発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第9回-醤油の港町(石川県大野編)

発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第9回-醤油の港町(石川県大野編)

ふーぽ読者のみなさん、こんにちは。
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中の《ほくりく発酵ツーリズム》を、ふーぽでもお届けしていきます。

福井県をはじめ、石川・富山を含めた“北陸”の発酵文化を紹介します。

発酵から北陸の歴史や気候風土を読み解いていきましょう!

 

発酵デザイナー 小倉ヒラク

1983年東京都生まれ、山梨県在住。文化人類学と発酵学を独自に融合させた「発酵文化人類学」を展開し、「発酵デザイナー」の肩書で微生物研究や食文化の普及に取り組む。著書『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。金津創作の森美術館(福井県あわら市)で北陸の発酵食文化を紐解く展覧会「Fermentation Tourism Hokuriku ~発酵から辿る北陸、海の道」2022年9月17日(土)~12月4日(日)を開催予定。

展覧会詳細は金津創作の森美術館HPまで。

 

金沢から南に車で20分ほど下った港町、大野。

ここは北陸屈指の「醤油の里」として知られています(ちなみに他地域で有名なのが、香川県小豆島や兵庫県たつのなど)

 

一見ひなびた港町に、14もの醤油蔵が軒を連ねています。

ここは、金沢よりもずっと前から栄えた港町。

江戸後期以降、北前船の貿易が発達するとともに、醤油の一大産地となっていきました。

 

 

醤油は近代の大産業だった

食卓に欠かせない調味料の大定番、醤油。

これぞ日本の伝統! と思いきやその歴史は意外に新しかったりします。

 

庶民が日常的に使うようになったのは江戸中期以降、しかも江戸をはじめ京都、大阪など大都市に限られていました。

昭和になるまで、日本の大半の土地では味噌が主要な調味料だったのですね。

というのも、醤油は液体状で管理が難しく、かつ高価な麹を使う量が味噌より多かったので、家庭で手作りされることが少なかったのです。

 

江戸中期以降、握りスタイルの江戸前寿司など、モダンな町民の食文化勃興に合わせるようにして、醤油のニーズが高まっていきます。

その流れをキャッチアップしたのが当時日本海側屈指の都、金沢。

京都と江戸のいいとこ取りをしたような加賀料理には、醤油が必須のものとなりました。

その供給先となったのが、大野です。

 

江戸時代の醤油の主要産地といえば、和歌山の湯浅や千葉の野田など、北陸からかなり遠い、かつ水路で運ぶのが大変だったので、近場で自給する必要があったわけです。

そこで勃興した醤油産業、味噌より付加価値が高く、腐らず、何にかけても美味しくなるマジカルな調味料。

戦後、機械を使った量産方式が開発されるまでは、醤油は今とは比べ物にならないほど高価なものでした。

戦前には、醤油一升(1.8L)は散髪一回分の値段が相場でした。

今でいうと3千〜4千円くらい

しかもソースやマヨネーズなどの外来調味料のライバルもない。

そりゃ儲かるわ!

 

 

さっぱり甘い北陸の醤油

大野を拠点に、全国の発酵ファンに知られるヤマト醤油味噌。

港の入り江にレトロな醤油蔵を改装した糀パーク」という発酵のテーマパークを運営しています。

レトロな蔵の風情

 

僕も何度も遊びに行っている素敵な場所で、ヤマト醤油味噌の敷地を歩いていると金沢市内とはまた違った風情の旅を満喫できます。

四代目蔵元の山本晋平さんに成り立ちを聞いてみると、明治44年、北前船の船乗りだった初代山本藤松さんが北海道と大野をつなぐ廻船問屋として開業したそう。

やがて北前船の貿易が斜陽になるなか、二代目が醤油醸造をはじめ、三代目が味噌醸造、今の四代目が様々な加工食品や観光拠点の開発を手掛けるに至ります。

北陸の廻船問屋さんの商売の手腕が醸造業にコンバートされていったわけです。

ヤマト醤油味噌五代目、山本耕平さん

 

ちなみに晋平さんは若い頃たびたび北海道に醤油販売の営業に行っていたそう。

こんな形で、つい最近まで北前船の文化の影響が残っていたんですね。

ヤマト醤油味噌の定番醤油を始め、大野の醤油はさっぱり甘めの仕上がり。

関東の醤油のようにキリッと辛め! でもなく、東海の醤油のようにコッテリとうま味濃厚! でもなく、九州のようにガツンと激甘口でもない。

品がありながら人懐っこい。

ヤマト醤油味噌の山本一族の人柄そのものです。



いかがでしたか。

北陸の発酵文化を訪ねる《ほくりく発酵ツーリズム》

次回もお楽しみに!

【連載】ほくりく発酵ツーリズム
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