日常を少し離れて“奥小浜”へ。1300年の歴史と「土徳」に癒やされる小浜の歩き方【田中佑典のおばま微時記】

    日常を少し離れて“奥小浜”へ。1300年の歴史と「土徳」に癒やされる小浜の歩き方【田中佑典のおばま微時記】

    地域の魅力を発見し、伝え続ける田中佑典さん。

    とある夏の終わり、嶺南の中でも思い入れの深い小浜を案内人と巡ります。

      田中佑典(ゆうすけ)さん
      福井市出身。
      台湾と日本間での企画やプロデュース、執筆などを行う文化編集者。2020~21年、徒歩で福井県17市町を巡る「微遍路」を実施。
      その道中を本誌連載『ふくい微事記』で執筆
      Instagram

      写真左は遠敷地区の案内人・梶本良司さん。滞在型ゲストハウス「watoto stay Lita」オーナーであり、浄土真宗の僧侶。

      悠久の歴史が息づく遠敷(おにゅう)の歩き方。

      小浜市の南東で、のどかな里山と清流に囲まれた「遠敷」。

      1300年以上の歴史を誇る「神宮寺」や「若狭彦神社・若狭姫神社」、そして神宮寺で汲み清めた水を奈良県東大寺の神事「お水取り」へ向けて流す「鵜の瀬」と、あつい信仰が根付く場所です。

      「watoto stay Lita(ワトトステイリタ)」を営む梶本良司さんは、遠敷に住む体験を通じて、その魅力を伝えています。

      今回、過去に数度訪れた田中佑典さんが再訪。

      より深く味わうためのガイドを梶本さんにお願いしました。

       

      かつて遠敷は「小丹生」と表記され、外からの文化を翻訳・編集して都に届ける重要な玄関口でした。

      「古の時代から続く神社仏閣が、今自分の目の前に変わらず存在することに圧倒されます」と田中さん。

      2人は梶本さんお気に入りの「萬徳寺(まんとくじ)」でひと休み。

      幽玄な庭園に面した書院は、しんと静まり返り、虫の声が響きます。

       

      「紅葉やツツジの季節は賑わいますが普段は人が少なく、しっとりとした時間に浸れますよ」と梶本さんは言います。

      遠敷では、戦火を逃れた歴史的な建造物や行事を地域の皆が今も大切に守り続けているそう。

      「車だと見過ごしてしまう景色や空気感は、徒歩や自転車で感じるのが良さそう」と田中さんは目を細めました。

      神宮寺

      若狭比古神願寺として714年に創建したといわれる、全国的にも珍しい神仏混淆(こんこう)寺院。

      国指定重要文化財の本堂の中には御神仏と御本尊が祀られています。

      本堂から見ると、しめ縄が遠くの山にかかっているよう。本堂の右手には「閼伽井戸(あかいど)」が。

      tanaka’s voice

      「まさに『奥小浜』にふさわしい聖地。深まる秋、そして初冬にも、また訪れたい」

      神宮寺

      福井県小浜市神宮寺30-4
      ☎︎0770-56-1911
      【営】9:00~16:00
      【料】税込500円

      若狭彦神社

      715年から今の地に鎮座。

      若狭姫神社と合わせて「若狭一の宮」と称されます。

      急勾配の屋根が珍しい本殿。海上安全・海幸大漁の守護神として信仰が深い。

      tanaka’s voice

      「参道入り口の鳥居を入ると、二本の杉の大木が迎えてくれた。昨年、ひわだぶき屋根の葺替工事が終了した本殿は荘厳な姿だ」

      若狭彦神社

      福井県小浜市竜前28-7
      参拝自由

      若狭姫神社

      若狭彦神社の下社であり、721年に創建したとされます。

      境内には巨大な千年杉が空に向かってそびえ立ります。

      まちなかに近い「姫神栗や桜などの国産無垢材で表社」に社務所があります。

      tanaka’s voice

      「想像以上に大きく、こちらに覆いかぶさってくるような迫力。神主さんの話から、地域に愛されている様子が伝わってきました」

      若狭姫神社

      福井県小浜市遠敷65-41
      ☎︎0770-56-1116
      参拝自由

      萬徳寺(まんとくじ)

      小浜を治めた初代藩主・京極高次(きょうごくたかつぐ)、酒井家代々の祈願寺。

      曼荼羅(まんだら)を表した書院庭園が四季折々の姿を見せます。

      tanaka’s voice

      「ただ静かに、庭を眺める。美しい庭園と向き合っていると、自然と自分との境目が少しずつなくなっていくようだった」

      萬徳寺(まんとくじ)

      福井県小浜市金屋74-23
      ☎︎0770-56-2308
      【営】8:30~17:00
      【料】税込500円

      「土徳(どとく)」が根付く土地で“地味”を味わう。

      古刹(こさつ)を巡った後は、暮らす人々へ会いに。

      小学校の木造分校跡をアトリエ兼住居として受け継ぐ家具職人の栗本泰佑さん。

      そして、鮎釣りや祭りなどを通じて長年まちづくりを行ってきた仲野實(みのる)さんと聖代(まさよ)さん。

      「私たちの遊び場よ」と招き入れてくれた「えびね苑」で、囲炉裏を囲んだ穏やかな時間を過ごします。

      その飾らない姿に、田中さんは「『自然(じねん)』という言葉がしっくりきます。『自ずとそうなっていること』、遠敷は人の営みも森も川も、ありのままの姿がある」とポツリ。

      「何十世代もの人々が積み重ねてきた生活や祈り、自然環境や歴史風土が育む“土徳”が、この地には根付いています。

      ふらっと来た人にもその徳を分けてくれる、そんなおおらかさが心地良いんです」と梶本さんはほほ笑みます。

       

      市街地から離れた遠敷はいわゆる“奥小浜”。

      映えではなく“地味”、つまり土地の味があると田中さんは言います。

      「答えがすぐに分かる時代だからこそ、あえて時間や負荷をかけて味わう。その余白に遊ぶ時間が、ここには流れていますね」。

      遠敷川の清流に足を浸しながら話しているうちに、夕焼けが刻々と山並みを深い色に染め上げていきました。

      watoto stay Lita(ワトトステイリタ)

      築70年以上の古民家を改装。宿には悠々と寛げる広間のほか、テントサウナや信楽焼の薪風呂、ジャムセッションができる「音楽室」も。

      tanaka’s voice

      「遠敷の暮らしを住むように味わえる滞在型ゲストハウス。朝目を覚まして、宿のすぐそばを流れる遠敷川へ。裸足になって、川に足を浸す、おいしい空気を吸い、五感で体が起き上がる。『こんな暮らしをしてみたい』と理想の時間を過ごせた」

      すぐ脇に「お水送り」で有名な「遠敷川」が流れます。

      watoto stay Lita(ワトトステイリタ)

      福井県小浜市忠野9-14
      ☎︎090-6733-4064
      【料】1泊基本料金 日~木曜税込16,000円、金土祝前税込21,000円に加えて大人税込5,500円、子ども税込3,500円 ※予約は2名から
      ホームページ

      仲野さんご夫婦

      「あくまで趣味なのよ」と聖代さん。作品の一つを田中さんにお裾分けしてくれました。

      囲炉裏のある暮らしを楽しむ實さん。歴史をたどる写真を見せてもらいます。

      tanaka’s voice

      「忠野に住むご夫婦が自身のアトリエに案内してくれた。公務員を退職後、さまざまなイベントを通じて地域の良さを伝えているという。手を動かし、つくり、遊ぶ。そんな日々の繰り返しが、“暮らしの肥やし”になっている。二人の暮らしは、本当に幸せそう」

      奥さんの聖代さんは小物作りが趣味。夫婦の“遊び場”と言う「えびね苑」には、たくさんの作品が並びます。(普段は開放なし) 

      栗本家具工房

      木造小学校跡をアトリエにした工房。

      家具のオーダーメード制作を行います。

      栗や桜などの国産無垢材で表情豊かな家具を作る栗本さん。

      tanaka’s voice

      「遠敷エリアの、さらに奥にある松永地区へ。地区へ森に囲まれたこの場所が、栗本さんにとっては、自分の暮らしを思いきり謳歌できる『地の利』を得た場所なのだろう」

       

      栗本家具工房

      福井県小浜市門前12-10-2
      ☎︎080-4196-3427
      予約制
      Instagram

      海辺の「ゆるさと」で再会の旅。

      田中さんが提唱する「微住(びじゅう)」という言葉があります。

      生まれ故郷や今の住まいだけでなく、旅先で出会い育んだ関係から第3の故郷ともいえる「ゆるさと」を見つけて、自分らしい暮らし方を探していくことです。

      それは、つい“帰りたくなる”魅力にあ ふれる場所。

       

      以前田中さんが数週間の微住を行った「ゆるさと」、小浜市街へ向かいます。

      微住以降交流が続く堀越一孝さんと合流し、「アップルハウス」で懐かしの焼肉丼定食を頼みます。

      その後、本誌連載でも訪れた西津地区の「化粧地蔵」へ。

      「普段から『地蔵当番』を中心に地区の人がお世話をしています。脈々と続くものに、今も関われているという喜びは大きいですね」と堀越さん。

      時間をかけて守り続けてきたことを面白がれる、田中さんのような視点が嬉しいと話します。

       

      9〜11月にかけ、田中さんは再び福井を歩く予定です。

      「今回の滞在でまた小浜の解像度が深まり、より好きになりました。また帰ってきます!」。

      新しいローカルの楽しみ方を教えてくれる田中さんを応援するように、化粧地蔵が穏やかな顔でほほ笑みかけていました。

      GOSHOEN(ごしょうえん)

      江戸時代に活躍した北前船の商人「古河屋」ゆかりの建物。

      1815年に建てられ、県の有形文化財にも指定されています。

      優美な庭園を望む広間は「くつろげる文化財」。写真右が案内人の堀越一孝さんで「マツ勘」のクリエイティブディレクター。小浜のローカルウェブマガジンも運営。

      tanaka’s voice

      「『小浜微住』でお世話になった堀越さんと再会。お互い、小浜を愛する“ヨソモノ”だ。すっかり馴染みとなった『みんなの別邸』は、いつも長居してしまう。小浜には時間をかけて味わいたい場所がたくさんある」

       

      現在は、老舗塗箸メーカー「マツ勘」が継承。カフェのほか、伝統的な若狭塗箸の直営販売も行っています。

      GOSHOEN(ごしょうえん)

      福井県小浜市北塩屋17-4-1
      ☎︎0770-64-5403
      【営】10:00~17:00
      【休】水・木曜
      ホームページ

      化粧地蔵

      西津地区を中心に古くから続く、地域の子どもがお地蔵さんに化粧を施す風習。同地区の各路地には約123体が祀られています。昔、住民は漁に出る人の安全を願っていたそう。

      tanaka’s voice

      「毎日きれいに整えて、ちゃんと新しいお茶が供えられている。子どもからお年寄りまで、地域で受け継がれるリズム(暮らしの型)とイズム(暮らしの考え方)。その土地らしさは、日々のルーティンの中に残っていく」

       

      アップルハウス

      創業49年、バッティングセンター併設の喫茶店。

      焼肉用の肉の持ち帰りも人気。

      「豚焼肉丼定食」税込1,100円は創業以来注ぎ足しで作る秘伝のタレがコク旨。

      tanaka’s voice

      「微住中に通ったお気に入りの店。喫茶店だけど、食事のメニューが充実。お土産に『いかキムチ』が欠かせない」

       

      アップルハウス

      福井県小浜市福谷9-3
      ☎︎0770-53-2300
      【営】10:00~18:30
      【休】月曜(祝日の場合は営業、翌日休)
      ホームページ

      福井県立若狭歴史博物館

      若狭の歴史や豊かな文化を、仏像や祭礼芸能、出土品など豊富な資料で紹介。

      tanaka’s voice

      「若狭の成り立ちや歴史、風土、文化を知ると、目の前の景色の奥にあるものの答え合わせができる。地域の魅力は、目に見えるものだけではない。地域を味わう、“地味る”旅とはこのことだ」

       

      福井県立若狭歴史博物館

      福井県小浜市遠敷2-104
      ☎︎0770-56-0525
      【営】9:00~17:00(最終入館16:30)
      【料】常設展一般税込310円、高校生以下・70歳以上無料
      ホームページ

      田中さんの旅は続く…

      9月23日~11月初旬「福井微遍路一期三会編」スタート

      4年前に徒歩で巡った「福井微遍路」を再び実施。

      大野市を出発し北から南まで、過去の旅路をなぞりながら、出会い直す旅へ。

      2027年1月23日~3月22日「微展」

      「微住」「ゆるさと」「一期三会」など、福井や台湾、アジアを旅する中で培った「田中語録」から、いつもの福井が少し違って見えるような展示を行います。

      大野市のCOCONOアートプレイスにて。

      ※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

      ふーぽ編集部
      writer : ふーぽ編集部

      ふくいのことならお任せあれ! グルメ、イベント、おでかけスポットなどなどふくいのいろんな情報をお届けします。

      おすすめ情報が届くよ

      ふーぽ公式LINEはこちら

      Follow us

      ふーぽ公式Instagramはこちら

      こちらもクリック!情報いろいろ

      キーワード検索

      必見!ふーぽイチオシ情報PR

      人気記事ランキング

        人気記事ランキング

            ページ上部へ
            閉じる

            サイト内検索

            話題のキーワード

            メニュー閉じる