「おいしいそば産地大賞2020」で全国1位の福井は、稀に見る『在来種そば王国』
《編集部》 近年、福井はそばの産地として注目されているそうですね。
2020年1月、全国から厳選した12種類のそばを、日本各地から集まった蕎麦鑑定士50人が審査し、そば産地のランキングをしました。
その結果、福井県が「おいしいそば産地大賞2020」の第1位に選ばれました。
大手コンビニがそば粉を北海道産から福井産への変更を決めるなど、今、福井のそばは全国的に注目されているんです。
《そばOnline編集部》 おいしさの理由はどこにあるのでしょうか。
福井で栽培されるソバのほとんどは、昔からその土地で栽培されている「在来種」と呼ばれるものです。
全国的には改良品種が主流となっている中で、これは非常に珍しい。
在来種は発芽のタイミングもまちまちで、背丈が高く伸びるものもあれば、低いものもある。
早くに黒く熟した実の隣に、若い緑色の実があったり、まだ花をつけているものもあるくらいです。
さまざまな状態のものが入り混じったこの「雑駁(ざっぱく)」が、個性的な味わいを生みだしているんです。
固い殻に包まれた玄ソバ
《編集部》 均一なソバの実の方が良い気がしますが。
例えば、合唱はソプラノ、アルト、テノール、バスなどさまざまな音があるからこそ、厚みのある美しい和音が生まれます。
単一の味には出せない深みが、在来種にはあります。
これが改良種になると同じ時期に発芽し、花が咲いて実が熟します。収穫期には一斉に刈り取り効率よく収穫できるので、経営的には改良品種の方が安定しますよね。
でも在来種の雑駁が生み出す味わいは出せないんです。
同じ時に黒く熟した実もあれば、まだ花を付けている枝もある。統一されていないこの「雑駁」の状態が、個性豊かな味を生み出す
《編集部》 福井ではなぜ改良品種が普及しなかったんでしょうか
ひとつは単純に、改良品種栽培の流れに後れを取ったということです。
けれど大きな要因は、生産者の方が昔ながらの在来種に誇りを持ち、生産性よりも味を優先したことにあります。
一時期、在来種の中でも大粒の種子栽培を推進する流れがあったのですが、福井県内各地の生産者はそれぞれ地元に昔からある在来種を作ることを選びました。
地元のそばが一番うまいという誇りがあったんでしょう。
おかげで福井は、周回遅れのトップランナーに躍り出たんです。
福井では、そば殻を取った実を丸ごと挽く「挽きぐるみ」が主流
《編集部》 幸運も重なったんですね。福井のそばには他にない特徴があると聞きますが。
福井では殻をむいたソバの実を甘皮ごとすべて挽いてそば粉にする「挽きぐるみ」が一般的で、殻を取らずに挽くこともあります。
これを、玄びきなどと呼びます。
そばの色は黒っぽくなり、玄びき特有の香りが備わります。
そして福井県内の製粉所は、そばの風味を最大限生かす石臼製粉を行っています。
「大根おろし」「ネギ」「かつお節」で食べるスタイルも独特ですよね。
県外ではあまり見られない食べ方です。
《編集部》 地元にいると気づきにくいのですが、福井のそばってすごい気がしてきました。
福井のそばがおいしいのは店主の勉強もさることながら、生産者、製粉業者、流通団体や行政も一体となってそばのレベルアップを図っているからです。
今年はコロナの関係で中止になりましたが、「全日本素人そば打ち名人大会」には全国の予選を勝ち抜いた腕自慢が福井に集結して技を競うなど、そば好きにとって福井はまさに『聖地』です。
それに在来種は収穫量が限られるので、なかなか県外へ出せる量がないから、福井に行かないと食べられない。
思い立ったら私もすぐ、新幹線に乗っています。
そば畑の中の片山さん
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