子どもを想うやさしさが、人の“輪”をつくる。グルテンフリーの菓子工房「コメコロ」の溝口香織さん（池田町）【こたかな福井びと】

人口約2300人の山あいの小さなまち、福井県池田町。

冬は雪で美しい銀世界になるこのまちの一角に、菓子工房「コメコロ」はあります。

代表の溝口香織さんは2008年、隣町の越前市から池田町に移住しました。

その後、住み始めて2年ほど経ったころ、⾧男が小麦アレルギーを発症したことをきっかけに、小麦を使わないグルテンフリーの菓子製造を始めました。

始めは子どものためだけに作っていた溝口さんでしたが、「池田町はお土産になるようなものが少ないから、何か作ってみたら？」というご近所さんの後押しもあって、ヨモギを使った「ばんこクッキー」を商品化。

池田町の「こってコテいけだ」などで販売し始めます。

その後町営施設「食ラボ」の厨房を使い、2018年に「コメコロ」として池田町の玄米粉を使用した商品販売をスタート。

2020年には、自宅裏を念願の工房に改装しました。

「コロ」はチベット語で「輪」の意味。

お米でつながる人の輪を大切にしたいという思いを名前に込めた「コメコロ」の菓子は、池田町産の玄米粉や福井のブランド鶏「福地鶏」の卵、越前海岸の天然塩、ヨモギや岐阜の揖斐抹茶など、福井県内や近県の生産者による体にやさしい素材にこだわっています。

玄米粉でつくるサブレやクッキーの口あたりはさっくりと軽く、米ぬかを取らないぶん精米した米粉よりもコクを感じます。

甜菜糖の優しい甘さと相まって、小麦アレルギーの有る無しにかかわらず、誰もが笑顔になる味わいです。

池田町が運営する交流施設「まちの駅 こってコテいけだ」の店頭やオンラインショップを通して販売。

溝口さんと同じアレルギーの子を持つ親をはじめ、生活スタイルとして小麦を摂らない方などが続々買い求めているそうです。

立ち上げから6年目を迎えた現在では、地元をはじめとした信頼のおける生産者や、池田町外や県外から移住し工房を手伝うスタッフ、全国のお客さんなど、たくさんの人の輪が広がっています。

そして 2024年2月には、池田町のおからを使ったケーキ「ま～おから！」が、全国の優れた食品を表彰する農林水産省後援の「令和5年度 優良ふるさと食品中央コンクール」に福井県代表として出品。

なんと！一般財団法人食品産業センター会長賞を受賞。

溝口さんは「たくさんの人にコメコロと池田町を知ってもらえてよかったです」と笑顔で話します。

「縁あって始めたお菓子作りがなりわいになり、こうして⾧く続けられているのは幸せです。池田町は水、空気、お米、どれをとっても本当においしい。自分たちの商品を通して、ここの風土そのものを発信していきたいです」