発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第18回・最終回- 納豆雑煮(福井市編)

    発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第18回・最終回- 納豆雑煮(福井市編)

    ふーぽ読者のみなさん、こんにちは。
    発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

    福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中の《ほくりく発酵ツーリズム》を、ふーぽでもお届けしていきます。

    福井県をはじめ、石川・富山を含めた“北陸”の発酵文化を紹介します。

    発酵から北陸の歴史や気候風土を読み解いていきましょう!

     

      発酵デザイナー 小倉ヒラク

      1983年東京都生まれ、山梨県在住。文化人類学と発酵学を独自に融合させた「発酵文化人類学」を展開し、「発酵デザイナー」の肩書で微生物研究や食文化の普及に取り組む。2022年9月17日(土)~12月4日(日)まで金津創作の森美術館(福井県あわら市)にて「Fermentation Tourism Hokuriku ~発酵から辿る北陸、海の道」を開催中。9/30に「発酵ツーリズムほくりく」を発行。

      展覧会詳細は金津創作の森美術館HPまで
      展覧会公式サイトはこちら
      著書「発酵ツーリズムほくりく」についてはこちら

      越前海岸ほど近くの山村、殿下(でんが)地区に伝わる、納豆雑煮。

      毎年お正月には、これでもか! と豆(納豆と味噌)を食べて過ごすのだそう。

      初春の時期に、 殿下のお母さんを訪ねてみました。

       

      納豆たっぷりの素朴な雑煮

      素朴さ極まる納豆雑煮


      ストーブの上で温まったやかんから、シュンシュンとあがる湯気。

      窓の外に残る薄雪を眺めながら、台所でお雑煮ができるのを待ちます。

       

      昆布ダシ仕立ての汁のなかで餅が煮えたら、味噌と、たっぷりすりおろした納豆を溶き入れる

      お椀によそって、最後に海苔をパラパラと振りかけて、納豆雑煮のできあがり。

      大量にすりおろされた納豆でトロトロの質感が食欲をそそります。

       

      お餅と汁の熱気が、冬の寒さに凍えた体を、芯から温めていく。

      ひとしきりズルズルとお雑煮をすすった後、となりの人に無言で「美味しいねえ」と目配せ。

      なんと充実したひとときよ…。

      納豆雑煮は、山間の村に根付くほっこり系発酵料理の典型ではないですか!

       

      家庭に受け継がれた精進の文化

      さてこの納豆雑煮。

      いかなる食文化の系譜であるのか、お母さんに話を聞いてみたところ、どうも民間に根付いた精進料理にそのルーツがあとのこと。

      たとえば納豆雑煮の「豆をすりおろす」というテクニックは精進料理の典型。

      他にもお母さんが見せてくれたレシピ、魚介類の代わりに椎茸や油揚げを米と合わせ、アブラギリの葉で包んだ「葉ずし」も立派な精進料理です。

       

      普通だったら僧侶や懐石料理のシェフがつくるような料理、なぜ殿下ではみんながつくれるのでしょうか?

      「お寺に集まってね、こういう料理をみんなで学ぶのよ」というのがお母さんの答え。

       

      福井の浄土真宗では、年に一度、秋から冬にかけて「報恩講」という大イベントが催されます。

      宗祖の親鸞聖人の教えを門徒で確認しあう、地域最大の法要イベント。

      この報恩講のなかで、講話とともにみんなで集まって食卓を囲む「お斎(とき)」という文化があります。

      この時に食べるのが、肉や魚、刺激のある食材を使わない精進料理なんですね。

       

      浄土真宗の戒律では、肉や魚もOKなのですが、報恩講のような仏事の時は精進料理を食べるのがしきたり。

      殿下でも、報恩講をはじめ折々のイベントで寺のなかでみんなで食卓を囲み、ごく自然に精進料理を学ぶのです。

       

      冬の殿下集落

      北陸の食の精神性

      僕が北陸を歩いて発見したのは、日々の食卓のなかに信仰が根付いていることです。

      「お斎」の場では、地域の門徒たちが集って米や野菜などを持ち寄って料理をつくります。

      これは日々の忙しい生活のなかで忘れがちになる「食べること」の意味を改めて問い直す機会でもあるそうなんですね。

       

      殿下の住民たちも、普段は肉や魚を食べるけれど、お正月や仏事の時には納豆雑煮のような精進料理を食べます。

      折々に「食べることのありがたさ」を見つめ直すきっかけが、地域の行事のなかにインストールされているわけです。

       

      その土地で採れる食物をみんなで分け合い、命の意味を見つめ直す。

      食を通して他者や世界との向かい合いかたを学ぶ。

      そういう習慣が各集落に何百年も受け継がれている。

      発酵食は目に見えない微生物たちがつくりだすもの。

      そして食文化もまた目に見えないその土地の記憶や精神性によってつくりだされるものなのです。

      北陸の発酵文化を巡る旅で僕たちが出会ったのは、こういう「目に見えないものの大切さ」なんですね。

       

      これで一年半に渡る旅もおしまい。

      みなさま、またどこかでお目にかかりましょう。

      小倉ヒラクでした。

       



      いかがでしたか。

      北陸の発酵文化を訪ねる《ほくりく発酵ツーリズム》は今回が最終回となります。

      ぜひバックナンバーも見返してみてくださいね。

      【連載】ほくりく発酵ツーリズム
      バックナンバー

      ※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

      ふーぽ編集部
      writer : ふーぽ編集部

      ふくいのことならお任せあれ! グルメ、イベント、おでかけスポットなどなどふくいのいろんな情報をお届けします。

      おすすめ情報が届くよ

      ふーぽ公式LINEはこちら

      Follow us

      ふーぽ公式Instagramはこちら

      こちらもクリック!情報いろいろ

      新着の記事

      キーワード検索

      人気記事ランキング

        人気記事ランキング

            ページ上部へ
            閉じる

            サイト内検索

            話題のキーワード

            メニュー閉じる