「福井の怪談、集まっています」/司書・歴史研究者 長野 栄俊さん②【ふーぽコラム】

「福井の怪談、集まっています」/司書・歴史研究者 長野 栄俊さん②【ふーぽコラム】


福井にゆかりがあったりなかったりする、いろいろな書き手がよしなしごとを書き綴る「ふーぽコラム」のコーナー。

今回は、福井県福井市にある文書館・図書館で勤務している司書・歴史研究者 長野 栄俊さんの2回目です。


 

 


 

福井の怪談、集まっています。


〝怪談〞といえば夏だが、冬のそれも悪くない。


「恐ろしい話」とばかり思いがちだが、辞書を引いてみると、「怪談」には「不思議な話」や「あやしい話」という意味も載っている


恐ろしいだけの話は得意ではないが、不思議な話は好物の部類だ。


杉浦日向子の漫画『百物語』は、江戸時代の不思議な話99話を収めたもので私が愛読する一冊だ。
なぜ話数が100に満たないかというと、一夜で100話の怪談を語り終えるとき、とんでもないことが起こるとの言い伝えによる。



さて、実はここ福井の地にも、江戸時代の怪談を数多く収めた書物が伝わっている
くずし字で書かれたそれらを読み解き、PCに打ち込む作業を10年ほど続けてきた。


その中からお気に入りの2話を紹介しよう――。



【其ノ一】

天守をはじめ福井城下の大半が焼けた〝寛文9(1669)年の大火〞にまつわる話

火事が起こる日の明け方のこと。
朝市に向かう人たちが見たのは、家々の屋根の上辺りを何人もの鎧武者が行進する姿だった。

また火事が起きてからのこと。松岡藩主の松平昌勝公が消火の手伝いのため、福井城へと急行する途中、丸山(城の北東約3キロ)の辺りから城の様子を遠見した。

すると福井城の天守の上に大きな法師がいて、団扇を使ってあちこちに風を送っているのが見えた。昌勝公は「この火事は防ぎようがないな」とつぶやいたという。
この日は、竹やぶの竹の先が地面に着くほどの強風が吹いたとのこと。




【其ノ二】

ある時、川越宇右衛門という侍の屋敷の勝手口に、一人の童が物乞いに来た。顔を見ればたいそう美しい。

そこで宇右衛門が「わが家で奉公する気はないか」と尋ねると、童は「身寄りもないので、どうかお屋敷に置いて下さい」と答えた。身だしなみを整えさせてみると、いやしからぬ風体。

気に入って召し使ううち2年の月日が過ぎた。

この童が、宇右衛門が大切にしているウグイスの世話をしていた時のこと。
誤ってウグイスがカゴから飛び去ってしまう。すると童は「アレアレ」と言って飛び上がり、自分もそのあとについて飛んで行ってしまった・・・。

 

 

——気がつけばこんなあやしい話が90話近くも集まっている。

そろそろ止めないと、とんでもないことが起きてしまうかも・・・。



長野 栄俊(ながの・えいしゅん)

1971年、石川県生まれ。
福井県福井市にある文書館・図書館で勤務。
福井藩史研究のほか奇術、妖怪に関する著作を発表。

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