発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第17回- ブリみそ(石川県能登編)

    発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第17回- ブリみそ(石川県能登編)

    ふーぽ読者のみなさん、こんにちは。
    発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

    福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中の《ほくりく発酵ツーリズム》を、ふーぽでもお届けしていきます。

    福井県をはじめ、石川・富山を含めた“北陸”の発酵文化を紹介します。

    発酵から北陸の歴史や気候風土を読み解いていきましょう!

      発酵デザイナー 小倉ヒラク

      1983年東京都生まれ、山梨県在住。文化人類学と発酵学を独自に融合させた「発酵文化人類学」を展開し、「発酵デザイナー」の肩書で微生物研究や食文化の普及に取り組む。2022年9月17日(土)~12月4日(日)まで金津創作の森美術館(福井県あわら市)にて「Fermentation Tourism Hokuriku ~発酵から辿る北陸、海の道」を開催中。9/30に「発酵ツーリズムほくりく」を発行。

      展覧会詳細は金津創作の森美術館HPまで
      展覧会公式サイトはこちら
      著書「発酵ツーリズムほくりく」についてはこちら

       

      石川県能登半島の奥の奥、珠洲で移住してきた愉快な若者たちのコミュニティに出会いました。

      そのメンバーのなかで、ひときわ能登の食文化に関心を持つ志保石薫(しぼいし ゆき)さんから、北陸のなかでも屈指のユニークさを持つ発酵文化を紹介してもらいました。

       

      ブリの内臓と大豆を合わせる

      見た目は白味噌


      能登出身の夫と一緒に東京から珠洲にやってきた志保石さん。

      奥能登の伝統食を近所のお父さんお母さんから習ってレシピを収集するなかに「ブリみそ」というインパクト大の料理を発見。

      そこで富山の市場でブリをまるごと一匹ゲットして、志保石さんと一緒に再現してみることにしました。

       

      ブリみそは、ブリの内臓を味噌のように大豆と合わせる驚愕のレシピ。作り方を順を追って説明しましょう。

      まず新鮮なブリのお腹を開いて腸や胃袋、心臓などを取り出します。

      内容物を取り出し、丁寧に洗ったら、塩水で茹でます。この時点で一口食べてみたのですが、普通に美味しいもつ煮のような味。

      ブリの内臓を取り出す


      次に塩茹でした内臓を、味噌を作る時のように煮て潰した大豆と混ぜ、さらに甘酒状に糖化させた麹を入れてよく混ぜます。

      麹を入れずに内臓と大豆を混ぜてそのままご飯のお供として食べることもありますが、麹と合わせて一週間から10日ほど発酵させて調味料のように使うことも。

       

      一週間ほど冷蔵庫でゆっくり発酵させたブリみそを食べてみました。

      魚の潮っぽいうま味と大豆のホクホク感、麹の甘味が不思議なバランスで着地した、今まであまり食べたことのない味わい。

       

      現地で聞いたなかで 「こりゃスゴい!」と思った食べ方は、ブリみそを溶いてお漬物を入れたスープに、海藻をサッと浸して食べる「海藻のしゃぶしゃぶ」

      奥能登のローカル食の真髄が結晶化したような唯一無二のレシピではありませんか。

       

      能登半島の漁師文化

      「ブリの内臓は『べと』と呼ばれて、地元の人の隠れたご馳走なんですね。ブリの揚がる時期になると、お父さんお母さんが近所の魚屋さんやスーパーに『べとないか?』ってこっそり聞くんです」と、手際よくブリをさばきながら嬉しそうに説明する志保石さん。

      その横では見学にやってきたお隣のおばあさんも志保石さんの赤ちゃんを抱っこしながら、「ブリみそ、私も作るよ。べと食べるなんて恥ずかしい、なんて言う人もいるけどね〜」とはにかみ笑顔で言います。

       

      奥能登はもともと貧しい土地で、漁師たちはブリを釣ったら身は売って、自分で食べるのは内臓、ということもしばしばだったそうです。塩茹でした新鮮なブリの胃や腸、心臓はコリコリして確かにローカルご馳走感満載。

      この内臓に大豆を合わせるのは手前味噌の方法論、そして甘酒状の麹を入れるのはかぶらずしや大根ずしの応用です。

      北陸の発酵食の文脈に、能登のローカリティが掛け合わされているのですね。

      文化には光と影があります。

      北陸の食文化で言うと、カニやエビなど新鮮な海の幸を使った料理が光

      そしてそういう高級な食材を、作ったあとに出た本来なら捨ててしまうようなものを工夫して作るものが影

       

      発酵文化には、県やメディアが地域をアピールする時の候補には挙がらないけれど、地域の暮らしの記憶がいっぱい詰まったブリみそのような素晴らしいレシピがたくさんあります。

      光と影のコントラストが、文化の奥行きを作ります。


      この連載をお読みの皆さまもどうぞ郷土文化の影になってきた側面までよく目を凝らして、過去と未来をつなぐ宝物を見つけてほしいなと思います。



      いかがでしたか。

      北陸の発酵文化を訪ねる《ほくりく発酵ツーリズム》

      次回もお楽しみに!

      【連載】ほくりく発酵ツーリズム
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