんな話をしてから数日、不思議なことが続いた。
まず、大手シューズメーカーに勤める知人から「新しいブランドのイメージモデルを勝手に小林さんで考えているんです。一度履いて意見をもらえませんか」と連絡が来た。
「え?僕が?」。
その次の日には、パリに暮らす友人から「知り合いのファッションブランドがモデルをお願いしたいって」。
そしてその翌日、松浦弥太郎さんと表参道でお茶を飲んでいると、「僕がディレクションしているブランドの40周年企画でモデルをお願いできませんか」と声をかけられた。
* * *
さすがに椅子から転げ落ちそうになったね。
1週間の間に3つも!!
* * *
偶然なのか、それとも何かに背中を押されたのか…。
それはわからない。
でもひとつ思った。
「もう遅い」とか「今さら恥ずかしい」と勝手に思い込んで、夢を手放しているのは、今の自分。
本当にやりたかったことは、もっと昔の自分がちゃんと知っている。
だから、ときどき中学生だった自分に、「ねえ、本当は何が好きだった?」と問いかけてみるのも悪くない。
何歳からでも新しいチャレンジはできるし、未来へ進むヒントは、あの頃の自分が握っている。