【ふくいデザイン探訪Vol.4・グリルあまから】おしゃれな見た目で環境にも優しい。「岡持ち」を現代風にアレンジしたテイクアウトパッケージの開発。

【ふくいデザイン探訪Vol.4・グリルあまから】おしゃれな見た目で環境にも優しい。「岡持ち」を現代風にアレンジしたテイクアウトパッケージの開発。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

デザインセンターふくい(公益財団法人ふくい産業支援センター デザイン振興部)が展開している「DESIGN CONNECT」事業。

 

今年11月25日からの約1カ月間、県内企業のデザイン活用事例等を紹介する「デザインコネクト展」を、福井ものづくりキャンパスで開催予定です!

 

展示会に先立ち、ふーぽ上では「ふくいデザイン探訪」と題して、デザインの観点を取り入れ、企業ブランディングや商品・サービスの開発を行った、県内企業の先進事例を、全10回にわたり紹介していきたいと思います。

 

今回は、デザインを活用した環境配慮型テイクアウトパッケージの開発や、社会への啓発活動に取り組むグリルあまから」をご紹介します。

 


デザインの活用によって成長が期待される製造業・農林水産業・飲食業・サービス業等、様々な企業やクリエーターに向け、デザイン導入事例や先進事例を紹介する「オンライン講座」や「デザイン展」を開催。

新しい時代を切り拓く、人の心を魅きつける商品やサービスはどのようなものか、どのように生み出されるのか、県内外で活躍するクリエーターや県内企業とともに考え、そこからはじまる新たなアクションを応援します。

【⇒過去のデザインコネクト関連記事はこちらから】

◆ 老若男女に愛される、昔ながらの洋食屋さん


グリルあまからは、昭和9年に福井市で創業した老舗洋食店。ハヤシライスやオムライス、ソースカツ丼など、子どもから大人まで楽しめる洋食メニューを提供しています。

 

飲食業のほか食品加工業も手掛け、平成15年に発売を開始した目玉焼き専用ドレッシング「たまらんDay」は、楽天市場の和風ドレッシング部門で1位になるなど、大きな反響を呼び、今も人気商品として親しまれています。


「このドレッシングの商品ラベルを作る際も、デザインセンターふくいさんに相談に行くなど、思えば、本当に長年お世話になっていますね」と話すのは、3代目の野坂昌之さん。

 

◆ テイクアウト需要を見越した容器の開発

グリルあまからでは、2019年の消費税増税を前に、軽減税率の対象となるテイクアウト用のパッケージ開発に取り組みました。

その際、野坂さんが注目したのが、かつて食堂の出前などで利用されていた「岡持ち」です。


「料理の入ったパックを3つ4つとビニール袋に重ねて入れると、袋の中で偏ってしまう問題がありました。

その点、岡持ちであればお皿を積み重ねて一度にたくさん持ち運べる上、食べ終わった後のお皿はお店に返すからゴミも出ない。非常にエコな文化だなと感じましたね。

この岡持ちのスタイルを現代にアレンジして、これからますます伸びるであろうテイクアウト市場で活用できるかっこいいパッケージを作ろうと考えたんです」。

 

 

出来上がったオリジナルの多段式パッケージは「OKAMOCHI」と名付けられ、特許を取得。特許には費用がかかりますが、きちんと抑えておくことで、自店で使うだけでなく、安心して他の飲食店にも販売できるビジネスとなり、好評を得ました。

 

その後、プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な問題としてクローズアップされるようになると、野坂さんはプラスチック容器を使用していたOKAMOCHIの改良へと乗り出しました。

 

◆ 脱プラスチック、自然素材で作るパッケージ

OKAMOCHIを作った際の技術と特許を生かし、パッケージ全てを紙でできないものかと考えました

頭の中にあるイメージを形にするためにはデザインの力が必要だと思い、デザインセンターふくいさんに相談に行きました。

そこで、開発のポイントを整理し、紹介していただいたのが、アイ・デザインスタジオの池田武史さんです。

福井にはグラフィックデザイナーがたくさんいらっしゃるのは知っていましたが、プロダクトデザインを専門にしている方もいるとは知りませんでした」。


多段式に容器を重ねられること、全て紙で作ること、可燃ごみとして捨てられること、持ち運ぶ途中で容器が抜け落ちないこと、なにより見た目がおしゃれでかっこいいこと
といった要望を伝え、試作を繰り返して仕上がったのが「OKAMOCHI カフェバッグ」です。

 


容器2つと紙コップ、カトラリー類が納まるようになっています。


「まさしく理想のかたちにしていただきました。試作していく中で、一つのプロダクトを仕上げるための細かいブラッシュアップには驚きましたね

持ち手部分の抜け止めや、紙で指が切れないように加工したりと突き詰めていく姿勢はとても勉強になりました」。

◆ 人をひきつけるデザインの大切さ

出来上がったカフェバッグを全国展開するにあたり、製造と販売は他社に委託することに。


「アイデア・開発とPR・販路開拓は得意なのですが、その他のところは、一人で抱えすぎずに、信頼できる企業にお任せしようと。

県外で開催されていたギフト・ショーにも足を運び、パートナーとなる紙梱包材メーカーさんや食品包装資材商社さんへ依頼しました」。


カフェバッグに入れる容器は、オリジナルのものだけでなく折兼が扱うさまざまな既製品を組み合わせられ、飲食店側がカスタムしやすい仕様になっています。


今年5月25日の販売開始以降、メディアでも大きく取り上げられ、全国の飲食店から問い合わせが殺到。新型コロナウイルスの影響でテイクアウトが広がったこともあり、販売数は右肩上がりに伸びています

日本財団が主導する「海と日本PROJECT」にも認められ、来年以降は多くの食のイベントでカフェバッグが使われる予定です。

 

野坂さんは、単に環境に配慮したパッケージというだけではここまで反響はなかったのではないかと話します。

「見た目が優れていたからこそ、みなさんに受け入れてもらえたのではないでしょうか。

使い手からすると、まずは見た目がかっこいい、おしゃれだと感じ、実際に使ってみて機能性も良いと分かり、そこから先に、エコなものなんだという気付きがある

まず必要なのは、人をひきつけるデザインのもつ力なんだと改めて気付きました」。

 

◆ デザインコンペの開催で、若い世代にも環境問題への関心を

丼文化を通し、福井県の魅力を全国へと発信している「福丼県プロジェクト」。

野坂さんは、2014年の発足当初から実行委員長を務め、県内飲食店の丼メニューを紹介するガイドブックの製作や、福丼県フェスを開催してきました。


「2019年から日本財団の協力のもと、オールプラスチックフリーのイベントに取り組んでいます

参加する全てのお店で、土に埋めると自然分解されるプラスチック・スマート対応の器と、紙でできた持ち帰り用品を使用し、プラゴミを出さないことに努めています。福丼県仕様のカフェバッグも開発しました」。

 

今年9月に開催された福丼県フェスでは、新たな取り組みとして、県内在住の学生を対象とした「NEXT DONBURI デザインコンテスト」が開かれました。

若い人たちが海洋ゴミの問題を知り、真剣に考えるきっかけとなるようにと、環境に優しいプラスチックフリーの素材で作る、新しい発想の丼の器を募集しました。ありがたいことに予想を上回る数の応募をいただき、関心の高さを感じましたね。

ユニークなアイデアがたくさん集まって、審査するのも大変でした。一次審査を通過した5作品は3Dプリンターで実際に形作り、福丼県フェスの会場でプレゼンテーションをしてもらいました。来年以降も続けていきたいと思っています」。

デザインのコンセプトや問題意識をプレゼンする学生

審査委員長と表彰のプレゼンターを務めた野坂さん(写真左端)。

◆ テイクアウト市場の新たな展開に向けて

消費税増税と新型コロナウイルスの影響で主流となりつつあるテイクアウト。

「これからは、テイクアウトしたものを車の中で食べる『車食』のブームがくるはず。

そこで思いついたのが、車内で食べやすい形として、車のカップホルダーに入るサイズの容器に料理を盛りつける『カップごはん』です」。

 


おにぎり以上お弁当未満」の量と価格をコンセプトに、丼もの、パスタ、そば、中華など、色々な展開ができると話す野坂さん。

現在はBBバガスという土に還るエコ素材を用いて、容器の開発に取り組んでいます。


「福丼県フェスもカップごはんで提供すれば、1品1品のボリュームが抑えられて、値段は安く、色んなお店の丼の食べ比べを楽しんでもらえるようになります。

いずれは、トレーラーハウスでカップごはんの専門店を出すのが目標です。これからもさまざまな挑戦をし、ここ福井から新たな食文化を作っていきたいです」。

 

グリルあまから

福井市西谷3-1303
☎0776-35-3109

公式ウェブサイトはこちら

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

ふーぽ編集部
writer : ふーぽ編集部

ふくいのことならお任せあれ! グルメ、イベント、おでかけスポットなどなどふくいのいろんな情報をお届けします。

おすすめ情報が届くよ

ふーぽ公式LINEはこちら

Follow us

ふーぽ公式Instagramはこちら

こちらもクリック!情報いろいろ

新着の記事

あわせて読みたい

キーワード検索

おもしろコンテンツを発掘しよう!
過去の読みものをシャッフル表示

人気記事ランキング

人気記事ランキング

ページ上部へ
閉じる

サイト内検索

話題のキーワード

メニュー閉じる