11月に入って直ぐ師匠の笑福亭鶴笑から
鶴笑 「笑生、12月11日に兵庫県で一門会がある。今年最後の一門会や」
笑生 「かしこまりました! 今回はどの様な一門会でしょうか?」
鶴笑 「うん、今回は皆んな新作落語で行こうと思う」
新作落語…
何百年も前から伝承されるネタは「古典落語」と言い師匠から弟子へとずっと受け継がれる。
それとは別に、落語家が個人で新しく作るネタを「新作落語」と言い、基本的に何の噺を作っても良い。
古典落語には「大根多(オオネタ)」と言い、ある程度芸歴を重ねないと出来ない噺があるが、新作落語にはその制約は無い。
長い噺だろうが人情噺だろうが怪談噺だろうが何でも良い。
ただ一つ、お客さんにウケたらと言う条件をクリア出来たら…
古典落語は何百年も受け継がれる過程で、色んな人のギャグだったりボケだったりツッコミだったりが入り、余程の事が無い限り客席が静まりかえる事は無い、ウケるアタリが付いているのだ。
しかし、新作落語はそれが無い。
一か八か自分が面白いと思った噺を作り出し、舞台で披露しお客さんの反応を伺うのだ。
圧倒的にこちらの方が怖い。
しかしウケたらその賞賛は全てその落語家のモノになる。
出来が良ければ他の落語家さん達が噺を教え欲しいとなり、それが次世代の古典となる。
今の古典落語も出来た時は新作落語だったのだ。
だからこそ、自分の作った噺が次世代の古典になるのは落語家の一つの夢なのである。
自分が死んでも噺が残る落語家としての証が残るのは、ほぼ全ての落語家の夢なのである!
と先輩落語家さんが言ってました。
…そう100%受け売りですよ、当たり前ですが。
そんな新作落語の会を今回はするとの事。
不安で一杯だが、師匠の命令は弟子は絶対だ。
やるしか無い!
笑生 「かしこまりました!初めて作りますが頑張ります!」
鶴笑 「よ〜言うた! 断られたらしゃ〜無いなと思ったがやる気があるみたいや、やってみい!」
えぇ!断れたんですか?
鶴笑 「ほな難しいかも知れんが、パペット落語で新作落語作って貰おうか」
パペット落語!?
我が師匠、笑福亭鶴笑は、扇子と手拭いだけで表現する落語の世界にパペット(人形)を使って表現すると云う技法を編み出した凄い師匠なのです。
国際的な人形劇の大会でグランプリを取った事もあるくらい凄い人なのである。
それを初めての新作落語でやる…
これは半端な噺は出来ない…
全身全霊で作らなければ…。
笑生 「かしこまりました! 必ず仕上げて見せます! 」
鶴笑 「断って来たらしゃーないと思ったがやるか? ほなやってみい!」
…断れば良かった…。