実は福井のソウルフード!? 福井のあべかわ好きが語る「あべかわトーク」。

実は福井のソウルフード!? 福井のあべかわ好きが語る「あべかわトーク」。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

皆さんは「あべかわ餅」はお好きですか?

実は、福井のあべかわ餅には色々な歴史があるようです。

今回はFacebookグループ「福井あべかわ餅。。」に所属するあべかわ通のお二人と、食べ比べながらのあべかわトークを繰り広げます。

 

Facebookグループ「福井あべかわ。。」とは
2017年に久米田さんが設立し、約1,100人が参加するFacebookグループ。県内外のあべかわ餅好きが集い、楽しいあべかわ餅ライフを送るため、あべかわ餅だけでなくお餅全般の情報を交換、シェアしています。
Facebookグループはこちら

\教えてくれた人/

久米田 賢治さん
福井市の「Curryspotびーどろ」店主。
県内外でフィールドワークを行うほどの甘味マニア

末定 慶子さん
福井市在住。実家で小さい頃からよくお餅を食べていたこともあり、あべかわ餅が大好き

 

かつてあべかわ餅は高級品だった!?

今回のために用意してもらったひげ餅舗の餅を久米田さん特製の黒蜜ときな粉で仕上げる


 編集部 
あべかわ餅の発祥は静岡と言われていますが、福井にはいつ、どのように伝わってきたんですか?

 久米田さん :明確には分からないんです。でも、それを推測するのも面白いんですよ。

徳川家康に献上して、それを気に入った家康が命名したって話ですが、そもそもなぜ献上されたかというと、当時は砂糖がとても高級品で、それを使ったお餅も同様だったから。

その後、名物になり「五文どり」とも言われていたようです。


 末定さん 
:時代によって一文の価値は異なりますが、五百円から千円以上のときもあったとか。


 編集部 
:お餅一つでそんなに! 衝撃です。


 久米田さん 
:お餅自体が神様にお供えする尊いものだった上に、きな粉に混ぜる砂糖も、当時は海外から金と交換で輸入していたのですごく貴重。

薬として使われていたとも。

そのため、旅人が話のタネに食べていたこともあったようですね。

 

 編集部 福井にはどのように伝わってきたんでしょう。

 久米田さん :旅人や参勤交代を通じて伝わってきたと考えられています。

福井では16代藩主・松平春嶽が食べたという話もありますね。

春嶽の日記の中に「参勤交代の途中で食べて、これを奥方にも食べさせてやりたい」と記されています。

 末定さん :でもそんな高価な食べ物、一般の人はなかなか食べられなかったんじゃないですか?

 久米田さん :あべかわ餅が庶民にまで広がったのはもっと後の話で、1950(昭和25)年に初めて静岡駅でお土産として売られたのがきっかけだそう。

その頃には砂糖の価格も落ち着いていたので、あべかわ餅に限らず多くの甘味が日本中に広がっていったようです。


 末定さん 
:江戸から昭和まで何年も経て、私たちの手元に来たのですね。


 久米田さん 
福井のあべかわ餅といえば蝋金(ろうきん)さんが有名ですが、1907(明治40)年の福井市の観光案内に記録が残っています。

そこには「古より続く老舗蝋金があべかわ餅で有名」と記載されているんです。

蝋金の先代のおばあちゃんが言うには、ご先祖が旅の途中であべかわ餅を見聞きして、それを持ち帰り、黒蜜を使って作り始めたのが始まりだそう。

蝋金(ろうきん)
福井県福井市左内町9-27

食べやすい一口サイズの餅に、黒蜜ときな粉のバランスが良く、県内に根強いファンも多い。
注文すると目の前で仕上げてくれるのも嬉しい。

 編集部 :それが土用餅として食べられるようになったんですね。

 久米田さん :いえ、実は土用餅=あべかわ餅ではないんです。

元々は魔除けとしてガガイモという植物の葉を煮出した汁で餅や団子を炊いて食べるという宮中行事があって、それを京都の和菓子屋さんがあんころ餅を食べる風習として広めたんだとか。

さらにそれを福井の餅屋さんがアレンジして広めたことで現在の風習になっています。

だから、福井県内でも地域によっては塩餅や塩えんどう餅を食べるところもあるみたい。

ただ、県内すべての地域で行われているわけではないようです。


 編集部 
餅屋さんの戦略だったんですね。バレンタインみたい!


 久米田さん
 
:京都のあんころ餅を食べる風習から福井のあべかわ餅へと変化したのは、あんこは夏傷みやすく保存が難しかったから。

保存しやすい黒蜜を使い、さらに竹皮で包んだときに黒蜜が外へ流れないようきな粉をまぶすようになり、現在のスタイルになったとか。

黒砂糖100%の蜜は気温が下がると再結晶するため、夏場にしか食べられないお餅だったようです。

 

 

食べ比べで自分の”基準“を見つけて。

それぞれのあべかわ餅にそれぞれの魅力がある。食べ比べて自分の好みを見つけたい


 編集部
:今回は「大吉餅」「ひげ餅舗」と、スーパーでゲットしたお餅屋さんのあべかわ餅を食べ比べてみましょう。

 

 

 末定さん :福井はスーパーなどで手軽にあべかわ餅を買えるのもいいですよね。親しみやすいです。

 編集部 :そういえば、通年で買えるあべかわ餅の黒蜜は再結晶しないんでしょうか。


 久米田さん
:通年で販売するため、黒蜜は再結晶しないように、またお餅の柔らかさを保つための工夫がされているんですよ。

その企業努力のおかげで、食べたいときにお餅が買えるんですよね。

 末定さん :大吉餅さんは柔らかいお餅にたっぷりの黒蜜があっさりとして合う!


 久米田さん
福井市の餅屋は“二度づき”が一般的なんです。

餅米を蒸して一回ついた後、真水に放して粗熱を取り、もう一度蒸してコシがなくなるまでつきます。

こうすることで時間が経っても柔らかさを保てるんですよ。

二度目のつきの時に水分量を工夫して、柔らかさを調節する。

大吉餅さんは水分が多めなので特に柔らかいですね。

「大吉餅」の黒蜜ときな粉が別添えのあべかわ餅はギフトにもオススメ

注文時に店頭で仕上げるタイプは蜜だくで、できたてを味わえる

 

 末定さん :ひげ餅舗さんのお餅はしっかり米の味がして、噛み応えもあります。

こういうどっしりとしたお餅だからこそ、黒砂糖100%の蜜が活きてくる。


 編集部 
:餅の形も三角や丸のものがありますよね。


 久米田さん
:三角のものは氷を表しているんじゃないかと想像しています。

氷を模した三角にして暑気を払う。昔の人は粋ですよね。

 編集部  :昔からの文化が今も残っていると思うとロマンを感じます。

久米田さん特製の黒蜜はひげ餅舗と同じ波照間島の黒糖で黒蜜を作るこだわりぶり。程よい甘さとコク深さが特長

 

 久米田さん :最近はユニークなあべかわ餅も人気ですよね。

甘福(かんぷく)さんの「あべかわ餅」はきな粉が多めで、お餅も草餅。

泰鳳堂(たいほうどう)さんの「草あべかわ」も。

個人的に草餅は本来の福井のあべかわ餅とは言えないと思っていますが、こうやって発展して変わっていくのも興味深いですね。

新しい試み、新しい味わいで変わっていくものや伝統をかたくなに守るもの、この両者があって文化は続いていくのではないでしょうか。

甘福(かんぷく)
福井県福井市二の宮5-11-20

包みいっぱいのきな粉の中に棒状の草餅が並ぶ変わり種。
黒蜜は少なめで、きな粉の風味をダイレクトに味わえる。


泰鳳堂(たいほうどう)
福井県福井市上北野2-25-10
Facebook

「草あべかわ」はきな粉と黒蜜が別添えで、自分で仕上げるタイプ。それぞれの量を調節して、自分好みの味を見つけるのにピッタリ。最近は他店でもこのタイプが増えている。

 末定さん :色々なあべかわ餅を食べてみると、自分の中の美味しいの“基準”が分かってきますよね。

お餅の食感、きな粉が多い方が好きだとか、黒蜜たっぷりが好きとか。

他のあべかわ餅を食べた時に違いもよりはっきり分かるので、さらに食べ比べが楽しくなります。

 編集部 :確かにそうかもしれませんね。

私は餅の田中屋さんの「あべかわ餅」がずっと好きなので、今度それも食べ比べてみたいです。

餅の田中屋
福井県福井市勝見3-17-6
ホームページ

ふんわりと柔らかく、ほんのり甘い丸餅に黒砂糖の風味がしっかり感じられる黒蜜と香ばしいきな粉が相性抜群。

 末定さん :子どもの頃はいつも身近にお餅屋さんがあって、おじいちゃんがいつもあべかわ餅を買ってきてくれました。

今後もスーパーやお餅屋さんで気軽に食べられる、そんな文化が残ってほしいですね。

そして多くの人に福井のお餅文化を楽しんでほしいです。


いかがでしたか。

「あべかわ餅」の歴史は70年以上続きながら、今も私たちの生活の中にあるんですね。

これからもきっと、私たちには欠かせないソールフードになっていくことでしょう。

 

 

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※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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