【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第17話:父の日と猫。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第17話:父の日と猫。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫4との暮らしを、のんびりと綴っています。

第17回は、亡き父を思う、やさしい後悔のお話。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者・著者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫4と暮らす。釣り好き。新著「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」(風鳴舎)が好評発売中。公式Instagram

第17話:父の日と猫。

例年、父の日は子供たちと一緒に食事をして、小さなプレゼントをもらうのが習慣になっている。

ただ、今年は子供たちも社会人となり忙しくなったので恒例の食事会はなし。

少し寂しいけれどこれもまた時の流れだ。

僕自身は父親にそんなに頻繁に感謝の品を渡したりしなかったから、

「ああ生きている間にもっとありがとうを伝えたらよかったな」

と、この日を迎えるたびに小さな後悔がよぎる。

* * *

父は福井生まれの福井育ち。

多才な人だった。

公務員を経て町議会議員を長く務めた。

ウエイトリフティングの国際審判やスキー連盟の理事を歴任。

楽器が得意でどんな曲も耳コピできてギターを弾きながらハーモニカを吹いた。

ゴルフもシングルの腕前。

ホールインワンを生涯で4度達成したことが自慢。

書道家としても活動し筆耕としての仕事は一度「fu」でも取材していただいた。

あのときはうれしそうだったなあ。

目を細めながら自分が掲載されたページをめくる姿がなつかしい。

* * *

そんなエネルギーに満ち溢れていた父が最愛の母に先立たれた後、まるで植物が萎れていくように元気がなくなった。

大好きだったゴルフをする気にもならず広い家でぽつんと1人暮らし。

一日中仏壇の前で経をあげていた。

よほど寂しかったのかあるとき

「猫を飼いたいんだけど、どやろな?」

と相談された。

* * *

その頃の僕はまだ動物たちと出会う前だった。

すぐさま

「そんなひとりで世話なんかできないよ」

と、にべもなく提案を却下した。

しばらくして父は他界した。

猫は長生きだ。

すでに80歳の父親が飼うことの難しさはあきらかで、僕の答えも表面だけを見ればなにも間違いではない。

しかし、もしもあのとき一緒に猫を見つけてあげて、暮らし始めていたら・・・。

動物たちからもらえるエネルギーの偉大さを知った今なら間違いなく違う答えをしていた。

後のことは僕が責任をもつから、猫と暮らしたらいいよと。

生きる張り合いが生まれて、もう一度、元気な父が戻ってきたかもしれない。

今年、5匹の猫を保護した。

おそらく皆が血縁ではないかと思わせる白い手袋に白靴下の白黒猫。

そのうち1匹は高齢のご夫婦に里親さんになってもらった。

口もとの白い鼻ちょうちんみたいな模様が昔飼っていた猫にそっくりだということで、インスタをフォローしてくれているお嬢さんが、自分が保証人になるからと連絡をくださったのだ。

昨今、年齢を重ねると、保護犬猫譲渡会でも対象外になることが多い。

でも本当は高齢になったときこそ人生の最後の時間を共にできるパートナーが必要だ。

譲渡した猫は「福子」と名付けられた。

福子も人間たちもどちらも幸せになってほしいな。

保護したばかりの福子。病院で検査するとこんな小さな体ですでに出産を経験していたことが判明

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※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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