多くの知識へのアクセスが容易になった今、若新さんは新たな格差を問題視していると語ります。
「他人と上手に討論できたり、意見の調整や交渉などのコミュニケーションをできる人とそうでない人との間にできる格差が、これから大きな問題になってくると考えています」
「これまで色んな人と仕事をしてきて感じたのは、討論上手な人とそうじゃない人で、得られるチャンスに差が広がってしまうということ」
「お客さんに商品を売ったり、接客をしたり、企画を提案したりとか、誰かにお願いしてチームを組んだりすることもそう。自分の考えを即興的にまとめたり伝えたりできることも、多くの仕事で求められている。そういった場面で、上手くコミュニケーションできる人とできない人で差がすごく大きくなってる」
さらに若新さんは、その格差が広がってしまう要因にも目を向けていました。
「まだほとんどの学校では、討論する時間とか議論を深める時間が十分ではなくて、どちらかというと、どんな人でも決められた知識を同じだけ得ましょうっていう、インプットが中心になっている。だから、コミュニケーションの上手い下手は個人の得意不得意に左右されたまま放置されがち」
「さらにいえば、一度討論やコミュニケーションが苦手だと評価されてしまうと、他人とのコミュニケーションがそんなに必要じゃない仕事を任されて、ますますコミュニケーションの機会が減っていったり。一部の職人的な仕事は別だけど、機械化され成長の余地が少ない場所に追いやられかねない」
「逆に得意な人は、どんどん討論とかコミュニケーションが重要な場面に出されて、人とのやりとりや接点も多くなり、チャンスも多くなっていく。より格差が広がり、深刻になっていきやすいと思うんです」
その解決に向け、若新流の提案を打ち出します。
「ツイッターとかネットで行われている議論みたいなものって、僕からみたら非常に残念な感じのものなんですよ。なぜかというと、コミュニケーション能力を伸ばす上で、相手の表情を読み取ったり、こういうこと言うと怒らせてしまうのだなといった、人間の生々しいやりとりなんだということを実感していく必要があると考えるからです。ネットでは、それが非常に弱い」
「なので、小さい頃から討論やコミュニケーションのリアルな場に恵まれている子どもと、そうじゃない子どもで差が大きくなる。ネットでいくらやっても埋められない。その差をなくすためにも図書館ってこれまでは静かにしなきゃいけない場所だったけど、おしゃべりする場所になったらいいと思うんです」
「でもそれは、いつもの友達とただ無駄話をする場所じゃダメ。友達がいない子は行けなくなるから。そうじゃなくて、あるニュースとか本のテーマについてしゃべりたいなっていう人が集まって、議論とかができる時間やコーナーがある。そんな場所が必要になっていくんじゃないですかね」