【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第20話:ゴローの命日案内。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第20話:ゴローの命日案内。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫4との暮らしを、のんびりと綴っています。

第20回は、生前に父親がかわいがっていた愛犬の命日案内をきっかけに、愛犬・福との軌跡に思いを巡らせます。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者・著者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫4と暮らす。釣り好き。新著「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」(風鳴舎)が好評発売中。公式Instagram

第20話:ゴローの命日案内。

ひさしぶりに帰った福井の実家のポストに、父が生前かわいがっていた愛犬ゴローの命日案内が届いていた。

差出人はペット霊園。

父が病気になる直前までゴローは家にいたように思っていたが、ハガキに記された命日からもう20年も経っていて驚いた。

* * *

子供の頃からいつも実家には犬がいた記憶がある。

今では考えられないことだが庭に鎖で繋がれていた。

そのせいもあってあまり犬と一緒に楽しく暮らしていたという記憶もないし、家族の一員のように感じたこともなかった。

それどころか、僕が大切に育てていたカブトムシをムシャムシャたべてしまったり、触ろうとすると露骨に攻撃性を見せたりするので、小さな僕にとっては少し疎ましい存在ですらあった。

かわいがる父を横目で見ながら母はいつも「犬は嫌だ、好きではない」とつぶやいていた。

* * *

父も母も犬を外に繋いでいるからといって虐待しているという意識は全然なかっただろうし、あの時代どこの家もそれが普通だった。

人間のご飯の残りものを食べて、雨でも雪でも庭にいた。

そのうち僕も中学生になり自分のことで忙しくなるといつしか犬の存在すら忘れていたように思う。

* * *

雨に打たれても、積もる雪の中で佇んでいても、犬たちはまっすぐに飼い主を見て忠誠を尽くす。

窓ガラスの向こう側であたたかいご飯をつつく家族の姿を眺めながら、恨むこともせず、ただじっと待つ。

愚直なまでに信じている。

犬が飼い主に向けて注ぐ真っ直ぐで深い深い愛情に気づいたのは恥ずかしながら福を保護して共に暮らすようになってからだ。

野犬という、人間を知らない出自の福と、一歩、一歩、心の距離を縮めていく過程でたくさんのことを知った。

そしてしっかりと信頼というリードで結ばれたことを実感したとき、自分の中で犬という存在がこれまで知っていた「犬」とは違うものになった。

上手く言えないのだが、これまでに感じたことのない泣けてくるような愛おしさとでも言おうか。

妻や子供に感じる愛とも違う。

自分の中にこんな感情があったのかと驚いた。

* * *

先日、僕の活動をスポンサードしてくれているドッグカメラを紹介する動画をインスタグラムにアップしたら大きな反響を呼んだ。

動画は留守中の犬と猫が仕事にでかけた僕をただ玄関でじっと待ち続けているものだった。

自分で作った動画なのにそれを見ると目頭が熱くなる。

このまま僕が家に帰ってこなくても、ひもじくて動けなくなっても、きっとこの子たちは恨むこともなくただ待つのだろうな。

* * *

と、この原稿を書いていたらものすごく福が愛おしくなってしまった。

ソファに眠る福をぐいっと引き寄せて頬ずりすると、迷惑そうな顔をして奥の部屋に逃げていった。

愛情はときに迷惑でもあるようだ・・

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writer : ふーぽ編集部

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