【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第36話:どれにしようかな。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第36話:どれにしようかな。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫4との暮らしを、のんびりと綴っています。

第36回は、「時間」について。

選択すること、毎日の過ごし方など、ちょっとした意識で「時間」を豊かにするためのヒントをシェアしてくれています。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者・著者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫4と暮らす。釣り好き。著書「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」(風鳴舎)や、猫沢エミとの共著「真夜中のパリから夜明けの東京へ」(集英社)が好評発売中 公式Instagram

第36話:どれにしようかな。

歳をとると時間の経つのが早いと感じるのはなぜなのか。

* * *

一度はだれもが考えるに違いない。

人生に占める割合の問題や、はじめて体験する出来事が減ってしまうことなど、理由は諸説あるようだけれど、僕自身が一番しっくりくるのは、日々のいろんなことがあまりにも手慣れてしまって、無意識のうちにこなしているからではないか、という感覚だ。

朝起きて、犬の散歩をして、コーヒーを飲んで、掃除をして…。

ほとんど流れ作業のように一日が始まり、そして過ぎていく。

* * *

最近は、そんなひとつひとつにもう少し意識を向けて生活してみようと思い、ささやかな工夫をしている。

* * *

朝、犬と散歩に出るときも、まずはしっかりと毛の手触りや目の輝き、鼻先の湿り気を確かめる。

そして、歩きながらつい浮かんでくる「今日はこれとこれが締め切りで…」という仕事の段取りも、いったん脇に置いて、犬の息づかいや足音、公園の木々の様子を眺める。

今朝は、いつもの散歩道に並んでいた桜の老木が、いつの間にか切られていることに気がついた。

* * *

そんなことを考えて過ごしていた先日、引き出しの中にたくさんしまってあるお茶を整理することにした。

なぜか僕は、手土産や贈り物でお茶をいただくことが多い。

どれも、僕の好みや暮らしぶりを想像しながら選んでくれたものだと思うとうれしくて、「これは特別な時間に」と大事にしまい込んでしまう。

でも、実はいつも飲むお茶はある程度種類が決まっていて、その結果、時間と一緒に記憶も薄れてしまい、気がつけばいただいた特別なお茶は賞味期限が切れていた、ということもしょっちゅうなのだ。

* * *

そこで思い立ってすべてのお茶をぜんぶ開けて、期限を確認し、味や香り、種類で分別。

キッチンのお茶コーナーに見渡せる仕組みを作った。

朝、湯をわかすとき、カップを取り出すとき、袋や缶がずらりとならび、自然と視界に入る。

そこから「さて、今日はどれにしようかな」と選ぶのだ。

* * *

この「選ぶ」という行為。

考えてみれば、人生はすべて選択の積み重ねだ。

大きな決断も、小さな選択も、同じ人生の中にある。

長く勤め人をしていた僕はとくに「時間」に関しては自分で選ばず、だれかに支配されている感覚が強かった。

だからこそこんな小さな選択を意識的に重ねながら、自分の時間を自分の手に取り戻すように生きていけたらと思うのだ。

* * *

やかんが小さく鳴りはじめ、急須を温め、選んだ茶葉に湯を注ぐ。

ふわっと立ち上がる香りを吸い込みながら、しばし待つ。

このなんでもない時間にただ意識を集中する。

* * *

どうしたって早足になってしまう残りの人生時間は、これですこしだけ拡張できるような気がする。

今朝は娘のシンガポール土産のお茶を花岡隆さんの粉引のポットと湯呑みで

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※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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writer : ふーぽ編集部

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