笑福亭笑生の「小浜市旭座で『笑福亭鶴笑・笑生親子会』を開催したよ〜」【福井よしもと芸人日記】

そんな沢山の思い出を込めて遂に辿り着いた4月17日本番当日。

相変わらずオミクロンは猛威を奮っていたが、延期した間に皆んなオミクロンとの付き合い方も学び、どうやら50人以上入っても大丈夫との事で予約券60枚は売り切れ、当日券込みで70人近くのお客さんが入る事になった

 

 

 鶴笑 「よ〜やったな笑生。手売りチケットでしっかり顔を見て売り込んだからこそ、こうやって当日来てくれたんや。良い修行になったやろ。芸人はこうやってお客さんに愛されて舞台に立つ事が出来るんや、落語家は座ってるけどな」

 

 笑生 「はい! ありがとうございます! 正直何度も心が折れかけましたが、なんとかこの日を迎えられました!」

 

 笑有 「お兄さんトイレ行きたいです」

 

今どうしてもそれ言わなあかんか?!

 

 鶴笑 「はっはっは! 本番までまだ時間ある。お昼に地元の海鮮市場で手作りのお寿司買って来たから、皆んなで食べて元気出そうや。」

 

 笑有 「海鮮♪海鮮♪海鮮♪海鮮♪」

 

 笑生 「海鮮♪海鮮♪海鮮♪海鮮♪」

 

ヤバい移った。

いかんいかん本番前に調子に乗ってはいかん。


お昼ご飯もいただき本番に備えていると、


 音響スタッフ 
「笑生さん。本日の一番太鼓は誰が叩きますか?

 

 笑生 「一番太鼓?」

 

 音響スタッフ 「はい、落語会ですから、生演奏で太鼓を叩くでしょうから、こちらに太鼓は用意しております。一番太鼓は誰が叩きますか?」

 

しまった〜!

すっかり忘れていた!

 

そう、落語家は「開場を告げる一番太鼓」「開演を告げる二番太鼓」「仲入り休憩のシャギリや終わりを告げるバレ太鼓」など、生演奏でお客さんにお届けするのである。

そんな大事な太鼓演奏をする人の事をすっかり忘れていた〜!

どどどどどどどどどうしよう!

 

 笑有 「僕が太鼓叩けますので、今日の太鼓鳴り物やらせていただきます。」

 

ありがとう!笑有さん!

君は「海鮮♪」って言うだけの男では無いとニラんでいたよ!

 

 笑生 「安心してください。ウチの4番弟子の笑有が太鼓演奏、開口一番を務めます」

 

内心の心臓バクバクを全く感じさせる事無く、いけしゃあしゃあと音響スタッフに告げる。

 

 笑有 「笑生兄さん、太鼓の事忘れてましたね?」

 

うむバレている。

 

 笑有 「師匠に笑生は親子会の事て頭いっぱいやから、太鼓の事まで考えて無いやろから、笑有叩いてな〜と言われてますので。」

 

師匠にもバレている。

 

 笑生 「すいません、宜しくお願いします。」

 

情け無い兄でごめんよ、笑有さん。

 

弟弟子の太鼓を合図に幕が上がり、師匠が舞台上で挨拶を始める。

 

 鶴笑 「皆さんようこそお越しくださいました! それでは福井が生んだスター! 我が弟子、笑福亭笑生の登場です! 」

 

なんというハードルの高さよ。

意を決して登場する僕。

 

 鶴笑 どっから出とんねん!

 

 笑生 「え? 旭座は花道から出るんじゃ無いんですか?」

 

 鶴笑 「そんな事したらほんまのスターみたいやないか、修行中の弟子みたいなもんは、舞台の端っこから出てくんねん。

 

 笑生 「えー! ほんまのスターみたいって、地元のスターって思って無かったんですか?

 

 鶴笑 当たり前や!

 

師匠とのコミカルなやり取りにお客さんも徐々にほぐれて、温かい空気に包まれていく。

 

 鶴笑 「今日は笑生の家族の方々も来られてるとか。笑生ええとこ見せたれよ。家族の方々はとの辺りに座ってらっしゃるんや?」

 

 笑生 「2列目以降は親戚だらけです。」

 

 鶴笑 「何が落語会や!こんなもん親戚の集まりやないか!」

 

師匠のツッコミに会場が湧く。

程よく空気がほぐれた処で、師匠が「まずは開口一番を務める笑福亭笑有です」の一言で挨拶を終える。

すかさず出囃子がなり、笑有さんの開口一番から会はスタートした。

 

 鶴笑 「笑生、やっぱり花道から出たらウケたやろ。良かった良かった。」

 

流石師匠。

出番直前に「笑生は呼び込んだら花道から出て来た方がウケるな〜、ちょっと花道から来て〜」と言われた時はウケ無かったらどうしようって思った不肖の弟子をお許しください。

 

開口一番は古典落語の一席「金明竹」で幕を開けた。

笑有さんの落語は2年目とは思えない程落ち着いて良く声が通った。

お客さん達も後半に行くに連れて笑い声がどんどん大きくなる。

後で家族に聞いたら僕より先輩に思えたと。

兄より良く出来た弟とはいかんな笑有さん。

 

 

開口一番が終わり続いて師匠、鶴笑の登場。

古典落語の一席で「酒の粕」。

酔っ払いの演技にお客さんの笑い声も一段と大きくなる。

後で家族に聞いたら僕より先輩に思えたと。

当たり前や!

師匠や師匠。

 

 

そして三番手に遂にこの時が来てしまった。

パペット落語の一席「ジュラ紀からこんにちは」。

この噺は僕、笑生のオリジナル創作落語で、「福井県勝山市にもし今も恐竜が生き残っていたら?」をテーマに落語を作った。

僕は福井県にある色んなモノをテーマにした落語を作りたくて落語家に転身したのだ!

家族に後で聞いたら、

テーマやストーリーは良かったけどガチガチに緊張していてもっと修行が必要と感じた事。

パペットの登場のシーンに更なる改良が必要と感じた事。

一人一人の登場人物の演技をさらに深めて行く事が重要だと言われ・・・

僕だけめちゃくちゃ的確なダメ出し食らっとるなこれは!

 

兎にも角にも全力を出し一席を終えて10分程の仲入り休憩。

この時に落語家はお客さんの空気や前半の反省を後半に活かす事を考える。

お客さんは手洗いに行ったり、周りのお客さんと語ったりと前半の高座の余韻を楽しむ。

 

そして仲入り休憩後のシャギリが流れ後半がスタートする。

 

仲入り後はまたも私、笑生が登場。

今度は古典落語の一席「犬の目」。

一度出ている事もありガチガチの緊張感も無くなりスムーズに噺に入る事が出来た。

後で家族に聞いたら親戚中から「アイツ・・・古典出来るんや・・・」ってヒソヒソ話してたらしい・・・。

いや噺に集中せえや!

 

そして、オチの一言と共に僕の出番は終わる。

ここからはトリを務める師匠の出番。

大事な最後の出番。

 

ここまで来るとお客さん達は疲れる。

笑い疲れと言うよりは、純粋に落語会の時間の長さに疲れたりもする。

 

だからこそトリは大事なのだ。

トリでお客さん達が疲れて台無しになってしまう落語会もあったりするので本当にトリの責任は重大なのである。

 

師匠にのしかかった責任は重く、僕の地元開催だからの緊張感なんて屁でも無いくらい重いものだ。

そんな最後にいつもの様に飄々とした感じで師匠は登場する。

そしてその破天荒でダイナミックな噺が始まる。

 

 

この噺は師匠のパペット落語の一席。

「立体西遊記」

師匠は若い頃、ナインティナインさん達と同じ劇場心斎橋筋2丁目劇場に出演しており、落語家が漫才師に笑いで勝つにはどうしたら良いか? を突き詰めた結果パペット落語を創設したのである。

そうやって作り上げた師匠の代表作「立体西遊記」は、この日の長丁場に疲れたであろうお客さん達を物ともせず笑の渦に巻き込んでいった。

圧巻、もう圧巻である!

お客さんが笑う笑う!!

正直M-1以上の笑い声ちゃうか? と思うぐらいお客さん達はもうメチャメチャに笑っていた。

何度も観ている僕ら弟子も笑っていた、音響スタッフや吉本の社員に至るまで。

 

あの日あの場にいた全員を笑かし、演目を終えた師匠は僕を再度高座に上げ、最後にこう言った。

 鶴笑 皆さん笑生を宜しくお願い致します

 

カッコよ!

お父ちゃんカッコよ!

 

2人頭を下げてバレ太鼓が流れる中、緞帳が下り師匠と顔を見合わすと師匠が

 

 鶴笑 「笑生! お前何か忘れてないか?」

 

しまった〜!

笑有さん太鼓止めて! スタッフの方緞帳上げて〜!

お客さんまだ帰らんといて〜!

 

 笑生 「すいません忘れてました〜! ただ今よりサイン入りポスター争奪ジャンケン大会を開催します!」


 鶴笑
「最後まで締まらんな〜」

 

お後が宜しい様で

お時間〜!

 

 

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