絵本が好きだから、 描きたいものを届ける。
絵本作家の刀根さんに、どうして絵本を描くのか伺うと、「好きだから」と一言。
幼い頃から絵が好きで、夢はイラストレーターでした。
大学でデザインを学び、子ども服の会社に勤務後、イギリスで1年間の語学留学の際、「ボローニャ児童書ブックフェア」に出かけたのが、絵本作家を目指すきっかけになりました。
帰国して初めて作った絵本サンプルをブックフェアに持ち込んだところ、現地の編集者の目にとまり、 2011年に“Qu estoposso farlo”でイタリアデビュー。
翌年にはミラノに拠点を移し、12、13年に絵本作家の登竜門といわれる「ボローニャ国際絵本原画展」に連続入選。
さらに国際イラストレーション賞(※)を受賞した“El viaje de PIPO”を スペインで刊行し、各国から高い評価を受けました。
2014年にはその日本語版『ぴっぽのたび』、翌年にデビュー作の日本語版『なんにもできなかったとり』が出版されました。
※国際イラストレーション賞
イタリアのボローニャで毎年開催される「ボローニャ国際絵本原画展」。入選作家のなかから国際イラストレーション賞が授与され、受賞者には奨学金と絵本の出版権が贈られる。新作絵本は翌年のフェア会場で発表
ヨーロッパと日本で絵本を制作するうち、両者で絵本のとらえ方が違うことに気付いたといいます。
「ヨーロッパでは日本のように絵本=児童書ではなくて、子どもから大人まで読むもの。ストーリーも起承転結にこだ わらず、曖昧に始まり曖昧に終わってOK。絵本はアーティストの表現手段のひとつなんです」
繊細な筆づかいと美しい色彩、いい意味で日本的ではない自由な作風が刀根さんの真骨頂。
“刀根ブルー”と呼ばれる印象的な青は透明感を引き出したり、セピアの下地に重ねて厚みを出したり、細やかに表現さ れます。