【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第42話:今、ここにいること。

    【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第42話:今、ここにいること。

    こんにちは、ふーぽ編集部です。

    福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

    福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫4との暮らしを、のんびりと綴っています。

    第42回は、日々の暮らしのなかで、「今、ここ」を意識することの大切さを、小林さんがそっと伝えてくれます。

    禅の心にも通じるようなやさしいアドバイスに、ハッと気づかされることがありそうです。

     

      小林孝延
      こばやし・たかのぶ

      編集者・著者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫4と暮らす。釣り好き。近刊に猫沢エミとの共著「真夜中のパリから夜明けの東京へ」(集英社)がある。7月から松浦弥太郎とのYouTube番組「あなたに話したいことがある」が配信中 公式Instagram

      第42話:今、ここにいること。

      先日、フジテレビの「亀梨和也の丁寧男子~10人大家族の部屋大改造SP~」というバラエティ番組に出演した。

      Travis Japanの七五三掛龍也さんとタイムマシーン3号の山本浩司さんという料理やインテリアにも一家言ある二人と、大家族の住む家を「丁寧な暮らしの空間」に改造する、という内容だ。

      * * *

      二人はロケ中、少し離れたところにいるディレクターからの指示を視界の端で捉えて、自然なフリートークへと落とし込んでいく。

      その姿はあまりにもさりげない。

      一方、慣れない僕は「丁寧な暮らし」を説明するだけで精いっぱい。

      次に何を話すか頭の中ではいくつもの心配が渋滞していた。

      それでも二人は僕の話から面白いところをすっと拾い、ふくらませ、次へとつないでくれる。

      さすがだ。

      しかもカメラが止まった休憩中も、慣れない僕に気さくに声をかけてくれた。

      これぞ本当の「丁寧男子」だ。

      * * *

      さて、そんな番組で僕に与えられた役割は「丁寧男子のフロントランナー」。

      男子という年齢かどうかはひとまず置いておくとして、ある調査によれば、二十代を中心に、およそ六割が「丁寧な暮らし」に憧れているという。

      SNSで検索すれば、そんな美しい風景がいくらでも現れる。

      もちろん僕も嫌いではない。

      けれど、それは誰かに見てもらうために切り取られた一瞬であり、暮らしのすべてではない。

      * * *

      テレビのフリートークも同じだ。

      自然に見える会話の裏で、演者は流れを読み、気を配り、いくつものことを同時に考えている。

      見えているのは、整えられた部分だけなのだ。

      * * *

      では、カメラの回っていない僕の暮らしはどうだろう。

      朝、目を覚ますと、犬が散歩を待ち、猫たちがごはんを催促。

      水を替え、トイレを片づけ、洗濯機を回す。

      途中で仕事の連絡が入り、返事を書いているうちに、次の仕事の連絡が。

      家事に、仕事に、犬に、猫に追われる日々。

      あれ? これって丁寧な暮らし?

      * * *

      丁寧な暮らしとは、見た目を美しく整えることではない。

      例えば、食事のときには、味や香りをきちんと感じる。

      靴ひもを締めるときは指先に意識を集中させる。

      犬の散歩のときには、空の色や風のにおいを感じ、隣を歩く足音に注意を払う。

      そんなことではないだろうか。

      * * *

      僕たちは、「今」やっていることをろくに感じないまま、「次」にやることへ思いを馳せている。

      体はここにいるのに、心はいつも少し先を走っているのだ。

      大切なのは「今」目の前にある景色や流れている時間に意識を向けること。

      少し立ち止まって、深呼吸することだ。

      忙しい毎日をゆっくりにすることはできないかもしれない。

      それでも、今この瞬間を置き去りにしないことなら、誰にだってできる。

      * * *

      丁寧な暮らしとは、時間をたっぷり使うことではない。

      今、自分がしていることに、心をきちんと置いておくことなのだ。

      コーヒー豆を挽いて、火にかけて、味わう。味だけじゃなくにおいと音を逃さないように

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      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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