福井の郷土料理を次世代へ。地域の伝統を守る女性グループの“おかって”におじゃましました。

福井の郷土料理を次世代へ。地域の伝統を守る女性グループの“おかって”におじゃましました。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

地元で愛され続ける福井の伝承料理を次世代に受け継ぐために。

今回は、料理を作って伝える女性グループ「殿下道草だんごの会」と「グループマーメイド」の“おかって(台所)”におじゃましました。

殿下道草だんごの会

草色のエプロンにピンクで書かれた「道草だんごの会」がトレードマーク。奥では「草だんご」を包む準備も並行して行われていました

手を合わせて包む 滋養たっぷり“殿下(でんが)の味”。

まだ夜の気配が残る早朝。

福井市殿下地区の小さな台所では毎週末「殿下道草だんごの会」のメンバーが集まり、地域に根付く伝承料理「葉ずし」をこしらえます。

「おはようございます」と明るい挨拶が飛び交い、静かな台所に活気が宿ります。

この日は県内の店で販売するための葉ずしや草だんごをそれぞれ70個ほど作り、午前8時半までに配達するスケジュールです。

限られた時間の中、息の合ったチームワークで準備が進みます。

五目寿司をアブラギリの葉で包んだ「葉ずし」

葉ずしは法事や祝いの席などのごちそうとして殿下地区で伝承されてきました。

「手軽に作れておいしいからね」と代表の佐々木昭子(ささきあきこ)さん。

炊き立てご飯の熱を冷ましながらしっかり混ぜます。殿下地区の葉ずしは甘い金時豆を使うのが特徴

ひじきやシイタケ、うす揚げ、ニンジンに甘く煮た金時豆を入れ、香り豊かな酢飯に混ぜます。

「『おいしくな〜れ』と願いを込めて、手を合わせるようにアブラギリの葉で一つずつ丁寧に包むのよ」。

人技でほぼ同じサイズに

出来立てを一ついただくと、五目飯とほんのり移った葉の香りが清々しい。

口いっぱいに旨味が広がり、幸せな気持ちに包まれました。

 

元気な“おかあちゃん”たちが地域の伝統を守る。

完成した葉ずしが並ぶ様は圧巻。殺菌作用があるといわれるアブラギリの葉は、毎年7~10月に約15,000枚を収穫し、翌年分として保存します

もともとは草だんごをメインに地域の祭りやイベントで販売していた「殿下道草だんごの会」。

以前、地区には郷土料理を提供するレストランを開いていたが、高齢化が進み2019年に閉店。

「殿下の味を未来に残したい」と立ち上がった“おかあちゃんたちが、2020年から葉ずしづくりをスター トさせました。

現在はイベント出店だけでなく、直売所や地域住民の注文にも応じ、引き出物やお弁当の提供まで手掛けています。

キッチンスタジオ裏ではシイタケも栽培。葉ずしの材料として使用することも

活動の根幹には、深い地元愛と、伝統を守りたいという強い想いがあります。

しかし、拠点である建物の老朽化や人手不足といった問題は山積みです。

「金時豆とか、昔は畑で作ってたんだけどね。イノシシやシカが全部食べちゃうから、なかなか作れないのよ」。

それでも自分たちができる範囲で、できることを精一杯。

「私たち、元気だけはあるからね」と笑うメンバーたち。

その情熱が、大きな力となっています。

合掌しながら一つ一つ丁寧に握る姿は神聖な雰囲気

小さな台所で想いを込めて握られる葉ずしは、今日も殿下地区の豊かな文化と人々の温かさを伝えています。

殿下道草だんごの会

伝承料理「葉ずし」を継承するグループ。福井市の「ごーる堂ソフトクリーム直売所」「越麺屋」などで土日に販売。12月中旬~3月半ばまでは雪の影響などで販売停止中

 

 

グループマーメイド

若狭の素材と向き合い、手間暇をかける。

小浜市食生活改善推進員の有志で2003年に結成された「グループマーメイド」は、市の“食のまちづくり”活動に協力しています。

グループ名は地元に伝わる「八百比丘尼(はっぴゃくびくに)伝説」にちなみ、人魚のようにいつまでも若々しく、元気に活動できるようにとの想いが込められています。

現在メンバーは30人。

小浜市の「御食国(みけつくに)若狭おばま食文化館」にあるキッチンスタジオを拠点に、地域に根差した食文化の奥深さや調理の楽しさを伝えています。

 

主な活動は月に2度、小浜の旬の食材を使った料理教室。

「小鯛の笹漬けと夏野菜のグリーンソース」や「焼き鯖ちらし寿司」など、和洋問わず多彩なラインアップ。

参加者は育児中の女性から料理が趣味の高齢男性までと幅広い。

観光客に向けた「鯖の押しずし」や「でっちようかん」など若狭の名物土産作り体験などでも講師を務めます。

写真左が出口さん、右が仲野さん。火加減などの細かい調整もあうんの呼吸で華麗にこなします

この日は、メンバーの出口芳江さんと仲野光惠さんの二人がキッチンに立ち、若狭湾で獲れた鯖を使った「鯖のぬた」作り。

酢でしめた鯖と小浜の伝統野菜「谷田部(やたべ)ねぎ」をカラシやみそで味付けする、郷土料理です。

「鯖のぬた」。酢とカラシの程よい風味が鯖によく絡み、ご飯がほしくなります

「ゴマは火を通すとパリッとした食感になるのよ」「カラシはほかの素材の持ち味を生かすため、加減が大切」「酢やカラシの旨味が逃げないよう、ネギは冷ましてから入れるの」など、長年の経験で培われた知識と技を惜しみなく教えてくれます。

みそや砂糖、酢、塩、練りガラシは、試行錯誤し作り上げた黄金比

「谷田部ねぎ」はゆでる際に塩を少々加えると発色がよくなります。シャキシャキ食感が楽しい

すり鉢でゴマをすってから、調味料と水でしっかりと練ったカラシを加えて混ぜます

 

伝統の味を家庭にも。若い世代に伝えたい。

子どもはもちろん、30〜40代の新世代の食への関心を高めることも今の課題。

「若い人たちにもっと郷土料理を食べてもらいたい。けど、慣れた味じゃないと食べにくいからね。小さいころから“家庭の味”として取り入れてもらえたら」と出口さん。

設立メンバーの出口さんと仲野さんは「この会の人はみんな料理が大好き。だから活動を続けられるのよ」と顔を見合わせながら笑います。

 

八百比丘尼のように末長く、健やかに。

小浜市民の食と健康のため、今日も浜のマーメイドたちはキッチンに立ちます。

グループマーメイド

「御食国若狭おばま食文化館」で「季節の調理体験」教室を毎月開催。1月は発酵食品を使った「酒粕のケークサレ」や「冬野菜のクラムチャウダー」を予定。詳しくはHPより。 
ホームページ

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writer : ふーぽ編集部

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