“おもしろそう”と思ったら一直線。理容室「RADI（ラディ）」を営む赤星慎利さん、全力疾走の24歳。（南越前町）【こたかな福井びと】

ど派手なサインポールに、自己申告制の“ハゲ割”。

子どもには無料券、お店の中ではお祭りも開催。

予約があれば、深夜でも早朝でも開ける。

定休日なんてありません。

南条駅からすぐの場所で、たった一人でこのユニークな理容室を切り盛りしているのが、24歳の赤星慎利さんです。

お店を紹介するとき、赤星さんはこう言います。

「南条駅からダッシュ10秒です」

徒歩1分、ではなく、ダッシュ10秒。

何気ないその表現に、すべてにユーモアをもって全力で駆け抜ける赤星さんの生き方がにじみでます。

店内にある施術台は、たったひとつ。

赤星さんは、その椅子に座るひとりひとりとじっくり向き合います。

「時間に追われず、お客さんと向き合いたいんです」

そう語る彼のもとには、学校帰りの小学生から、93歳の常連さんまで、年齢も背景もバラバラなお客さんが髪を切りに訪れます。

誰もが気軽に立ち寄れる場所。

赤星さんが目指しているのは、まさにそんな温かな空間です。

その想いの根底には、幼いころに何気なく過ごした、美容室の景色があります。

それは、父が営んでいた美容室。

美容師の父が髪を切り、母がその手伝いをする。

そんな両親を中心に、多くの人がふらっと集い、笑顔があふれる場所が、そこにはありました。

赤星さんにとって、それはごく普通で、だけど何より心地よい“日常”でした。

しかし、赤星さんは若くして両親を見送るという別れを経験することになります。

小学４年生のとき、母が病気で他界。

そのとき、母は父に秘密で美容師の資格取得を目指していたそうです。

やがて父も病に倒れ、美容室は幕を閉じることに。

その後、県外の専門学校で理容師の道へ進み、経験を重ねた5年。

23歳になった赤星さんは、かつて父が美容室を営んでいたこの町で、自分のお店を開く決心をします。

開店日は、母の誕生日です。

かつての日常に背中を押されるように、新たな一歩を踏み出しました。

「おもしろそう、と思ったら一直線なんです。父譲りですね」

にこやかに語る赤星さん。

「うちを目的に南越前町に来てくれる人を、もっと増やしたいですね」

その笑顔のまま、今日も赤星さんは店に立ちます。

赤星さんの未来へと続く“ダッシュ”は、まだ始まったばかりです。