【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第2話:福とふたり、旅に出る。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第2話:福とふたり、旅に出る。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫2との暮らしを、のんびりと綴っています。

2回目となる今回は、小林さんと愛犬・福とのふたり旅がテーマです。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫2と暮らす。釣り好き。公式Instagram

 

第2話:福とふたり、旅に出る。

先日、仕事で福を連れて三重県多気町にある「VISON(ヴィソン)」という新しくできたリゾート商業施設に行った。

自然の景観を生かした広大な敷地のなかに、人気の生活雑貨店やアパレルブランド、行列必死のレストランなどが軒を並べ、産地直送の海山の幸が並ぶマルシェは犬と一緒に散策できる。

さらに犬も泊まれる宿泊施設があり、日頃愛犬のためにショッピングや旅行が自由にできない人たちにとっては待望のエリアだ。


三重県といえば小学生の頃、家族で長島温泉に遊びに行ったくらいであとはあまり記憶にはない。

あの頃はテレビでひっきりなしに長島温泉のCMが流れていた。

たぶん同世代の福井人なら今でもCMソングをそらで歌えるのではなかろうか。

* * *

話がそれた。

今回は施設のプロモーションのお仕事だったのだけど、とにかく我が家の元保護犬福は臆病なのである。

普段の散歩でも決まったルート、時間じゃないと極度に怯えて、隙あらば逃走しそうになるし、道ゆく人が「あら、この子かわいいわね」とお声をかけてくれたとしても、絶対に愛想よくはしない。

おやつをくださっても口をつけないどころか、一度口に入れて吐き出すという、性格の悪さこの上ない対応で主人を困らせるのだ。

そんな超びびり人見知り犬を連れての長旅。

しかもカメラに応えてポーズを取らないといけないという高いハードル。

僕にとってもこれまでにないほどの緊張を強いられた。

 

ところがである。

この6年間、雨の日も雪の日も嵐の日も嫌がる福を連れて毎日数キロの道をともに歩いて信頼関係を築いたおかげか、はたまた三重県の「気」がいいのか?

あの福が元気に旅を堪能しているではないか!!

ありがたいことに「わー! 福ちゃんだ、インスタフォローしてます。いっしょに写真撮ってください!」なんて声をかけてくださる人にも、まるでスター犬気取りで写真に収まっていた。

レストランのテラス席では道ゆく人を眺めて、そのうち居眠りするくらいの余裕をみせた。

その成長ぶりに思わず僕は胸が熱くなった。


いつか読んだアメリカのドッグトレーナーさんの本に「散歩こそお互いの絆を深める」とありそれをひたすら信じて続けたのだけれど、こうして片道500kmの旅を共にすることでまたひとつ僕たちの絆は強くなったと感じた。




* * *

ひと気のない地方のリゾート施設の夜。

別荘タイプの部屋に付いた露天風呂に浸かりながら、目の前の庭で飽きることなく遊んでいる福を眺めて、込み上げてくる感情を噛み締める。

人生いろいろあるけどさ、少しずつ、少しずつ僕も福も前に進んでいるなあと。

そうだ、帰りにかつお節専門店でお留守番している猫たちにお土産を買うのを忘れないようにしよう。

薄い雲を通して月明かりがぼんやりとあたりを照らしていた。

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

ふーぽ編集部
writer : ふーぽ編集部

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