福井の在来種ソバ畑を訪ねて。「エコ・ファームてらお」(勝山市)で福井県産そば栽培への熱い思いを聞きました。【そばのうまれる風景】

    福井の在来種ソバ畑を訪ねて。「エコ・ファームてらお」(勝山市)で福井県産そば栽培への熱い思いを聞きました。【そばのうまれる風景】

    福井県産のそばは古くから受け継がれた在来種が、地区の生産者によって大切に育てられています。

    そのひとつ、勝山市の農事組合法人「エコ・ファームてらお」代表の森永新市さんにそば栽培への思いを伺いました。

    そばの出来具合が ファームの収益を左右する


    「エコ・ファームてらお」は、勝山市村岡町の寺尾と暮見の2つの集落の住民らで結成する農事組合法人です。


    現在55人が共同で13ヘクタールの水田に、奥越地方に受け継がれてきた大野在来のそばを栽培しています。

     

    水稲以外では、「そば」「麦」「里芋」がエコ・ファームてらおの3本柱。


    現在ほとんどの農作物がそうであるように、そばの収益単体では経営を成り立たせることは難しく、「てらお」でも公的補助金でコンバインなどの大型機械を揃え、共同作業で省力化と効率化を図りながら栽培を続けています

     

    汎用型の大型コンバインは補助金で購入した

    トラクターに付けて小畦に種を蒔くパーツ


    そばの収穫量は気候に大きく左右され、過去には一反(10アール)あたり10kgの年もあれば、90kg近く獲れた年も。全国の収穫量によって値段も大きく変動します。


    「そういう意味でも、そばはうちの収益を最も左右する農作物ですね」と森永さん。


    森永さんたちは安定した収量と収益を確保するために、さまざまな方策を試してきました


    そのひとつが、福井県農業試験場が開発した「小畦(こうね)立て播種(はしゅ)」という技術です。

     

    畦を立て高いところに種を蒔き湿害を軽減する

    小畦立てで栽培されたそば畑

     

    湿田に向いた技術 安定した収量確保へ

    そばは水分を極端に嫌い、種を蒔いてから数日の間に雨が降ると、その年の収穫は諦めなければならないと言われるほどです。


    福井県では水田で作付けされることが多く、湿害の克服は大きな課題でした。

    「小畦立て播種技術」は周囲に排水溝を作り、種子を高い位置に蒔くことで、種子が水に長時間水没するリスクを減らし、湿害を回避・軽減します。

     

    「エコ・ファームてらお」がこれを導入したのは平成29年。

    種を蒔く最適な深さを研究する姿勢や、完全有機栽培による環境配慮型農業などが評価され、(一社)日本蕎麦協会が主催する「平成元年度第31回全国そば優良生産表彰事業」では、最高賞の農林水産大臣賞を受賞しました。

     

    「小畦立てで収量が飛躍的に増えるとは思っていませんでしたが、実際は予想を上回る収量がありました。

    今後も安定して収量の底上げができるよう、いろいろとやり方も工夫しています。

    生産者としては、おいしいものを作るのはもちろん、それを継続して届けたいですから」。

     

    この技術は勝山の土地に向いていることがわかり、今後の生産量安定への期待を寄せています。

     

    「ここらへんのそばはうまいぞ」 年寄りの言葉をきっかけに


    エコ・ファームてらおは平成16年、勝山市で初めての農事組合法人として誕生しました。

    組合員全員が他に仕事を持ち、それぞれが担当する作物の作業時期になると、会社を休んで作業に当たっています。

     

    売れるものでなければ作れない。また、売れるためにはおいしくなくてはならない。

    組合として何を作ろうかという話になった時、ここらへんのそばはうまいぞ」という先輩方の言葉がきっかけで、そばの栽培を決めたと言います。

    「何だかんだで、年寄りの言うことは間違いないんですわ」と森永さんは笑います。

     

    当時、奥越在来のそば粉の流通量はわずかで、そばを自家栽培する家庭も激減していました。

    春の田植え後に『御田祭(おだまつり)』というみんなで飲み食いする行事があって、そこではそばが、欠かせないごちそうです

    上手に打ったそばをみんなで食べるのはそりゃ楽しいもんです。

    失敗して短いのやら不揃いなのは、油で揚げてかりんとうみたいにして出てくることもあります(笑)」と森永さん。

     

    集落ではそば打ちの上手な女性は、一目置かれていたと言います。

     

    奥越の大自然と共に 在来種を守り育てる


    そばの刈り取りは11月上旬ごろ。

    朝露の引いた11時頃から作業を始めますが、日の短い冬の奥越では夕方4時には暗くなり、作業時間が限られるため昼食を取る間もないそう。

     

    台風で茎が倒れた後の刈り取り作業は一苦労で、近年ではイノシシに畑を荒らされて周囲に電気柵を取り付けるなどの対策も必要です。

    そばは改良品種であれば、実も大きく開花時期も揃うため、安定した収量も見込めます。

    経営面からは選択肢のひとつですが、今は考えていないと森永さん。

     

    在来種は自分の好きな背丈、好きな時期に花をつけ実を結ぶので、刈り取った時に熟した実も若い実も混ぜこぜの状態です。

    これがそばの野性的なおいしさの源だと思うんですよ」。

     

    この風土に合ったこの土地でしか作れないおいしいもののひとつが、在来種のそば

    「これからも仲間と共に大切に作り続けたい」と話してくれました。

     

     

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