召しませ、夏きもの。福井で自分らしく着物を装おう二人に聞いた、着物生活の楽しみ方。

召しませ、夏きもの。福井で自分らしく着物を装おう二人に聞いた、着物生活の楽しみ方。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

夏は浴衣をはじめ、絽(ろ)や紗(しゃ)などこの時期だけの生地や素材を楽しめるとあって、「実は夏こそ着物の醍醐味を味わえる季節」といわれています。

小物使いを工夫して、夏ならではの遊び心のある着こなしをするのも素敵ですよね。

今回は、夏の盛りでも涼しげに着物を着こなすお二人に、着物生活の楽しみ方や“自分らしい”装いをうかがいました。

地域コーディネーター 宇野朱美さん

曽祖母の着物を受け継ぎ、自分らしくまとう。

\お話を聞いた人/

宇野 朱美さん
福井市出身。
元南越前町地域おこし協力隊で現在は地域コーディネーター。
南越前町の住居を、地域の暮らしを体感してもらう場所として住み開き中。
Facebook

異国情緒が漂う柄に合わせるのは空の青さを感じる帯。さわやかなカンカン帽が日差しの強い夏日に映える

 

インドの職人が手仕事で染めたオリジナル柄の生地で仕立てた着物で現れた宇野朱美さん。

合わせた帯も透かしが入った鮮やかな青色で、夏らしい装いが一層引き立ちます。

「透け感のある生地が夏らしくて気に入っています。仕立てたのは4年前。当時は南越前町の地域おこし協力隊を始めた頃で、着物を着て全国各地のイベントを回りたいなと思っていました」。

しかし、協力隊のイベントは予想外に動き回るため、しばらく着物が活躍する機会がなかったそうです。

任期が終わり、着物を本格的に着るようになったのはここ1年ほどのこと。

実家で長襦袢を探していたところ、祖母や曽祖母の着物が出てきたといいます。

 

「曽祖母は明治の人なので、着物で出かけるのが当たり前だったようです。訪問着のような特別な時に着るものではなく、普段使いできる紬(つむぎ)の着物がたくさん出てきて、せっかくならこの着物を着てみたいと思うようになりました」。

 

着付けは10年以上前に習ったきりで忘れてしまっていたそうですが、ネット上の動画で復習するうちに着られるように。

帯もお太鼓結びは難しいですが、初心者でも簡単に扱える半幅帯でいろんな結び方に挑戦するようになりました。

半幅帯の「貝の口結び」を応用した「吉弥(きちや)結び」。ボリュームを抑えた結び方は外出する時も形が崩れにくく便利

 

以来、ちょっとしたお出かけにも着物を着るように。

普段から使っている小物を取り入れ、スカートと着物を合わせたり、帯締めの代わりにバックルタイプのベルトで留めたりと、洋服のように自由なコーディネートを楽しむのが宇野さんのスタイルです。

最近は和洋折衷で着物を楽しむ若い世代も多く、SNSでチェックして着こなしの参考にしているといいます。

「着物の楽しさは、あれこれと想像しながら組み合わせを考えることにあるような気がします。母と着物を見ながら、これならカジュアルに着られそう、こんな小物と組み合わせられるかも、とおしゃべりするのも楽しいひととき。母ももともと着物を着る人でしたが、私が着るようになって着物熱が再燃したようです。親子で楽しめるのも嬉しいですね」

 

着物を着るようになって、声をかけられるようになったとも話します。

さらに親戚から着物をもらう機会も増え、“受け継ぐ楽しみ”も感じているそう。

 

そんな宇野さんが目指す着こなしとは、「ハレの日に着るのもいいけど、日常的に楽しめたらいいなと思います。実際、居酒屋にも着物で行って気軽に飲んだり食べたりしていますし、日帰り旅は一人で着物で出かけちゃいます。ちゃんと着なきゃと思うとハードルが高くなりますが、まずは普段身につけているものを活用しながら、洋服感覚で楽しむと着物がグッと身近になると思いますよ」

 

この夏は浴衣に加え、「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」などお気に入りの夏物も見つけたいとのこと。

着物熱はどこまでも高まるばかりです。

 

 

私の着物スタイル

帯や小物で遊び心をプラス。

同じ着物でも小物使いで印象が変わります。合わせ方でカジュアルにもシックにも変化します。

洋服のような軽やかさも感じるコーディネート

着物の色と合わせた半襟。ちょっとした部分に遊び心を取り入れる

 

涼しく見せる着こなし術。

夏の着物は暑さが大敵。

日傘やアクセサリーに明るい色を持ってくることで、涼しげな雰囲気になります。

夏の装いに涼感を与える揺れるタイプのピアスは10年以上愛用している

 

サンダルで歩きやすさも叶える。

夏はサンダルを合わせることが多いのだとか。歩きやすいので、着物で出かけやすくなったそう。

サンダルは着物と同系色で揃えると違和感のないコーディネートに

 

 

私のお気に入り

帽子が着こなしのアクセントに。

宇野さんのトレードマークは帽子。

夏は麦わら帽、冬はウールのハットなど、着物にプラスすることでマニッシュな印象になります。

 

普段使いできる半幅帯。

半幅帯ならカジュアルな場面でも大活躍。

「母は着物のリメイクが得意で曽祖母の帯をほどいて半幅帯にしてくれました」

 

和洋どちらにも使えるバッグ。

祖母が使っていたのを見つけ一目惚れしたというバッグ。

洋服にも着物にも合うため普段から重宝しているそう。

 

着物を受け継ぐ楽しみ。

宇野さんが着物を着るきっかけになった曽祖母の着物。

「流行に左右されないのも着物の良いところですね」

 

 

和装スタイリスト・着物コーディネーター 中野裕子さん

新たな着物のスタンダードを見せていく。

\お話を聞いた人/

中野 裕子さん
敦賀市在住。
着付講師、着付師。
着物ショーやイベントをはじめオリジナルブランドを複数プロデュースする。
「(一社)MATOU」代表理事として和装文化の普及活動にも取り組む。
ホームページ

紋紗に紗を重ねて袷(おわせ)仕立てにした「紗袷(しゃあわせ)」に、ブルーのグラデーション帯がエレガントな中野裕子さん。

6月下旬のこの日は“大人の女性が着物を楽しむ”ために不定期で開く「着物を楽しむ会」で、気のおけない仲間とフレンチを楽しみました。

 

紗袷は本来、春から夏に移る短い期間だけの贅沢品ですが、中野さんは“着物は体感で着る時代”だと言います。

「季節の分かれ目があいまいな今、着物と季節の関係性も変わっています。着物へのハードルを下げる良い機会だと思うんです」

 

中野さんが「これ以上のものに出合っていない」と語る一枚も、一般的には夏物とされる生地。

麻で織られた「小千谷縮(おぢやちぢみ)」はしわの加工で体に張り付かず風が通るのが特長です。

一枚なら浴衣、長襦袢(ながじゅばん)を合わせれば着物として着られ、「春から重ね着すれば秋まで。自分で洗濯できてアイロン不要なので、出張や旅行にも重宝しています」と話します。

 

自分に似合うものを必要なだけ調える、というのが中野さんの流儀。

そうすることで、ものを必要以上に増やさず、たんすのこやしもなくせるのだとか。

「昔から『着物一枚、帯三本』という言葉があります。着物一枚に帯が三本あれば、三枚着物を持っているのと同じくらい着こなしの幅があるということ。自分に合った素材を一枚持っていれば、着こなし次第で一年を通して着物を楽しめます」

 

主宰する着付け教室もユニークで、その人が求める和装スタイルを引き出すことを第一としています。

「まず何をどう着たいかを一緒に考えます。自分が着たいスタイルが分かれば、そこに集中し、3カ月で着られるようになります」

最初は趣味が高じて始めた着付け教室から、本格的に学びたいと京都に通って古典的な着付けを修得し、講師の経験を積んできました。

日本とインドネシアの国際交流イベントでバリの染め織り文化に出合い、「お互いの民族衣装を通じて心の交流ができたら」と、オリジナルブランドを創設。

日本と世界の伝統技術をつなぐ「朔(さく)」や、民族衣装文化が融合した製品を作る「bulan purnama(ブランプルナマ)」など多岐にわたります。

同時にバリやジャカルタに着付け教室を開きました。 

 

この7月からは沖縄でのプロジェクトもスタートするそう。

「日本や中国文化にもまれて本来の姿が変化した『琉装(りゅうそう)』を見直し、和装と琉装を合わせた現代の“沖縄スタイル”を作りたいと思っています」。

和装文化や日本文化を次世代に送り届けるべく、文化交流を通して、さまざまな形で着物の魅力を伝えていきます。

 

私の着物スタイル

自由で型破りな着物スタイル。

古典を修得した中野さんだからこそ提案できる、自由なスタイル。

男性用の帯を女性用にアレンジしたり、ブックマークを帯飾りにしたりするなどアイデア次第で着こなしは無限大。

沖縄伝統の「首里織」の帯。

上は女性用、下は男性用だが、「男性ものの帯を女性が巻いてもOK。お端折りもいらなくてラクです」と中野さん。

 

バリ島の銀線細工やアタ細工を施したガムランボールやブックマーク、ドリームキャッチャーをカスタマイズして帯飾りやかんざしに。

 

着物一枚、帯三本コーデ。

「ランチ」「ビアガーデン」「ショッピング」のテーマに合わせ、お気に入りの小千谷縮と三本の帯、小物で実践コーディネートしてもらいました。

ポシェットやストールなど洋装アイテムも取り入れた装いです。

バリの「ろうけつ染め」の帯で出かけるのは「ショッピング」

ラフィアの帽子とポシェットで軽やかに。

足元は手持ちのサンダルで歩きやすさを重視。

「ビアガーデン」には、インドネシア製の草木で絞染した帯で。

帯揚げのストール、バショウのバッグで南国感をまとう。

背中にバショウをさして。

テーマは「ランチ」

福島の「からむし織」の帯と麻の帯揚げが涼感たっぷり。

くるみのツルで編んだかごバッグは東北の工芸品。

 

 

ある日のお着物

ドレスコードは“着物”のみ。

“着物で楽しく食事する”がモットーの「着物を楽しむ会」。

「小千谷縮」や「大島紬」、新素材「セオアルファ」など着たいものを着るのがルール。

お太鼓にしのばせて。

沖縄・首里の刀をデザイン化したシックなクラッチバッグ。

「お太鼓のなかに入れると両手があいて身軽です」

裏地に凝るのが巧者の粋。

紋紗と紗の薄い二枚の生地で仕立てる「紗袷」の着物。

透け感と光を透過して浮かび上がる紋柄が美しい。

涼やかな南国の音色。

バリ島の伝統音楽ガムランの音色をモチーフにした「ガムランボール」のかんざし。

伝統工芸の銀線細工が繊細に施され、動くと澄んだ優しい音色がきます。


いかがでしたか?

それぞれ、自分らしさをいかした素敵な着物生活でしたね。

ぜひ、自分らしい着物のある生活を見つけてみてくださいね。

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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writer : ふーぽ編集部

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