発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第12回-農村に根付いた茶会、バタバタ茶(富山県朝日町編)

    発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第12回-農村に根付いた茶会、バタバタ茶(富山県朝日町編)

    ふーぽ読者のみなさん、こんにちは。
    発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

    福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中の《ほくりく発酵ツーリズム》を、ふーぽでもお届けしていきます。

    福井県をはじめ、石川・富山を含めた“北陸”の発酵文化を紹介します。

    発酵から北陸の歴史や気候風土を読み解いていきましょう!

     

      発酵デザイナー 小倉ヒラク

      1983年東京都生まれ、山梨県在住。文化人類学と発酵学を独自に融合させた「発酵文化人類学」を展開し、「発酵デザイナー」の肩書で微生物研究や食文化の普及に取り組む。著書『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。金津創作の森美術館(福井県あわら市)で北陸の発酵食文化を紐解く展覧会「Fermentation Tourism Hokuriku ~発酵から辿る北陸、海の道」2022年9月17日(土)~12月4日(日)を開催予定。

      展覧会詳細は金津創作の森美術館HPまで。


      富山と新潟の県境、朝日町の蛭谷(びるだん)という集落に、バタバタ茶という発酵茶があります。

      製法も味わいも飲み方も全てがユニークすぎるこのお茶を辿ってみると、なんと中世日本にタイムスリップしてしまうのです。

       

      知られざる農村の発酵茶の系譜

      発酵させずにフレッシュな風味を尊ぶ緑茶が日本の王道。

      なのですが、各地の山村にひっそりと、中国のプーアル茶のように微生物で発酵させたお茶の文化が根付いています。

      バタバタ茶もそんな不思議な日本の発酵茶の系譜です。

       

      さてその製法はというとだな。

      夏の盛りに摘んだ遅摘みの茶葉を、堆肥のように木枠のなかに固めて主にカビなどで発酵させる。

      高知の碁石茶(ごいしちゃ)や徳島の阿波晩茶(あわばんちゃ)のような酸味のある発酵茶ともまた違う、キノコのような香りとうま味のあるお茶です。

      個人的には中国湖南省でつくられている茯茶という発酵茶に似た印象。

       

      このバタバタ茶、味もユニークなのですが、飲み方がさらにユニーク。

      やかんでざっくり煮出した茶をやや口のすぼまった茶碗に大さじ2〜3杯分ほど入れ、「夫婦茶筅(めおとちゃせん)」と呼ばれる、筆のような茶筅を2つ連結した謎デザインの道具で点てます。

      なんと! 抹茶ではなく黒茶を点てるという前代未聞の喫茶メソッドなのですね。

       

      茶がこぼれないようにすぼまった茶碗のヘリに、幅の広い茶筅がぶつかるのでバタバタと音がする

      これが「バタバタ茶」の名前の由来です。

       

       

      バタバタ茶の起源は?

      この摩訶不思議な農村の発酵点茶、どのようなシチュエーションで飲むかというとだな。

      集落の寄り合い所に近所のお父さんお母さんが集まって毎日朝と午後に「バタバタ茶会」を開きます。

      僕もご縁があって、バタバタ茶会に混ぜてもらえました。

      農村に根付く点茶の系譜


      ファンシーなエプロンを着たお母さん、つなぎを着たお父さんが漬物やお菓子を持ち寄って楽しそうにバタバタ茶を点てている。

      「いったいいつからこのお茶会が続いているんですか?」と参加者の一人に聴いてみたところ、

      「そうね。室町時代くらいからかな」と衝撃の回答。

      バタバタ茶会の起源は、どうやら仏教に起因するらしいのですね。

       

      15世紀、浄土真宗の僧がこの地に布教で訪れた折に、村人に話を聞いてもらうためにお茶会を企画したのが始まりだとされています。

      中国から渡ってきた禅の茶が、富山の小さな集落で発酵茶と融合し、「農家の茶」としてひっそりと根付いていることに僕は深く深く感動したよ・・・!

       

      ここ蛭谷の集落は、時代を超えて異なる系譜の茶が混じりあった“ハイブリッド茶の湯”のるつぼなのでした。

       

       

      ラブリーな発酵茶会

      バタバタ茶を点てると、茶碗のなかでカプチーノのような茶色い泡が立ち、甘いバニラのような香りが部屋に広がっていきます。

      お母さんがバタバタと茶筅を動かしながら、「あなたどこから来たの? 漬物食べる?」とよそ者の僕に優しく話しかけてくれる。

      カプチーノのような質感


      農作業の合間に、みんなで暖かい部屋に集まって茶会をするのが何よりの楽しみなのだそう。

      バタバタ茶は嗜好品というよりは食事と合わせる味噌汁のようなもので、昔は塩を入れて飲んだりもしていたようです。
       

      厳しく研ぎ澄まされた「茶道」とは違う、あたたかくて素朴なバタバタ茶会。

      茶「道」になる以前の茶の愉しみが詰まった、思わず頬のゆるむ嬉しい時間ではないですか・・・!

      人生にモヤモヤを抱えた時は、蛭谷のバタバタ茶会に参加してみると良いかもしれません。

       



      いかがでしたか。

      北陸の発酵文化を訪ねる《ほくりく発酵ツーリズム》

      次回もお楽しみに!

      【連載】ほくりく発酵ツーリズム
      バックナンバー

      ※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

      ふーぽ編集部
      writer : ふーぽ編集部

      ふくいのことならお任せあれ! グルメ、イベント、おでかけスポットなどなどふくいのいろんな情報をお届けします。

      おすすめ情報が届くよ

      ふーぽ公式LINEはこちら

      Follow us

      ふーぽ公式Instagramはこちら

      こちらもクリック!情報いろいろ

      新着の記事

      キーワード検索

      人気記事ランキング

        人気記事ランキング

            ページ上部へ
            閉じる

            サイト内検索

            話題のキーワード

            メニュー閉じる