笑福亭笑生の「大阪で落語の修行をしてきました! 」【福井よしもと芸人日記】

    笑福亭笑生の「大阪で落語の修行をしてきました! 」【福井よしもと芸人日記】

    どうも〜! 福井県住みます芸人で落語家の笑福亭笑生です! 

     

    今回は、笑生の大阪落語修行のお話! 

     

    2021年3月12日〜21日にかけて「大阪落語修行強化合宿」と題しまして、落語会のお手伝いや師匠に落語の稽古を付けていただく事になり、バタバタと弟子仕事に明け暮れておりました。

       

      今新しく「時うどん」と言う落語を稽古しています。

      すると師匠が突然、「明日『時うどん』の稽古をしようか。13時30分に駅に来なさい。稽古場に行くから」

       

      来た! 

       

      落語の稽古は対面しての「口立て(くちだて)の稽古。

      まずは師匠がお手本を見せてくれてその後弟子が見様見真似で同じ様に演じる・・・何百年も前から変わらない。

       

      やった事の無い人はそりゃわからないと思うが、これが本当に緊張する・・・。

       

      師匠と呼ばれる人たちはこの落語界では神様の様な存在で、その神様がわざわざ自分の為に時間と労力を割いて教えてくれる。

      『聞いてませんでした』では許されない。

      ウチの師匠は優しいので嫌な顔一つせず何回でも教えてくれるが、それでも緊張するものはする。

       

      その稽古が明日来る・・・。

      やれるか? やれる! 台本は頭に入っている。

      やってやる!

      次の日、気合い充分に師匠に付いて稽古場へとむかいました。

       

      電車を乗り継ぎ、歩き、まだ歩き、まだまだ歩き・・・

      何処まで行くのだろうと思っていると大阪で一番有名な景色が見えて来た・・・!  

       

      通天閣だ!

      なんで通天閣? 稽古は? 

       

      疑問だらけな僕に師匠が振り返り、「ここで時うどんやろうか」

       

      へ? ここ? 通天閣がある場所は新世界と言って大阪有数の観光地で、沢山のお店や行き交う人だらけ。

      ここでやるの? 

       

      師匠「着物に着替えて来なさいすぐやるぞ。」

       

      マジか・・・なんてぶっ飛んだ神様だ・・・しかし神様の言う事は絶対だ。

      すぐに着物を来て師匠の元へ。

      コンクリートに直に正座する膝に砂利が食い込む。

       

      師匠「そんな事したら足痛いやろ、私のコートを座布団代わりに敷いたらええ。」


      ウチの神様は優しい・・・。

      しかしそんな申し訳ない事出来ませんと辞退すると、「弟子の大事な足にそんな事出来ひん、使いなさい」。

       

      ウチの神様は優しい・・・。(part2)

       

      「宜しくお願い致します。」と僕が正座して頭を下げると師匠も同じく頭を下げる。

       

      笑生「あ〜こっちゃ出といで、いや〜面白かったな〜。うん、ほんま面白かったな〜清やん・・・」

       

      突然始まる落語に周りの人の視線が一斉にこちらに刺さる・・・。

      何? え? あの人着物着て地べた座ったはるで?

      何か喋ってるで? 

      落語やってんの? 

      アホちゃう? 

      突如始まった路上落語に沢山の人からの視線や会話がこちらに飛ぶ。


      当たり前だ。

      何も知らない人からしたら男2人で対面で何しとんねん? と思われるのが普通だ。

       

      恥ずかしさと観光地のど真ん中での煩さと自転車や自動車が行き交う振動が伝わって来て、最早自分がしっかり落語をやれているのかも怪しい、兎にも角にもオチまで演じ、終わった・・・。

       

      あー恥ずかしかったと思っていると、

      間髪入れず師匠から「頭からもういっぺんしなさい」

       

      また?

       

      笑生「あ〜こっちゃ出といで・・・」

      師匠「笑生、声が小さい。本番通りにやりなさい。」

       

      やけくそだ! 

       

      笑生「あ〜! こっちゃ出といで! ・・・」

       

      また始まる、今度は中学生の集団がこっちを見て笑ってる。

      自転車乗ってるオバチャンもこっち見てる・・・

      外国の方・・・写真撮らないで・・・

      ぐるぐる考えながらまた必死で終わらせる。

       

      師匠「笑生、頭からや」

       

      かしこまりましたよ、神様。

      もう何度同じ噺(はなし)を演じたか分からなくなるくらい演じる。


      そうすると不思議な事に段々と師匠しか目に入らなくなって来た。

      音も、匂いも、振動も気にならなくなり師匠と自分だけしか感じなくなるくらい集中していた。

       

      頭の中には時うどんの世界が広がり、演じながらその世界の住人になった様な感覚になって演目を終えた。

       

      師匠「よし、良〜なったな。」

       

      顔を上げると、師匠の他に地元の怖そうなお兄さんが面白かったと拍手してくれていた。

      え? 他に人いたん? 気づかなかった。

       

      師匠「笑生、ギャラリーも出来て良かったな、今の感覚忘れたらあかんで。大分集中しとったな、この集中が大事なんやで。ここで出来たら舞台なんて恵まれた所なら何処でやっても大丈夫や! 」

       

      そう言う事か・・・。

      師匠は弟子の為にわざと条件の悪い路上で稽古を付けていたのだ。

      舞台度胸がこれから大事になると見越して。

      やはり師匠と呼ばれる人たちは凄い、神様扱いも頷ける。

       

      着物から着替えて帰り支度をしていると、一番遠くで見ていたおじさんがこちらに近付いて来て、『良いもん見してもろたから』と言って千円くださった。


      僕はこの日貰ったクシャクシャの千円札を一生忘れないだろう。

       

      そして稽古終わりの帰り道、師匠はふと振り返ってイタズラっぽい顔をこちらに向けてこう言った。

      師匠「笑生、明日は道頓堀や。」

       

      え〜!? 

      明日もやるんですか!! 

       

       

      福井の皆さん、落語家の修行は大変です。

      ※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

      福井 住みます芸人
      writer : 福井 住みます芸人

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