【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第7話:僕と誰かの1分、1秒。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第7話:僕と誰かの1分、1秒。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫2との暮らしを、のんびりと綴っています。

2023年10月10日(火)に著書を発売される小林さん。

第7回は、その執筆の背中を押したという、1通のダイレクトメッセージにまつわるお話です。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫2と暮らす。釣り好き。「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」(風鳴舎)が10月10日に発売。Amazonにて予約受付中。公式Instagram

 

第7話:僕とだれかの1分、1秒。

「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」


この秋に保護犬福と僕たち家族の物語が一冊の本になる。

妻が亡くなってほどなくして執筆を依頼されたにもかかわらず、いざキーボードを前にするとすぐに立ち止まってしまって、書き上げるまで随分と時間を要してしまった。

自分自身が編集者であるにもかかわらずなかなかの編集者泣かせ、絶対に担当したくないタイプの著者だ。


原稿を書くにあたって、当時のメールやLINE、日記、病院の記録などを時系列順に並べて整理していくと、さまざまなことが思い出されてくる。

当時精一杯がんばっていたと思う自分自身に、もっとできたんじゃないのか?

と疑問が湧いてきて、そうなると延々と記憶を旅する時間になってしまい、ぴたりと筆が止まってしまうのであった。

それに、見ず知らずの家族の話をわざわざ本まで買って読んでくれる奇特な人が果たしているのだろうか?

もう出版するのを辞めようか?

深夜にひとり考えることもしょっちゅうだった。

そんな僕の背中を押してくれたのは、インスタグラムに届いた1通のダイレクトメッセージだった。


* * *


「初めてメッセージ送ります。(略)

実は私も乳がんから肝臓に転移し治療している最中で、奥様と同じ病気と知りました。

毎日不安で、肺にも水が溜まってきている状態です。

やはり奥様は最後かなり苦しまれたのでしょうか。私自身不安で仕方ないんです」


メッセージの主の病状は文面を見てすぐにわかった。

もう十分すぎるほど頑張ってきて、この先が長くないその方にいったいなんと言葉をかければいいのだろうか。

しかし、同時にこうして僕と妻が経験したことを聞きたい方がいるんだということを改めて思い知った。


メッセージに書かれた番号に電話をかけ、その方といろいろな話をした。

「さすがに体調も気持ちもツライです。(略)

いっそ終わったらって思うこともあります」

という言葉がつらかった。

電話の最後に

「実は僕ら家族と保護犬福の話が本になるんですよ。ぜひ読んでくださいね」

と伝えると

「奥様の闘病日記を手に取れないのが残念です」

と答えた。


その後、何度か送ったメッセージは既読になることはなかった。

そのとき痛感した。

今、僕が煮え切らない思いで過ごす1分、1秒は、他のだれかにとっては、かけがえのない、残りわずかな時間。

かすかに灯っている命の火が消えないように懸命に過ごしている、その時間なのだということを。


* * *


それからもう一度気持ちを切り替えて原稿を書く日々。

それもいよいよ終わりが見えてきた。

脱稿したら静かな秋の森にキャンプに出かけよう。

もちろん福を連れて。



執筆のじゃまをしにくるひとたち

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