【SUPER SAPIENSS(スーパーサピエンス)とは】
2022年1月から活動を開始した、堤幸彦(「TRICK」「SPEC」)、本広克行(「踊る大捜査線」)、佐藤祐市(「シティーハンター」)ら日本を代表する映像監督とプロデューサー森谷雄(「深夜食堂」『ミッドナイトスワン』)たちが、原作作りから制作・配給までを一気通貫するプロジェクト。オリジナル作品第1弾「キラー・ゴールドフィッシュ」をウェブトゥーン(LINEマンガ)として発表し、短編映画『SUPER SAPIENSS THE BEGINNING』を制作。全国各地での上映イベント「SUPER SAPIENSS JAPAN TOUR」を敢行した。2024年、長編映画『THE KILLER GOLDFISH』が第1回ロンドン国際ファンタスティック映画祭のオープニング作品に選出されるなど、日本に先駆け世界各国の国際映画祭にセレクトされている
【あらすじ】
金魚による連続殺人事件が発生。岡さん演じる公安特設課超常事件想定班(通称:マルチョウ)の捜査官、環栄李花(たまきえりか)が、若手刑事と事件の謎を追うストーリー。自ら意思を持ち人を襲う金魚、瞬間移動する謎の人物など、さまざまな超常現象と相対するうち、自身の過去や人類史を発端とする壮大な復讐劇に巻き込まれていく・・・
堤幸彦監督と岡エリカさんに、作品の注目ポイントやオーデイションのこと、制作裏話をインタビューしました。
ふーぽ
主演に岡エリカさんを大抜擢した理由と、岡さんの魅力を教えてください。

堤監督
2,000人超の応募者から100人ほど、オンラインでオーディションを実施しました。普段はやらないのですが、私が相手役となって台詞を読んでもらったんです。
決め手は3つあって、まず、この作品は現在の映画の在り方を問うアンチテーゼ的作品の側面もあること。演技経験の豊富な人が主役に収まるのは違うんじゃないかと思いました。
2つ目は、音楽を学んできたという岡さんの、人を射抜く声、目線や目つき、表情。この人は集中するととんでもない力を出すな、と感じました。
3つ目は、普通に女優然としていて、ルックが女優っぽい。瞬間的に「この人しかいない」となったんです。
ふーぽ
演技経験がほぼなかったということですが、役作りはどうされましたか?

岡さん
最初に脚本を読んだとき、ぶっとんでるな、と思いました。映画のラストも驚きだったし、何も解決していないですよね(笑)。
監督曰く、「伏線回収は全く考えていない」とのこと。斬新で攻めている作品だと思いました。
撮影前に監督から役作りのポイントとして、「運動が苦手で、初めて会ったときに、じーっと人を凝視するようなキャラクター」と言われたのが強く印象に残っていて。
その2点は作品を通してベースに置くように意識していましたね。
栄李花は、常に人から理解されにくい孤独も抱えていたんじゃないかな、って思います。
ふーぽ
岡さんの芸名の「エリカ」は、役名から取ったそうですね。
岡さん
私がこの道に進むきっかけになった大切な作品、キャラクターで、とても思い入れがあります。

堤監督
短編の撮影から1年空いて長編の撮影だったのですが、岡さんは全く変わらない。普通、顔つきが変わるものなので、ちょっと驚きました。コントロールしていたのかな?
運動が苦手なところも体現してくれて、走るシーンでは、あまりにも“もさもさ”と走るから、「もさもさ」と文字を入れたくらい。
演じているのか本人なのか、彼女には虚実分からんところがあって、読み切れないところが面白いですね。
岡さん
台詞の間(ま)とか、テンポやリズムを監督から細かく指示をいただいて、とてもやりやすかったです。
実は監督と二人で歌をうたっているのが、隠れた注目ポイント!
劇中でスマートスピーカーの「ルイーズ」が、「焼肉と昭和歌謡」をテーマに選曲するんですが、そのデュエット演歌「西新井ラプソディー」をうたっています。
堤監督
さすがに岡さん、うまいですよ。
岡さん
監督もずっとロックをされてきて、お声が素敵なんです。作詞も監督の完全オリジナルソングです。
ふーぽ
ほかにお気に入りのシーンはありますか?

岡さん
けっこうコスプレをしていて、久しぶりに制服も着て、演じていて楽しかったです。
堤監督
いろいろあるけど、「リアルの渋谷でネアンデルタール人が歩く」という暴挙を成し遂げたオープニングのシーンかな。
今、その道は再開発でなくなってしまって。最後の姿を記録した映像になったんじゃないかと思っています。
ふーぽ
アニメーションと実写のコラボや、音楽や登場人物にAIを駆使していると伺いました。

堤監督
そうそう、いろいろな実験を施しています。劇伴(劇中伴奏音楽)のほとんどは、AIに脚本を読み込ませて作曲しているし、登場人物の一人はAIなんですよ。
一見、悪ふざけしているように見えるかもしれませんが、実は深遠なメッセージ性があったりして。海外ではそういう部分も届いて評価していただいたと思っています。
10月にはハリウッドのチャイニーズシアターで上映が決まりました。
ふーぽ
おめでとうございます!
”メッセージ”についてあらためてお聞きします。金魚の殺人、ネアンデルタール人の復讐、転生…。着想はどこから?

堤監督
本広監督や佐藤監督、森谷さんらと「SUPER SAPIENSS」の会議があったとき、まず、とんでもないメッセージを持った映画を作るべきだとなりました。
メジャーな配給会社が受け入れないようなテーマじゃないと、僕たちがやる意味はないだろう、と。おっさんが少年みたいな映画を作ろうとしてるわけですから。
そこで何となく降ってきたのが、ネアンデルタール人(以下、ネアン)とホモ・サピエンスの関係でした。
ホモ・サピエンスは6万年前に飛び出て、世界を制覇した。動物で単一種で世界中に分布する例はほぼなくて、そうなると当然、傲慢にもなるし、争いもする。
小賢しいホモ・サピエンスの台頭でネアンは滅びてしまった。そこにはきっと恨みや悲しみ、生物の根源的な復讐心があるのではないかと。
会議でもみんな、ちんぷんかんぷんだったけど、そこは強引に進めさせてもらいました。
ふーぽ
地球規模の壮大なテーマというわけですね。
堤監督
10年前にベストセラーになった『サピエンス全史』がきっかけで興味を持って。
数年前の学説によると、我々ホモ・サピエンスの遺伝子の中にも、ネアン由来の3番染色体を持っていると知り、意識を強めました。
ふーぽ
こんな風に見てほしい、などありますか?
堤監督
見方は強制しませんし、何か変な映画やってるな、でもOK。
福井が生んだ大女優・岡エリカを見に来てもらっても。
見たら、ちょっと心に残る、何か引っかかるような作品になっていたら嬉しいですね。

岡さん
超常現象を軸にストーリーが進んでいくフィクションではありますが、私たちには見えないだけで、実際にどこかであり得る話なんじゃないかと思っています。
映画館では頭でいろいろ考えるより、第6感までフル稼働させて全身で感じていただきたいです!
ふーぽ
これまでの堤作品でも「ギフテッド」をテーマにした作品が多いですが、実体験としてあるのでしょうか。
堤監督
僕自身は全くないのだけど、沖縄や奄美のユタ(民間霊媒師)やオーストラリアのアボリジニ、ネイティブアメリカンなど、通常の都市生活では見えないものと向き合い、付き合っていますよね。
その瞬間は何度も目の当たりにしたし、この人、見えているんだろうなというのが分かります。いわゆる超能力を扱う力をそもそものホモ・サピエンスは持っていたんじゃないかとイメージしています。
続編でも、“力”については追及するし、滅ぼされたネアンからの警告、人間に改造された動物の野生などと結びつけば、壮大な人類史を本題にのせられると思っています。
ふーぽ
クラウドファンディングやトークン(仮想通貨)、NFTなどで資金を集めるスタイルも先進的です。

堤監督
クリエイター以外のサポーターも映画作りに参加できるから、「共犯者」と呼んでいるんです。
今回の映画以外にも、「SUPER SAPIENSS」では10~20のプロジェクトが進行中です。
ふーぽ
エンディングは続編を予感させてくれました。
堤監督
『THE KILLER GOLDFISH』は3部作。脚本はもう出来ています。
本編とは別に、栄李花を探るスピンオフ作品があってもいいですね。
続編があるなら出資したいという声もいただいていて、次はボリウッド(インド)作品になるかもしれません。
作品を完結させるために、たくさんの共犯者(出資者)を求めています!
ふーぽ
最後に、福井の読者へメッセージを。

岡さん
今回、地元の方の応援やご協力のおかげで、福井で公開できることになって感謝しています。
1回だけじゃなく、2回、3回と見ていただくと、秘めた能力が「覚醒」するかも?
私たちと一緒に覚醒したい方、ぜひ劇場へお越しください。
堤監督
福井へは何度も取材やリサーチで来ていて、あわら温泉も恐竜も、海鮮もソースカツ丼も大好きです。
だいぶ変わった映画ですが、これが新たなスタンダードになっていくと自負しています。
ぜひ楽しんで、我々の共犯者になってください。
