【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第6話:ささやくように聞いてみて。

【犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。】第6話:ささやくように聞いてみて。

こんにちは、ふーぽ編集部です。

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫2との暮らしを、のんびりと綴っています。

第6回は、小林さんと保護犬の福、保護猫のとも・もえとのコミュニケーションについて。

ペットとの接し方から人間関係まで、広く気づきを得られそうです。

小林孝延
こばやし・たかのぶ

編集者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫2と暮らす。釣り好き。公式Instagram

 

第6話:ささやくように聞いてみて。

生まれてまもなく母犬やきょうだいたちと引き離されて保健所に収容された福は、犬が成長する上でとても大切だと言われる「社会化」のタイミングを逃している。

世の中の景色や匂い、音、さまざまな刺激を受けて成長すべきとき、福はコンクリートに囲まれた窓ひとつない壁の中にいた。

そして、はちわれ兄妹のともともえは生粋の野良猫で、道ゆく人間たちを慎重に品定めしながらひもじい思いをしのいで餌を探しているうちに、僕の家のベランダにたどりついた。

だからなのか3匹とも人間に対して懐疑的で心を開かない時間が長く苦労した。

時間をかけて少しずつやわらかくなった彼らの心は今も、無邪気にじゃれつく普通の犬や猫にはほど遠い。

だから、ときおり僕に対して見せるしっぽをふったり、体を擦り付けたりする僅かな愛情表現にはいつも過剰に喜んでしまうのだった。

* * *

僕は、むかしテレビで見たムツゴロウさんよろしく「よーしゃよーっしゃ」という掛け声とともにわしゃわしゃと全身を力強く撫で回す。

しかしこの愛情表現、どうもうちの3匹は好きではないらしい。

むしろそれをすると遠ざかっていくのだ。

繊細でガラスのような心のどうぶつたちにはストレートすぎる愛情表現はどうやら恐怖に感じるらしい。

言葉をもたない犬猫たちとの意思疎通に思い悩んでいると、

「みんな自分の声を聞いてほしいのだから、もっとやさしく触れてゆっくりとささやくように彼らの声を聞いてみて」

と教えてくれたのはタロット占いの名手である友人だった。

その人はわが業界にも顧客が多く、未来に迷ったり悩んだりした時、カードからのメッセージで進むべき方向を照らしてくれるというもっぱらの評判。

特別スピリチュアルに傾倒しているわけではないけど、なぜかこのメッセージは当たってドキッとすることが多く、

(ともが家出したときも相談すると「あと2日ほどで帰ってくるよ」とズバリ帰ってくる日を教えてくれた・・)

犬猫たちの悩みにも核心をついた答えが返ってきて驚いたのであった。

 

はたして犬猫たちの心の声を聴くようにソフトに触りつつ静かに話しかけると、繊細な3匹はこれまでとは違う反応を示すようになった。

とくに福はまるで別人(犬?)のように僕に擦り寄って甘える時間が格段に増えた。

この歳で自分の信じるコミュニケーションの方法を見直す機会がくるなんて思いもしなかった。

きっと人に対しても同じだよね。

巣立ってしまった子供たちには申し訳ないけれど、もっと君たちの心にも寄り添えば良かったね。

こうして父はこの歳になっても少しずつ進化しているのであった。

 

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※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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