発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第14回- 津の酒、浦の酒(福井・富山編)

    発酵デザイナー小倉ヒラクの《ほくりく発酵ツーリズム》-第14回- 津の酒、浦の酒(福井・富山編)

    ふーぽ読者のみなさん、こんにちは。
    発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

    福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中の《ほくりく発酵ツーリズム》を、ふーぽでもお届けしていきます。

    福井県をはじめ、石川・富山を含めた“北陸”の発酵文化を紹介します。

    発酵から北陸の歴史や気候風土を読み解いていきましょう!

     

      発酵デザイナー 小倉ヒラク

      1983年東京都生まれ、山梨県在住。文化人類学と発酵学を独自に融合させた「発酵文化人類学」を展開し、「発酵デザイナー」の肩書で微生物研究や食文化の普及に取り組む。著書『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。金津創作の森美術館(福井県あわら市)で北陸の発酵食文化を紐解く展覧会「Fermentation Tourism Hokuriku ~発酵から辿る北陸、海の道」2022年9月17日(土)~12月4日(日)を開催予定。

      展覧会詳細は金津創作の森美術館HPまで。

      津々浦々って、どういう意味だか知っています?」。

      三方五湖、早瀬の港町にある老舗酒蔵、三宅彦右衛門酒造を訪ねた時のこと。

      蔵元の三宅さんからこんな話があった。

      「津々浦々の『津』は、よその土地からやってくる大きな船が泊まる港のこと。『浦』は大きな港から荷分けされた小さな船が泊まる港のこと。実際に地元の住民の生活物資が届けられるのは『浦』のほうなんですね。大きな『津』と小さな『浦』の両方があっての『津々浦々』なんです」

       

      力強くて充実感のある浦の酒

      早瀬浦の蔵


      三宅さんの醸す酒、その名も「早瀬浦」は全国の日本酒好きから熱狂的に愛される銘酒

      そのルーツは、三百年以上前に遡る漁師の酒の味です。

       

      たまに浦から生活物資が運び込まれる以外は、ほとんど自給自足の小さな漁村だった早瀬。

      海のすぐ横に位置する酒蔵の軒先に、深夜からの沖仕事を終えた漁師たちが涼みに立ち寄って酒を飲み、昼過ぎにはまた家に帰って翌日の漁に備えたそうです。

       

      早瀬浦の味わいの特徴は、激しい肉体労働の乾きを癒やす力強い旨味と甘味。

      そして海上の陽に焼かれた身体の火照りを冷ます爽快感。

      漁師の酒ならではの「飲んだ時の充実感」が、ローカルな「浦」の酒の特徴です。

       

      早瀬浦はローカルで力強い風味を、現代的な醸造法でアレンジすることによって、地元だけでなく全国の「強くてクセのあるのが好き!」なコアな酒ファンのハートを掴んだわけなのです。

       

      すっきり洗練された「津の酒」

      大阪府堺から北海道の奥地まで。

      瀬戸内海〜日本海をつなぐ近世日本の大航路を行く北前船。

      この大きな貿易船の寄港地には「津の酒」の文化が根付いています。

       

      同じ北陸でいえば富山県の岩瀬。

      富山を代表する銘酒、「満寿泉(ますいずみ)」の酒はしっかり体幹の通った酒質ながら、スッキリとした飲み口と奥深い香りが特徴。

      東北ならば山形県酒田の「楯野川(たてのかわ)」もそう。

      モダンさを感じさせる華やかさと喉を通るそばから染み込んでいくような旨味。

       

      商業や文化の中心地として、「津」の港には味にも格式にもうるさい「通」な粋人たちが集ったのでしょう。

      賓客を迎える宴を華やかに盛り上げる美術品のような酒に出合うことができます。

       

      味わいを見極めるコツ

      力強い発酵の泡

      ローカルで力強い「浦の酒」、華やかに洗練された「津の酒」。

      そのどちらも楽しめるのが、北陸の酒の魅力。

       

      居酒屋さんやお寿司屋さんで飲み比べる時に、一つ味わいを比べるコツを伝授します。

      まずは通常の火入れ酒ではなく、生酒(無濾過だとなお良し)を口に含んで舌で転がした時の質感に着目してみてください。

      スッキリ華やかな酒にはほんのりと甘酸っぱいガス感を感じます。

      一方、どっしり力強い酒にはまろやかな熟成感が。

      この違いは「酒を搾る時の方法論」によって生まれます。

       

      酒のもろみが酸素に触れないようにしてアコーディオンのような機械で一気に搾っていく現代的な搾りだと、もろみに残った酵母のガスの泡が一部ボトルに閉じ込められます。

      すると微発泡のスッキリ感が出てくるのですね。

       

      一方、あえてもろみを酸素に触れさせながらゆっくり搾っていく、プレス機のような伝統的な搾り方だとお酒が酸化してどっしりした熟成感が演出されていきます。

      お酒の「発酵」だけでなく、「搾り」の工程でも味わいが変わってくるのです。

      どちらも良い悪いはなく、造り手がどんなお酒を造りたいのか、こだわりによるチョイスです。

       

      さてわれら欲張りな飲み手。

      どちらのタイプも「こりゃ美味い!」と楽しんでしまいましょう。

      どっしり酒もスッキリ酒も、津々浦々の日本酒ジャーニーを堪能されたし。

       



      いかがでしたか。

      北陸の発酵文化を訪ねる《ほくりく発酵ツーリズム》

      次回もお楽しみに!

      【連載】ほくりく発酵ツーリズム
      バックナンバー

      ※掲載内容に誤りや修正などがありましたら、こちらからご連絡いただけると幸いです。

      ※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

      ふーぽ編集部
      writer : ふーぽ編集部

      ふくいのことならお任せあれ! グルメ、イベント、おでかけスポットなどなどふくいのいろんな情報をお届けします。

      おすすめ情報が届くよ

      ふーぽ公式LINEはこちら

      Follow us

      ふーぽ公式Instagramはこちら

      こちらもクリック!情報いろいろ

      新着の記事

      キーワード検索

      人気記事ランキング

        人気記事ランキング

            ページ上部へ
            閉じる

            サイト内検索

            話題のキーワード

            メニュー閉じる