~徳川の城 福井城 その3~発掘調査の成果から福井城を読み解き魅力を発見しよう! ~【だいなの越前・若狭! 福井の城見聞録 第三巻】

~徳川の城 福井城 その3~発掘調査の成果から福井城を読み解き魅力を発見しよう! ~【だいなの越前・若狭! 福井の城見聞録 第三巻】

こんにちは! ご無沙汰しております。

考古学専攻の大学生、酒井大那です。

春の季節ももう終わり、あったかい。。。暑い日が続くようになりましたね。

 

こちらの写真は今年2021年の桜と福井城址です。

福井城址にも高石垣の上に何本も桜が植えられています。

広大な水堀と高い石垣に桜、いいですよね~! 美しいですよね~。映えますよね~。

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ここでちょっと、桜と城壁にまつわるお話を。

この桜、江戸時代には勿論ありませんでした。

当時は高い石垣上の重要な隅の部分には櫓が配置され、土塀で本丸を囲むような形になっていたんです。

今の様に桜が植えられていると、綺麗な反面、石垣内部では桜の根っこ(水分もそうですが)の成長によって、石垣には「はらみ」(お腹が丸く出っ張ったような)という現象がおきてしまい、石垣の崩壊に繋がる恐れがあるんです。

最近ですと、日本一の桜の名所と謳われる、青森県弘前市に所在する弘前城跡に「はらみ」が見られ、現存天守に曳屋を行い、石垣の修復をしていました~。

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さて本題に戻りまして。

前回の記事では福井城の構造と明治以降の福井城が歩んだ城跡としての歴史から福井城の魅力をご紹介しました! 

【第二巻】福井にある城「福井城」について徹底解説!徳川ゆかりのお城を巡ります

今は見ることのできない福井城の城郭を垣間見えると思います。

また、城跡の歴史の重要性を知っていただけたかと思います。

まだご覧になっていない方はぜひご覧ください。

 

今回は考古学(発掘調査)の成果から福井城を読み解き、魅力を発見します! 

考古学の成果から福井城址を読み解くとは? 

考古学の成果から福井城を読み解きます。

考古学の成果ってなんだろう。

考古学というのは発掘によって出土した遺跡や遺物などを調査し、ものから過去の人類や社会について研究する学問であります。

ちなみに、福井県は恐竜王国として有名ですが、恐竜発掘は考古学ではありません。。。


化石を調査・研究するのは「古生物学」。

また違った学問なのです。

現地説明会(福井市埋蔵文化財センター所管)。発掘調査の成果を公開することにより、埋蔵文化財の活用としています。

 

「考古学の成果から福井城を読み解く」とは、発掘調査によって出土したモノから福井城を読み解こう、ということです。

 

▲福井分間之図 文化8(1811)(松平文庫蔵 福井県立図書館保管https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/da/detail?data_id=011-1001990-0

 

今回は、福井市中央公園・山里口御門跡で行われた発掘調査を紹介します。

 

 

福井市中央公園での発掘調査から分かる、西二ノ丸と西三ノ丸! 

でははじめに、2014年に行われました中央公園での発掘調査を見ていきましょう。


この調査は、平成25年に策定された県都デザイン戦略の一つである福井城址公園の整備のためのもの。

また同時に、不明確であった西二ノ丸と西三ノ丸の堀と石垣、御座所建物の確認を目的としていました。

 

西二ノ丸と西三ノ丸を絵図資料で確認

まずは絵図史料から当時の様子を確認します。

福井城の二ノ丸には藩主の邸宅である御座所や藩の施設、三の丸には藩の施設と武家屋敷があったことが分かります。

▲福井分間之図 文化8年(1811) 西二ノ丸・西三ノ丸 拡大図(松平文庫蔵 福井県立図書館保管【https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/da/detail?data_id=011-1001990-0】)

▲想定図 (福井市埋蔵文化財センター作成)

西二ノ丸は南北に長く、細長い形をしていて、北と南に門を配置しています。

こちらには馬出(うまだし)という防御機能が見受けられますね~。

古絵図を見ていると身近ではあったが知らなかったことをできたりして楽しいですよ! 

※馬出(うまだし)は、城の出入り口である虎口(こぐち)を守る小さな曲輪を意味し、城兵の出入りを安全に行う施設のこと

 

 

発掘調査で石垣が発見された!

調査の結果、近代の造作によって遺構の残存状況は悪いものの人頭大からひと抱えもあるような、石で積まれた石垣が出土しました。

また、笏谷石の底板と笏谷石製の瓦を積み上げて造られた排水路も出土したのです! 

調査写真(福井市埋蔵文化財センター 所管)


おっと、出土した石垣は全て笏谷石です。

福井市足羽山で産出される越前の石文化。

ロマンを感じますね。

 

 

石垣と堀に注目

石垣の下部では土台となる「根石」が確認され、そこには「胴木(どうぎ)」も発見されました。

この根石は、高い石垣を取り入れられる織豊期から近世期に築城された城で確認されるもの。

平野部や水分を多く含む地盤は弱いため、根石を用いて支えます。

しかしそれでも不安定の恐れがあるため、根石の下に胴木を敷いて石のずれを防ぐのです。

 

あれれ、水に浸っていたら木材は弱くなってしまうのではと思った方! 

いいえ、平城京跡で出土した綺麗な木簡のように、木材は常に水の中に浸かった環境では腐ることはないのです。

石垣と胴木

根石

堀はどうでしょうか。

西二ノ丸と西三ノ丸の石垣のうち相対する部分で計測をしたところ、堀幅は約26mあり、堀底では堀中央に向かって徐々に低くなることが分かり、両石垣際の堀底の高さに比高差がないことから箱型のような堀と推定されました。

▲中央公園出土石垣と本丸石垣(福井市埋蔵文化財センター 所管)

 

おやおや、福井城跡には数百点の刻印がありますが、ここにもありましたね~。

刻印(福井市埋蔵文化財センター 所管)

 

 

山里口御門での発掘調査! 

次に、山里口御門跡(やまざとぐちごもん)の調査を見ていきましょう。

2013年に門内の通路部分を、2015年から2016年にかけて門周辺の石垣の発掘調査が行われました。

山里口御門とは?

福井県交通まちづくり課提供

「県民に親しまれる福井城址に」をキャッチコピーに平成20年に復元されたお廊下橋を渡り、本丸への出入りのための門があったところが山里口御門跡です

現在は、山里口御門が復元されています。

もしかすると、復元され見ることのできる櫓や門が江戸時代の福井城の姿なのかもしれません。

 

発掘調査で寛文9年の大火の痕跡を発見!

発掘調査の結果、石垣の表面には門の柱や梁といった門を構成する部材をはめ込んだ痕跡が確認され、復元の際の櫓門の規模や高さを示す大まかな根拠となったのです。

 

江戸時代の地表面を見てみると、当時の排水溝が石垣の裾部に沿うような形で残存し、門の柱を支えるための礎石が数点確認されました。

この礎石の位置関係からは門が一度は建て替えられたことが判明しました。

通路調査(福井県交通まちづくり課提供)

 

この調査で大変驚くことがありました! 

なんと石垣を解体した結果、火災の熱を受け褐色に変色した痕跡が石の前面以外の面でも確認できたのです! 

被熱痕のある石垣(福井県交通まちづくり課提供)

これはつまり、寛文9年(1669年)の大火で焼失した山里口御門の再建時に、石の向きを変えて、石垣の積み直しが行われたということなのです。

このように火災後の石垣構築の際に古石を再利用したということは、『御焼失後御普請出来場所』(福井県立図書館保管)という焼失後の普請の際の記録に記されています。

 

近世城郭の石垣では、内部に裏込め石と呼ばれる握りこぶし程度の石や盛り土で埋めるのですが、山里口御門周辺の石垣内部からは、石製や燻製の瓦、土塀の腰板石、生活に用いた陶磁器等が確認されました。

ゴミを利活用していることが分かります。

石垣調査の様子(北石垣)(福井県交通まちづくり課提供)

 

このうち腰板石がこちら。

 

▲土塀の腰板石(板石)(福井県交通まちづくり課提供)

 

実物の腰板石は山里口御門跡の発掘調査で初めて確認されました。

土塀に石が使われている城は見たことがない。

福井城の特徴の一つと言えます! 

どのような土塀があったのかが気になる方は、私の第2巻をもう一度読んでいただくと、古写真があるので見ることができますよ。

山里口御門と私

 

どうでしたでしょうか。

簡単ではございましたが、中央公園と山里口御門跡の発掘調査から福井城を読み解き、魅力を発見できたのではないでしょうか。

地下に歴史的遺産が眠っていると考えるとワクワクしますね。

福井城跡はこれまで複数回の発掘調査が行われてきました。

今後も調査が行われることがあると思います。

福井城の全貌が明らかになることが楽しみですね。

これまでの調査成果の内容を基に古絵図を見ながら散策するのも良いのではないでしょうか。

 

中央公園には復元石垣・堀や御座所の形や堀の形を石のラインで示すといったことをしています。

ぜひ中央公園にお立ち寄りの際はチェックしてくださいね。

 

参考文献<福井市教育委員会 2014『発掘調査報告書 福井城跡17』>


 

次回も福井城っ! (またかよ。。。どんだけ~)

福井城跡を文化財の保存と活用という視点が探ってみたいと思います。

福井城跡は国の史跡としてふさわしい城跡ですが、福井県の指定、福井市の指定も受けていません。

高い石垣に広大な水堀が現存しているに、史跡指定されていないことは、珍しいことであります。

また、駅前の都市化開発によって破壊されてしまった福井城跡にスポットライトを当てます。

福井城が福井の文化の基礎を築いたといっても過言ではありません。

県民に親しまれる城跡になってほしいと思います。

 

お楽しみに。(隠された石垣については次回紹介します)

 

 

福井城を守る会からお知らせ

ここで、私が会長を務めさせていただいている福井城を守る会からのお知らせです。

 

2021年6月5日(土)に、第1回見学会「福井城址本丸とその周辺」を開催します。

5月9日に開催予定でしたが、福井県独自の緊急事態宣言の発出により延期となり、6月5日の開催となりました。

当日は、はぴりゅうも参戦してくれます。

コロナウイルスの感染拡大防止の対策をしっかりしていただき、多くの方のご参加をお待ちしております。

 

【参加の申し込み方法】
・参加者の氏名
・メールアドレス(中止または延期のご連絡、万が一に新型コロナウイルスの感染者が判明した場合のご連絡等以外は使用しません)

上記の2点をご記入の上、以下のメールアドレスまでご連絡ください。
✉: fukuicastle.fieldtrip@gmail.com

また、Facebookを利用されている方は「福井城を守る会グループ」にお入りいただき、参加の旨をコメントして下さい。
Facebook

【お問い合わせ】
福井城を守る会ホームページのお問い合わせ欄からお願いいたします。
ホームページ

 

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

 

福井城を守る会とは

 

2024年春の北陸新幹線金沢・敦賀間開通を控える今、福井の基礎を築いた福井城の魅力を掘り起こし、県内外へと発信行いたいという目的の元、2020年に設立されました。

目指すは福井城址 国史跡指定です。

 

活動内容は、2か月に一度の例会(現在はZOOMを使用しオンライン開催)を開き、書籍や発掘報告書、古絵図などを用いた福井城に関する研究会や談話会を行ったり、福井城の案内チラシ作成(インターネット公開)、城址のボランティアガイド・整備(草むしりやゴミ拾い等)などをしたりします。

年に4回、現地見学会も開催します。

福井城や福井の歴史や文化、街づくりなどにご興味を持たれている方はぜひご入会下さい。

ご入会はFacebookのグループ入会をクリックまたはTwitter・Instagramのメッセージ、ホームページのお問い合わせから入会する旨をお知らせください。

 

福井城を守る会

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新型コロナウイルス感染対策を頑張ろう

新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療・福祉関係の方々や生活を維持するために働く事業者の方々を応援します。心から感謝いたします。ありがとうございます。

 

過去の人類も幾度となく、感染症に悩まされ戦い続けました。

過去の人類がその都度感染症に負けずに勝ち続けたことによって、今があると思います。

あきらめずに、ソーシャルディスタンスや3密の回避、マスクの着用・お話はマスク、手洗いうがい、会話は控えるといった感染拡大防止の対策を頑張りましょう。

 

\だいなのプロフィール/

酒井 大那(さかい だいな)

「歴史に触れ合う、歴史を読み解くことができる歴史的文化遺産こそ、城跡!」

平成13年、福井市生まれ。考古学専攻の大学生(主な専門は日本考古学・城郭史)。
発掘調査から出土したモノを通じて、過去人類の文化や過去の社会を研究している。
これまで訪れた城跡、城郭は500カ所以上。

福井城を守る会 会長、若狭国吉城歴史資料館宣伝担当。城郭談話会・石川考古学研究会 等に所属する。

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