「福井の忍者、注目度上昇中」/ 司書・歴史研究者 長野 栄俊さん①【ふーぽコラム】

「福井の忍者、注目度上昇中」/ 司書・歴史研究者 長野 栄俊さん①【ふーぽコラム】


福井にゆかりがあったりなかったりする、いろいろな書き手がよしなしごとを書き綴る「ふーぽコラム」のコーナー。

今回は、福井県福井市にある文書館・図書館で勤務している司書・歴史研究者 長野 栄俊さんの1回目です。


 


 

福井の忍者、注目度上昇中。

 

150年ほど前まで福井の町には12人の忍者が住んでいた。
そう話すと大抵の人は「へぇ」と驚いてくれる。

2017年の秋、映画「忍びの国」を観て、ひとり忍者熱を高めていた私は、家族とともに小旅行に出かけることにした。行先はもちろん、忍者の聖地=伊賀に決まりだ。


同地を訪れると、市庁舎の横断幕に「伊賀市は『忍者市』を宣言しました」という誇らしげな文言が踊り、忍び装束のチビッコ忍者が町のあちこちを闊歩する。

忍者屋敷に忍者ショー、手裏剣投げに興じる観光客のなかには外国人の姿も見受けられた。NINJAはインバウンド推進の強力なコンテンツになっているようだ。

 

漫画や小説、映画などフィクションの世界では、忍者は人知れず敵地に忍び込み、超人的な忍術を駆使して敵と戦う。
そんな姿に惹かれて忍者ファンとなった人も多いのではないか。かく言う私もその一人だ。



しかし伊賀から帰った私は、フィクションではない〝リアル忍者〞を探し求めるため、福井の古文書を見直してみることにした

 


手始めにインターネットで公開されている松平文庫を調べ始めた。


すると、福井城下の絵図面には忍者の屋敷が堂々と書き込まれ、藩士の名簿にも忍者の名前や給料が明記されているではないか。

 

これでは、まるで忍んでいない。

彼らが藩内外で探索任務にあたっていたこと、武器庫の管理などを職務としていたこと、短い弓を武器としていたことなど、その実像が次々に明らかとなった。

「慶永公御代給帳」/ 左ページ左端下部 「小栗右衛門は武具支配・忍之者預りで配下には忍之者十人・忍之者下役二人」 とある

【拡大】「慶永公御代給帳」/左端下部 「小栗右衛門は武具支配・忍之者預りで配下には忍之者十人・忍之者下役二人」 とある

御城下之図(全体)/ 慶応期(1865-68)の福井城下の様子を描いた絵図

御城下之図(部分)/ 忍組と書かれたエリアは忍之者が集住していたエリア


※画像はすべて、松平文庫・福井県文書館保管

 

幕末の名君・松平春嶽も忍者を連れて参勤交代をしている。


1649年に設置された福井藩の忍者(忍之者・忍組)は、1866年に廃止されるまで約220年のあいだ存続した。
さすがに超人的忍術の痕跡こそ見つけられなかったが、福井にも確かに忍者は実在したのである。



2018年春、県立図書館で忍者の古文書展を開催すると、多くの方が関心を寄せてくださった。

同年秋には福井藩の忍者を考察した私の論文が国際忍者学会の学会誌に掲載され、2019年の8月17日には、〝忍者市〞での講演する機会もいただいた。


この一年で〝忍者界〞における福井の認知度は少しだけ向上した。

もう少し注目が集まれば、やがては誘客やフィクションの種になりはしないか。


古文書をながめながら、そんなことを夢想する日々である。




長野 栄俊(ながの・えいしゅん)

1971年、石川県生まれ。
福井県福井市にある文書館・図書館で勤務。
福井藩史研究のほか奇術、妖怪に関する著作を発表。

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