先人の想いを胸に、民謡の輪を未来へ紡ぐ。NPO法人「とても敦賀すきすき」の森野巧巳さん（敦賀市）【こたかな福井びと】

福井県敦賀市には、ポップスでもロックでもなく民謡に命をかける高校生がいます。

敦賀高校2年生の森野巧巳さんは、民謡好きが高じて2022年7月に仲間たちと共に民謡の愛好団体「とても敦賀すきすき」を設立。

2023年7月には団体をNPO法人化しました。

福井県で高校生がNPO法人を立ち上げたのは初めてとあって注目を集めています。

現在「とても敦賀すきすき」は高校生8人、踊りの先生や地域大人たち7人の計15人で活動しています。

夏には敦賀でも最も大きな「敦賀祭り」のほか地元の小さなお祭りなど一日に何件も民謡踊りを披露するなど大活躍。

3月16日の北陸新幹線開業にあたっては、敦賀駅で開催される記念イベントでも踊りを披露します。

ほかにも毎月1回、地元の小中学生に踊りを教える講習会「すきっず」を開催しています。

小中学生にはまず、敦賀市にこんな歌があると知ってもらうことが重要として「とにかく音楽に合わせて楽しく踊ってもらいます。みんな毎回喜んで参加してくれているので、僕も嬉しいです」と笑顔を見せます。

森野さんが民謡に興味を抱くきっかけとなったのは、小学6年生の頃テレビで美空ひばりが歌う「愛燦燦（あいさんさん）」を聴いたこと。

歌詞ひとつひとつが語りかけてくるような昭和歌謡にたちまち魅了され、それ以来、古いレコードを集めるようになりました。

毎日のように、ネットオークションで昔のレコードが出品されていないかチェックし、今では集めたレコードはなんと1,700枚以上。

そんな森野さんは中学生の頃、敦賀の民謡「敦賀とてもすきすき」のシングル盤を手に入れました。

「『敦賀とてもすきすき』は、知っていましたが、カップリング曲として入っていた『敦賀ばやし』を初めて聴きいて、和太鼓とエレキギターのイントロや曲全体のグルーヴに惹きつけられました」

敦賀にはほかにも「気比音頭」「敦賀みなと音頭」「大敦賀行進曲」「疋田音頭」などたくさんの民謡の曲があります。

中でも「あゝ水戸浪士」という曲はなんとあの演歌界の大御所、北島三郎が歌っています。

森野さんによると、歌謡曲のようなものもあれば、音頭や演歌など曲調が豊富なのが民謡の魅力だとか。

「敦賀の地を盛り上げるために作られたたくさんの民謡が、僕が40代になる頃には誰一人知らなくなってしまうのではないか」。

そのように心配する森野さんは、自分自身が踊りを継承することでこの民謡たちを残していきたいと話します。

「民謡を踊るときは作詞家がどんな想い込めて作ったのかをよく考えています。歌詞ひとつひとつの意味をしっかり考えることでより曲とリンクした踊りになるんです」

森野さんの今の目標は、親世代の人たちに民謡を踊ってもらうこと。

「大人が民謡を踊ることで、子どもたちの踊りへの感心がもっと高まると思います。互いが民謡を通して触れ合い、街全体を盛り上げていきたいです」