滝ケ原ファーム(石川県) プロデューサー黒崎輝男さんに聞く、これからの福井と北陸の可能性。【デザインコネクト・レクチャー】

滝ケ原ファーム(石川県) プロデューサー黒崎輝男さんに聞く、これからの福井と北陸の可能性。【デザインコネクト・レクチャー】

こんにちは、ふーぽ編集部です。

第一線で活躍する講師と一緒に、新しい時代を切り拓くためのデザインのあり方を考えていく、デザインセンターふくい(公益財団法人ふくい産業支援センター デザイン振興部)主催の「DESIGN CONNECT LECTURE(デザインコネクト・レクチャー)」。

 

ニューノーマルな暮らしへの探求 ―ウィズコロナ時代に必要なデザインとは―」を大きなテーマに掲げた、全4回の講座(レクチャー)内容をひとつずつ紹介していきます。

デザインコネクトレクチャーの詳細はこちら
 (レクチャー動画の配信は終了しています。)
建築家・小堀哲夫さんのレクチャー内容はこちら
グラフィックデザイナー・左合ひとみさんのレクチャー内容はこちら
アートディレクター・戸田正寿さんのレクチャー内容はこちら

 

今回は、プロデューサー・黒崎輝男さんのレクチャーをお届けします。

 

 レクチャーテーマ 
【LECTURE THEME】

デザインを架け橋に北陸と世界を繋げよう

 

講師プロフィール
黒崎輝男 氏 流石創造集団株式会社C.E.O/プロデューサー

「IDEE」の創始者で、オリジナル家具の企画販売・国内外のデザイナーのプロデュースを中心に、『生活の探求』をテーマにした生活文化を広くビジネスとして展開。
「東京デザイナーズブロック」「Rプロジェクト」などデザインをとりまく都市の状況をつくる。


これから社会がどのように変化していくのか、福井や北陸に暮らす私たちは今の時代にどう向き合うべきか。黒崎さんの考えを教えてもらいました。

 


レクチャーは黒崎さんがプロデュースを手掛ける「TAKIGAHARA FARM(滝ヶ原ファーム)」で行われました。

石川県小松市滝ヶ原町の集落をフィールドに、古民家を改修したカフェやバー、宿泊施設の運営や農業に取り組み、都市と繋がりを持ちながら、地域を盛り上げるさまざまなプロジェクトが進行しています。

滝ヶ原ファームでの地域再生の取り組み

約10年前から北陸でさまざまなプロジェクトに関わっています。福井で言うと、北陸古民家再生機構クラフトブリッジSabae Creative Communityなどがあります。

福井市浜町にあるCRAFT BRIDGE

鯖江商工会議所1階のSabae Creative Community

ここ石川県小松市での滝ヶ原ファームのプロジェクトは、古民家と周辺の自然を生かして地域を再生していくことを目指しています

北陸古民家再生機構や国内外の建築家にも協力してもらって古い民家6棟をリノベーションし、それぞれ「ファームハウス」「カフェ」「宿泊施設」「クラフト工房」「ワインバー」というように活用しています

TAKIGAHARA CRAFT&STAY

TAKIGAHARA CAFE

ザハ・ハディッド、 アキッレ・カスティリオーニ、ジャスパーモリソンらの家具を取り入れ、古いものと新しいデザインを融合させた空間になっています。今後も新しい施設を広げていく考えです。

TAKIGAHARA CAFE

一棟貸しの宿、TAKIGAHARA HOUSE Airbnb

現在は滝ヶ原ファームという農業生産法人を設立し、東京から移住した若者たちを中心に、農地で加賀野菜を育てたり、都市から人を招くイベントを開いたり、地元の伝統工芸を盛り上げる取り組みなどを包括的に行っています

この10年ほど、東京の青山でファーマーズマーケットを企画・運営してきました。その中で、都市と農はお互いに繋がりを求めていると気づいたんです。


今の時代は“食べる”という体験がすごく重要だと感じていて、野菜を育て、料理し、どう提供するか。総合的なカルチャーとして食体験を掘り下げていくのが、いま私のやりたいことです。

 

この地域には北陸の工芸文化と手仕事の生活文化が今も引き継がれています。

滝ヶ原ファームの敷地内にある工房では、地元の職人が木地を挽いたり、漆器を制作する場面を、訪れた人が間近で見られるようになっています

他にもカフェの隣にクラフトショップやギャラリーをつくったり、工芸品を直接販売して、情報発信できる形を整えようとしています。

 

今では都市だけでなく海外からも多くの人が訪れる場所になりました。

今後も都会に住む私たちが地元の人々を巻き込んで色々な動きを起こし、世界とも繋がりを持つ。残された古民家と自然を守りつつ、その良さを地元の人にも再認識してもらいながら、地域を発展させていきたいと考えています

 

元に戻そうとするのではなく、どう前に進むかを考える

コロナ禍の中、首都圏で働く人もリモートワークができるからと地方に滞在するようになり、都市と田舎の隔たりがなくなってきています

こうした状況になると、福井や北陸では昔ながらの組織的な繋がりを大切にしているのが、良い部分であると同時に弱い部分にもなります

古い組織や人間関係の良いところを残しながら、都市や世界と柔軟な繋がりを持てるように、新しい形に変えていくそれを受け入れられるかどうかが私たちに課せられた課題です。

 

真面目な人が多いゆえに保守的になりすぎた結果が、今の日本社会の硬直化してしまった産業構造に繋がっていると思います。

それをもう少しほぐしていかないといけないのではないか。デザインを考える前に、まず産業構造を変えていかなければならないと、今回のコロナ禍があって考えました。

これからますます、基盤となる産業構造、社会構造、働き方、生き方が変わっていくことに注目していくべきです。新しく前に進むことが、社会を変えていくことに繋がるのではないでしょうか。

 

日本の場合は保守的で、大企業が偉いという考え方をされますが、世界の動向からすると完全に遅れています。

和紙や漆などの伝統的な工芸も、大きい組織になることを目指すのではなく、売り出し方を見直すことが大切

私は一つのカルチャーとしての九谷焼の再生など、北陸の伝統工芸を盛り上げる取り組みを複合的に進めています。

例えば漆器で言うと、日本の文化では、一度壊れたものを金継ぎで直した状態の方が、もともとの完璧な状態よりも価値がある。

これは他の国の文化ではあまり考えられないすごいことなんです。

こうした文化的背景をきちんと伝えることで、外国の人も価値を深く理解してくれます。その上で、金継ぎのワークショップを開いたり、さらには外国の有名なデザイナーに新たな視点で漆器のデザインをお願いしたり。さまざまなチャレンジを通して漆器を世界に広める活動に取り組んでいます。


私がやっているのは“橋をかける”こと


デザインと社会、世界と日本、都会と田舎、古いものと新しいもの。それぞれの良さをうまく合わせていくことが、経済的にも成り立ち、地域の盛り上がりに繋がっていく
と考えて活動しています。

 

社会の変化を読み取り、相手に届く発信を

この時代を乗り切るためには、社会をきちんと見つめることが大切です。色々と面白い発見があり、世の中がどう変化していくかも理解できてくると思います。

古いもの、人気がないものの中に、可能性を秘めた良いものが埋もれています。今の時代だからこそ、伝統工芸のように、手をかけて丁寧に作られるものに価値が見出せます。

クリエイターたちはただデザインするのではなく、もっとデザインを深読みをして、視野を広く色んなことに挑戦していくべきです。

また、コロナ禍の状況で、みんなどうしたらいいんだろう、儲かるんだろう、元に戻るんだろうと考えますが、“何が問題か”というのを掘り下げ、ちゃんと問題設定をすることが重要です。


特に工芸品の流通や農業分野は世界中で大きく変わりつつあります。情報産業が発達する中、デザインと情報とがこれからの流通業界、商売を変えていくと思います。

 

ものの背景にあるストーリーをきちんと編集して届ける。

編集者と卸という立場が表裏一体になってくるのではないでしょうか。

 

メディアもこれまでは紙が主流でしたが、今はウェブに移行している時代。コロナ禍でオンラインがどんどん活用されている状況をうまく利用すれば、地方の伝統工芸の発信ももっと進められるはずです。

 

例えば福井では、昔は越前和紙で日本のお札が作られていましたよね。それだけの技術があって、歴史が残っている。それをもっと打ち出して、紙を使う文化全体を総合的にデザインして発信していけると思います。

世の中の人が見て惹きつけられるのは、デザインが良いからであって、きちんとした考えがあっても出来上がったものがいまいちだったら魅力は感じられません


福井の良い部分でもあるんですが、真面目な人が多すぎて、本質的に考えるとそうじゃないだろうと思うことがたくさん見受けられるんです。ものごとにはデザインやテイストがあるというのが重要で、それができると福井が一気に良くなると思います。

 

基本が変わってきていることを前提に

自分一人だけ成功するのではなく、アイデアを出し合いながら、隣がうまくいってなかったら情報を共有して助けてあげる。

そうした古くからある“おすそわけ”のような、みんなで良くしていこうという考え方が北陸には残っていると思うんです


その精神を大事にしながら、
周りの人たちから刺激を受けて、同じ志をもって、一緒に考えて一緒に進めていくことが一番勉強になるし、楽しめるし、結果として良いものができてきます

 

滝ヶ原ファームもそうですが、仕事のためでもお金のためでもなんでもない。「ただ面白いから」という気持ちで夢中で作っていくと仕上がりが違ってきて、楽しんで作っているなというのが見た人にも伝わるんです。


北陸には、古くからあるものの良さがあります。時代に合わせてシステムは変わっていきながら、古くからのものも愛情をこめて大事に育てていく。そうして産業が徐々に変化し、独自の発展が出来ていけば良いと思います。


コロナ禍で、今まで当たり前じゃなかったことが当たり前になってきている。基本が変わってきているということをまず見極めてから取り組まなければなりません


私は「真理の前ではみな平等」を基本として、垣根や上下関係なくフランクに、正しいことをちゃんとやっていこうという考え方をしています。


和紙も、漆器も、陶芸も、農業も、昔成功していた体験が邪魔してると思うんです。大成功した時に戻そうとしているかもしれないけれど、次の価値観で次の成功を作っていくためにはそうじゃない


デザインについても、新しいデザインは何なんだろうという思考で、昔のやり方ではなくて違った方法を見つけなければなりません。今こそチャレンジの時だと思います。

 

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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writer : ふーぽ編集部

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