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「それでも町は廻っている」(通称:それ町)は、TBS系列でアニメ化もされた作品です。
少年画報社の「ヤングキングアワーズ」にて、2005年から2016年まで10年以上連載されました。
2013年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞。
さらに2018年には、過去に「風の谷のナウシカ(宮崎駿)」や「うしおととら(藤田和日郎)」など数々の名作に贈られた星雲賞コミック部門を受賞しました。
(青雲賞は、小説部門ではこれまで「日本沈没(小松左京)」や「グイン・サーガ(栗本薫)」などそうそうたる顔ぶれが受賞しています)
【あらすじ】
主人公の嵐山歩鳥は東京の下町に住み、喫茶店シーサイドでアルバイトをする女子高生。
「流行っているから」という、マスターの老婆・磯端ウキの安直な思い付きで、シーサイドはメイド喫茶に生まれ変わり、ウキとともに歩鳥もメイドの恰好をすることに。
新たなスタートを切ったシーサイドであったが、ただ単にウェイターがメイド服を着ているだけで、それ以外はこれまでの姿となにも変わらないお粗末なものだった。
歩鳥の同級生であり、サブカル好きでメイドへのあこがれを持っていた辰野トシ子は、誘われてシーサイドにやってきたものの、理想と違うメイドカフェに落胆しその場で説教を始める。ウキはそんなトシ子を気に入り、メイドとして勧誘。
はじめは乗り気ではないトシ子であったが、思いを寄せるクラスメイトの真田広章がシーサイドに入り浸っていることを知り、働くことを決める。
しかし当の真田が淡い恋心を抱いていたのは、彼の幼馴染である歩鳥なのであった・・・。
歩鳥が暮らす下町・丸子町の商店街や高校を舞台にして、彼女の周りで起こる日常の出来事を描いているのですが、
何気ないストーリーの中に織り交ぜられた伏線が鮮やかだったり、ときおりSFやミステリー、ホラー的なエピソードがあったり、映画や小説や漫画やサブカルチャーなどを元にしたわかる人にはわかるような小ネタが髄所にしこまれていたりと、
なかなか一筋縄にはいかない作品です。
という風に書くと、少々奇抜な作品に思われちゃいそうなんですが、この作品では一人ひとりの人物がものすごく丁寧に描かれているんです。
「このキャラクターだったら、こういうことするだろうな」と登場人物たちのとる行動にいちいち納得したりだとか、とある登場人物がまた別の登場人物をどんな風に思っているかなどがセリフからそれとなくわかったり。
読んでいくうちにだんだんとキャラクターが愛おしくなってくきます。
真田の親友である浅井が、奥手ながらも密かに思いを寄せる同級生に告白するシーンなんかは、それ町の中でのふーぽ編集部的名シーンのひとつです。
あと作品中にはたびたび福井ネタが登場します。
歩鳥の母親の実家はどうやら福井県らしく、里帰りのエピソードで「のくてぇ」などの福井弁が出てきます。
また単行本第6巻では、同じく歩鳥たちが福井にやってきたエピソードで、
いまはなき「森田市民プール」をモデルにしたプールでのシーンもあったり。
その6巻には「福井市宇園住所(うそのじゅうしょ)」という記載が意外なとこに隠されてるので、
ぜひ探してみてください。
さてさて、そんな漫画を描いてきた石黒先生の待望の新作で、「このマンガがすごい!2019」男性編第1位に輝いたあの作品を、そろそろご紹介いたしましょう!!