「〝福井オオカミ〞の真実とは?」/司書・歴史研究者 長野栄俊さん③【ふーぽコラム】

「〝福井オオカミ〞の真実とは?」/司書・歴史研究者 長野栄俊さん③【ふーぽコラム】


福井にゆかりがあったりなかったりする、いろいろな書き手がよしなしごとを書き綴る「ふーぽコラム」のコーナー。

今回は、福井県福井市にある文書館・図書館で勤務している司書・歴史研究者 長野 栄俊さんの3回目です。


 


 

〝福井オオカミ〞の真実とは?


JR福井駅から徒歩10分、福井県国際交流会館の辺りに1匹のオオカミが現れた

今から109年前、1910(明治43)年8月3日のできごとである。



街中でオオカミ? と驚かれるかもしれないが、当時、福井城址の本丸とその東側には、東京ドーム1個分もの畑や果樹園が鬱蒼として広がっていた。旧藩主松平家が開設した松平試農場である。

ここに入り込んだ狂暴なオオカミは試農場職員らによって捕殺された。



ニホンオオカミは1905(明治38)年の奈良県での捕獲例が最後の個体とされ、環境省レッドデータでは「絶滅」種に分類されている。この〝福井オオカミ〞はその5年後の出現で、通説を塗り替える可能性があるのだ。



1961(昭和36)年に福井新聞がオオカミの写真発見を報じると、新聞社には当時を知る古老の回想が数多く寄せられた。
どうやらオオカミは巡回動物園から逃げ出したものらしく、現在の鯖江市域や福井市域で子どもに噛みつくなどしながら逃げ回ったものという。



翌年の日本哺乳動物学会で、これを最後のニホンオオカミとする説が示された。
しかし一頭だけ写った写真と半世紀も経った回想だけでは説得力に欠け、結局はチョウセンオオカミの可能性が指摘されて説は否定された。



ところがその後、松平文庫(福井県文書館保管)の中に、オオカミの体重(約19㎏)を記した日記、捕殺者と一緒に撮影された別の写真が確認され、2003(平成15)年発表の論文では再度ニホンオオカミ説が提唱された



それでも今なお定説は覆っていない。詳細を伝えたであろう当時の県内新聞が一紙も残っておらず、巡回動物園で飼育されていたオオカミの正確な種も特定されていないためだ。



何より標本が現存しないことが大きい。捕殺後に市内で製作された標本は小学校に寄贈されたものの、福井空襲で焼失したという。唯一現存する標本の写真には「純日本種狼」との題が付いているだけに残念でならない。



この2019年9月には、NHK-BSのニホンオオカミ特番で〝福井オオカミ〞が取り上げられた
生存を信じて調査を続ける人もいるように、ニホンオオカミにロマンを感じる人は多い。



近県の県立図書館に出向き、109年前の新聞をめくってオオカミの記事を探す私も、不思議なロマンに突き動かされる一人である。

 

「試農場平面図」/ 福井城址の本丸・東三の丸は果樹園や蔬菜園が広がっていた

 

 

「オオカミ写真」/ 明治43年8月4日 捕殺者とともにオオカミの死骸を撮影。ニホンオオカミとすれば唯一の写真


※画像はすべて、松平文庫・福井県文書館保管


長野 栄俊(ながの・えいしゅん)

1971年、石川県生まれ。
福井県福井市にある文書館・図書館で勤務。
福井藩史研究のほか奇術、妖怪に関する著作を発表。

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