福井・ふーぽの川端さんからいただいたバトンは「最高の贅沢」。
和歌山ならではの贅沢とは?というお題でした。
個人的な最高の贅沢は、お天道さまが高いうちからアルコールを摂取すること(←小市民)なのですが、さすがにアレなんで、もうひとつのやつを。
それは温泉です。
「温泉って日本全国どこでもありますやん!」って?
そりゃそうですよね。でもこれから紹介する温泉は別格。
川端さんが憧れの地と挙げてくださった熊野古道沿いにひっそり佇む、世界遺産に登録された温泉です。
それが「湯の峰温泉 つぼ湯」。
和歌山、いや世界唯一の体験ができる贅沢な舞台です。

ご存知かもしれませんが、ここで解説を。
熊野古道とは紀伊半島にある熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へと至る参詣道の総称。2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録。古代から中世にかけ、貴族や武士、庶民にいたるまで多くの人々が、自然崇拝を起源とする熊野三山を信仰しました。
現在も「よみがえりの地」として、国内外から熊野詣に訪れる旅人たちの心を癒やしています。
そんな熊野三山のひとつ、熊野本宮大社(田辺市本宮町)の周辺には湯の峰温泉、川湯温泉、渡瀬温泉という3つの温泉が集まり、それぞれ異なるシチュエーションのお湯が楽しめます。
なかでも湯の峰温泉は、約1800年前に発見された日本最古の温泉といわれています。
参詣者は湯垢離場(ゆごりば:身を清める場所)でもあるこの温泉で身を清め、長旅の疲れを癒やしたそう。
そのシンボル的存在が「つぼ湯」。
「蘇りの湯」という伝説も残されている由緒正しき温泉です。


昔ながらの宿が建ち並び、のんびりとした旅情にあふれている
温泉らしい香りが漂う集落に建つ浴場は、谷あいから湧き出る天然の岩風呂を板で囲んだだけの簡素な設え。
これがまた温泉マニアのハートをくすぐります。
利用は1グループ(といっても、1、2人が適切)約30分の貸し切り制。
これ、かなり重要なポイントです。世界広しといえども、世界遺産をひとりじめできる経験って、できないのでは?
ここからは以前、真冬に入浴した当時を思い出しながら、実況中継風でお送りします。

外気や日差しの影響で多い日には湯の色が7回も変化する
浴場に入っていきなり、生来の挙動不審っぷりを発動!
シンプルにお湯を浴びて浸かるだけなのだけど、パニくってしまい、次に何をすればよいのか右往左往。
初めてのつぼ湯にテンションがMaxに(汗)
ちょっと落ち着こうと、ひと息して気がついた。
めっちゃ足元ごつごつしてるし、外から見えるんちゃうん?
密閉された空間には熱気が満ち溢れ、じっとしているとサウナのように額からじんわり汗が滴ってくる。
目を閉じていると、心が無になり、感覚が研ぎ澄まされるような。
もしやここが、あの「精神と時の部屋」なのか?
ここを出るとオラ、もっと速く原稿が書けるようになれるんじゃねぇか!(いつも締め切り日ギリギリの提出ですみませんっ)
源泉湧出のお湯はきっちり熱いけど、水で調整して浸かったり、出て休憩したりするうちに、いい感じにぽかぽか整ってきたぞ。
いにしえの旅人たちも、ゴツゴツした岩場を気にしながら、このお湯に浸かっていたのだろうか。
などと空想に耽りながら、制限時間ギリギリまでお湯と空間をしっかり堪能。
浴場を退出しシャバの冷気に頬が触ると、
へーーっくしょい!!
一気に現実に引き戻されたのだった。

…伝わったかどうかは定かではありませんが、1800年もの時空を超えた唯一無二の温泉体験であることは間違いなしです。
ここでプチ情報。
つぼ湯近くの川沿いには常に源泉が湧いている湯筒があり、周辺の土産物屋さんで卵や野菜を購入し、茹でて楽しむことができます。
周辺には湯の峰温泉公衆浴場もあるのでそちらもぜひ。

