クリエイターに大切なこと、福井のものづくり産地に求められることとは。三国町出身のアートディレクター・戸田正寿さんのレクチャーをお届け!【デザインコネクト・レクチャー】

クリエイターに大切なこと、福井のものづくり産地に求められることとは。三国町出身のアートディレクター・戸田正寿さんのレクチャーをお届け!【デザインコネクト・レクチャー】

こんにちは、ふーぽ編集部です。

第一線で活躍する講師と一緒に、新しい時代を切り拓くためのデザインのあり方を考えていく、デザインセンターふくい(公益財団法人ふくい産業支援センター デザイン振興部)主催の「DESIGN CONNECT LECTURE(デザインコネクト・レクチャー)」。

 

ニューノーマルな暮らしへの探求 ―ウィズコロナ時代に必要なデザインとは―」を大きなテーマに掲げた、全4回の講座(レクチャー)内容をひとつずつ紹介していきます。

デザインコネクトレクチャーの詳細はこちら
 (レクチャー動画の配信は終了しています。)
建築家・小堀哲夫さんのレクチャー内容はこちら
グラフィックデザイナー・左合ひとみさんのレクチャー内容はこちら

 

今回は、アートディレクター・戸田正寿さんのレクチャーをお届けします。

 

 レクチャーテーマ 
【LECTURE THEME】

発信力とクリエイティブの力

 

講師プロフィール
戸田正寿 氏 有限会社ライトダ/アートディレクター
福井県坂井市三国町生まれ。サントリーローヤルCM、三宅一生ファッション広告、伊勢丹ファッションキャンペーン、洞爺湖サミット会場アートディレクションなどに携わる。ニューヨーク近代美術館ほか世界30の美術館に作品が収蔵されている。


今のクリエイターたちに大切にしてほしいことや、福井のものづくり産地をどのように盛り上げていくべきか、戸田さんの考えを教えてもらいました。

 


レクチャーは戸田さんが2018年に故郷三国町に設立した私設美術館「Brilliant Heart Museum」で行われました。


横長の大きな窓に切り取られた、まるで一枚の絵画のような雄島の姿を楽しむことができる、県外からも高い注目を集めているスポット
です。

世界に認められるクリエイティブが生まれていた時代

今は面白い広告が減ってしまいましたよね。

僕らの時代はちょうどバブルの成長期で、広告そのものがアートになっていました。

良いアーティストがみんな競争していて、スポンサーもちゃんと見てくれていました。

 

極端にいえば、アートディレクター、コピーライター、プロデューサーの3人がいれば仕事ができていたんです。

コンピューターはない時代で、みんな手仕事と才能だけでやっていましたが、世界で認められ活躍するクリエイターたちが育っていました

 

特にポスターという媒体では、日本では評価されなくても、世界で話題になるものが多く生まれていました

 

世界の美術館にはポスターをコレクションしているところがあり、私の作品も収蔵したいと問い合わせが来ましたね。

ニューヨーク近代美術館で仲間と一緒に展覧会をやったり、世界中の一流の美術館が日本のポスターをコレクションしてくれて、盛り上がっていました。

 

昔のデザインや広告というのは、世の中に影響を与えられるものであり、立派なクリエイターが育っていて、世界が認めてくれていたんです

 

日本ではここ2、30年でやっとポスターをコレクションする美術館が現れはじめましたね。

いち早くポスターの価値に目をつけたのは富山県の近代美術館でした。

 

当時の館長は理解のある人で、美術館の収蔵品は20世紀以降のアートを揃えることにこだわっていて、その哲学が今につながり、現代アートといえば富山県近代美術館、デザインといえば富山県近代美術館といわれるようになっています。

 

福井のものづくり産地に求められること

私は生まれてから18歳まで福井で過ごし、東京に出てからもときどき戻ってきていました。

今の印象で言うと、福井はものすごく遅れています。

クリエイターは一生懸命頑張っていますが、良いものを見つけ出して、取り上げて成長させてくれる存在がいないんですよね

 

私は15年ほど前に金沢の伝統工芸を盛り上げるための取り組みに携わりました。

当時は、九谷焼や輪島塗など、伝統工芸に対する執念はあっても、伝統にこだわるばかりで、世の中への売り出し方が間違っていました。

そこで私は、伝統工芸の世界にも若い人の感性が必要なんですよとアドバイスしたんです。

一生懸命取り組んでいる若いクリエイターを伝統工芸の世界に取り込むべきだと。

そうして若い人たちを仲間に入れて競争してきたことで、今の金沢の伝統工芸は盛り上がっていますよね。

そのような取り組みが福井にも求められているのではないでしょうか。

▲2020年8月、越前和紙や漆器、眼鏡など福井のものづくり産地を巡った戸田さん。若い職人やデザイナーたちの奮闘を目の当たりにし、応援していきたい気持ちが高まったという。

長く続いてきた伝統的なものづくりも、ビジネスにならないと後世に残していけません。

発信のために広告やコマーシャルという手段はありますが、まず重要なのは自信を持ってものづくりをすること

福井のものづくりには素晴らしい技術がたくさんあると思います。

コロナ禍で厳しい状況だとは思いますが、これまで積み重ねてきた技術や経験などの財産をもう一度見直して、原点に戻って、可能性を見つけ出していってほしいです。

クリエイターが先頭に立って、若い人たちも取り込んで相談して、ネットで売り出したり、東京や世界へプレゼンテーションしていくべきだと思います。

 

正解があると信じて作り続ける

クリエイティブの世界には“答え”がないように思えますが、クリエイターに大切なのは、“答えがあると信じて生み出し続けること”です。

 

若い頃から色んな仕事に携わってきましたが、仲間や理解者がいるのはとても力になると感じています。

分かってくれる人が一人でもいれば、そこから世の中に認められるようになっていくんです。

この小さな美術館も、ひとつのメディアに取り上げられたことで、全国から注目を集めるようになりました。

 

仕事は一人ではできません。仲間でやらないと絶対成功しない。

その点に気付くのがこれからの社会では大事だと思います。

私も、サントリーローヤルの広告や伊勢丹のロゴマークなど、良いものができたときの裏には良い仲間の存在がありました

 

良い仲間に出会うためには、自分から求めていくか、自分を発信して相手から来てもらうかの2択。

自分に目を向けてもらうための努力も必要です。

福井でも、ものづくりをする人同士の仲間の輪がもっと広がれば、そこから新たな素晴らしいクリエイティブが生まれてくるのではないでしょうか。

 

良いものを作れば、必ず認めてくれる人がいる

若いクリエイターには、エネルギーも才能もやる気もあります。

それらを大事にして、良いものを作れば、必ず認めてくれる人がいると信じてものづくりをしてほしい

若い時には失敗も許されますし、失敗から学ぶこともたくさんあるでしょう。

 

今の時代は世の中に情報が溢れていて、その中で人々の目に留まる良いものを作りだすのは簡単ではありません。

良いものを作るためにまず大切なのは、世界のクリエイティブを徹底的に勉強して、自分の感性を磨くこと

努力して、常に上を目指していくことです。

 

今はまた時代に合った方法があると思いますが、私が若い頃は、周りに差をつけて自分を知ってもらうために、積極的に賞を獲ることを目指していました。

賞を獲ることで人に目を向けてもらえるようになり、さまざまなチャンスが巡ってきました。そうしてどんどん力をつけていくことが出来たんです。

 

良い人に認めてもらえれば、自然に世の中でも認められるようになります。

これからはそうした若いクリエイターたちを応援していくのが僕の役割だと感じています。

 

これまで東京と福井の二拠点を行き来しながら活動してきましたが、新型コロナウイルスが流行してからは福井に留まっています。

おかげで福井という土地やものづくりの素晴らしさに改めて気付くことができました

2年後には県内での個展の開催を計画しています。

私としてはこれからもっと積極的に福井に関わって、地元のクリエイティブを盛り上げていきたいですね。

 

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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writer : ふーぽ編集部

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