猫と私たちの未来のために。保護猫活動を続ける天王山安楽寺・杉本さん×VOWWOW・笠原さん【対談】

猫と私たちの未来のために。保護猫活動を続ける天王山安楽寺・杉本さん×VOWWOW・笠原さん【対談】

こんにちは、ふーぽ編集部です。

今回は、保護猫の預かりや譲渡を行っている天王山安楽寺住職の杉本さんVOWWOW社長の笠原さんに犬や猫の“命”を守るための取り組みを伺いました。

撮影場所:天王山安楽寺

杉本成範(しげのり)さん(写真左)
あわら市の「天王山安楽寺」、おおい町の「長楽寺(ちょうらくじ)」の住職。兵庫県宝塚市出身で実家は小浜市の「飯盛寺(はんじょうじ)」。僧名は「せいはん」。約20年間、一般企業で経営戦略や情報システムに携わった

\天王山安楽寺の取り組み/
悩みを抱えた猫が集まるお寺。
通称「にゃんらくじ」。23年の3月から始めた保護活動で100匹以上の猫の保護・譲渡に携わる。定期的に説明会や譲渡会を行い、SNSで猫の日常も発信。オリジナルTシャツやシールなどのグッズも販売中

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笠原貴之(たかゆき)さん(写真右)
ペットショップ「VOWWOW(バウワウ)」の代表取締役社長。福井市出身。ハウスメーカーに勤務後、父親の他界をきっかけに家業であるペットショップを継ぐ。自宅でトイプードル2匹と暮らしている

\VOWWOWの取り組み/
保護猫に寄り添うペットショップ。
2018年8月に犬猫の生体販売を終了。2022年に保護猫活動を始め、福井県動物愛護センターから常時3匹の猫を店内で預かる。入場無料のドッグランや完全個室のペットホテル、大型犬や猫も利用できるペットサロンなどの事業も行っている

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たび(写真右下)

雑種。年齢不詳。外で遊ぶのが大好き

 

保護猫活動のきっかけと新たなチャレンジ。

杉本さんになでられてリラックスタイムのたび

たびに夢中の笠原さん。思わずにっこり

 笠原さん(以下、笠) 
かわいい猫ちゃんですね。今日安楽寺さんに着いたとき、玄関でお迎えしてくれました。

 杉本さん(以下、杉) 
この子は「たび」というんですが、もともとは野良猫で、最初はこんなに人懐っこくなかったんですよ。
でも、最近では参拝者をお出迎えするようになって、すっかりお寺の顔になりました。

 笠 
自由に過ごしているたびくん、とても心地良さそうですね。ペットショップで預かっている猫たちと比べると、のびのびとしている感じが素敵です。

 杉 
そう思ってもらえて嬉しいです。
でも、 実際には難しい面もあります。自然な環境とはいっても、結局は人間社会の中で暮らすことになります。地域猫や野良猫たちが、ロードキル(車にひかれて亡くなること)や虐待などの犠牲になることも少なくありません。

VOWWOWで預かる保護猫3匹

 笠 
私の会社では2018年8月に犬猫の生体販売をやめて、 22年から県愛護センターの保護猫の受け入れを始めました。もともと猫が暮らせる環境は整っていたので、常時3匹を預かっています。保護猫に興味を持ってくれるお客さんがいたら、愛護センターにつなぐこともあります。

 杉 
生体販売をしていないペットショップは珍しいですよね。
やめるきっかけは何でしたか?

 笠 
お店に来るまでの流通過程で年間2万頭が亡くなっているという現状や、フランスの動物保護の考え方を知って。

 杉 
フランスでは2024年にペットショップでの犬猫の生体販売が禁止されていますよね。

 笠 
はい、社員として働いていた時は知識不足ということもあり生体販売について疑問に思いませんでしたが、日本の現状や異なる考え方を知るにつれて、生体販売の必要性について考えるようになりました。やめることで救える命があり、衝動買いしたペットの飼育放棄などの問題も防ぐことができます。

 杉 
勇気のある決断だったと思います。VOWWOWさんが先駆者になってくれたおかげで、他の同業者の方も挑戦しやすくなったのではないでしょうか。

 笠 
そうだと嬉しいです。
安楽寺さんは猫の預かりや譲渡会を行っているんですよね。

 杉 
昨年の3月末に檀家さんから「自宅の倉庫で子どもを産んだ母猫が車にひかれてしまったので、お経をあげてほしい」と頼まれました。子猫1匹を引き取りましたが、3週間後に亡くなってしまって。
この時にはじめて“保護”について考えるようになりました。

 笠 
車社会だからこそ起こってしまった悲しい出来事ですね。

 杉 
ええ。命を未来に繋ぐことの難しさを痛感しました。
安楽寺でも愛護センター経由で、保護猫の受け入れを始めたんです。今では個人の相談も増え、誰かが餌をあげていた地域猫や飼い主が高齢で飼えない猫など、さまざまな事情を抱えた猫たちがやって来ます。自分たちができる範囲で一時的に預かり、元気な状態で里親さんに譲渡できるように努めています。

 

猫と私たちの未来のために伝えていきたいこと。

 杉 
境内に猫グッズが集まる「にゃんふぇす」や保護猫活動の現在と未来を考える説明会なども行っています。

「にゃんふぇす」にはたくさんの猫好きが集まりました

小浜市にあるカフェでの保護猫説明会の様子

 笠 
「にゃんふぇす」気になります!多くの人が、猫たちのことを考えられる場になりますね。
杉本さんはSNSでもお世話の様子を発信していますよね。

 杉 
猫のケガの原因や状態などを投稿しています。活動のありのままを見てもらいたくて。

 笠 
リアルな現場を知ることで、保護に対する意識が変わりそうですね。

 杉 
自分たちの活動を知ってもらうことが多くなりました。相談件数が増えてきたので、もっと活動の幅を広げたいのですが、個人では限界があると感じています。
預かる匹数を増やしたいけれど、自分たちができる範囲でやらなくてはならない。無理に受け入れたことで手一杯になってしまって、仲間とのコミュニケーションにミスが生まれたら元も子もないですから。
活動の幅を広げていく一方で、一つ一つの命に向き合うことを忘れないようにしたいです。

安楽寺で暮らす保護猫の部屋

 笠 
私たちも、現在行っている保護猫の預かりや譲渡について軌道にのってきたので、今は思いに共感してくれる人の輪を広げていく時だと思っています。

 杉 
実は、猫をめぐる問題の背景には人間社会の問題があります。空き家が増えればそこに野良猫が住み着いたり、社会から孤立した人が多頭飼育崩壊になったり。具体的な社会問題を掘り下げながら、広い視野で伝えていかなくては。

 笠 
社会のためにできることが、小さな命を守る助けになったり、またその活動を応援できる世の中になったらいいですよね。

 杉 
これからお家に動物を迎える人や、すでに迎えている人にも改めて考えてもらいたいです。

杉本さんは猫の里親から相談を受けることも多い

 笠 
「どこで迎えるか」というのも大切。 ペットショップやブリーダー以外にも施設で「保護犬猫」という選択肢がある。
一番大切なのは「どう幸せに過ごすか」「どう暮らすか」。自分達に合った方法を選んでほしいです。

 杉 
私たちの宗派では「生きている間はこの体を借りているだけに過ぎない、自分の命でさえ自分のものではなく、命は他の誰のものでもない」という考え方があります。人の勝手な理由で育てることを放棄してはならないし、最後まで命と向き合い、家族として迎えてほしいと思っています。
もちろん人間も幸せになるべき。人と動物が幸せになれる方法を探ってほしいです。

 笠 
本当にそうですよね。犬や猫との暮らしは日常に豊かさをプラスしてくれる気がします。

 杉 
一番の理想は保護活動をする必要がない世の中になること。そんな日を目指して、誰かの“気づき”につながるような活動をお互いに続けていきましょう。

 


 

天王山安楽寺

「珈琲豆専門店びいん」とコラボしたドリップコーヒー。安楽寺の猫たちをイメージしてブレンド

安楽寺の猫がシールに

「クレイジーにゃT」。これらはすべて保護猫活動の資金になります ※「BASE安楽寺」で購入可能

天王山安楽寺

福井県あわら市北潟42-12-2
090-3164-5109
【営】9:00~17:00
【休】不定休
ホームページ

VOWWOW 運動公園店

猫が入りたくなる「金魚鉢」は笠原さんのイチオシ商品

「猫砂のスコップ」。砂を落とさずに糞を処理できて便利

保護猫のお部屋

VOWWOW 運動公園店

福井県福井市福新町1907
☎️0776-33-7700
【営】10:00~18:30
【休】火曜
ホームページ

※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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writer : ふーぽ編集部

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