「今この時を精いっぱいに 禅の心を描き、伝え続けたい。」僧侶・禅画家・大雲道人さん【ふくい人に聞く】

「今この時を精いっぱいに 禅の心を描き、伝え続けたい。」僧侶・禅画家・大雲道人さん【ふくい人に聞く】


※福井県ゆかりのさまざまな人たちにインタビューする連載です。 

僧侶・禅画家
大雲 道人(だいうん どうじん)さん

 

美浜町にある徳賞寺の住職で、達磨の墨絵を描く禅画家としても知られる大雲道人さん。

12年前に体をこわし、現在も車いす生活を送りながら無心に創作に取り組んでいます。

フランスの伝統ある国際公募展「ル・サロン」で、2021年開催回を含め8年連続入選するなど、海外でも高い評価を得ています。

 


 

350年以上の歴史を誇る世界最古の公募展であるフランスの「ル・サロン」には、ルノワールやモネ、セザンヌら名だたる芸術家たちが出品してきた。

 

大雲道人さんは達磨をモチーフにした墨絵で、2012年の初出展以来8回連続で入選しており、フランス美術界でもその名を広く知られている。

「欧州では、日本で思われている以上に禅の思想についての理解が深い。私の作品に対しては、技法だけではない深い精神性の部分で魅力を感じてくれているようです」

「ル・サロン」入選作の一つ。現在、大雲さんが描くモチーフはほぼすべて中国禅宗の開祖とされる達磨大師。必ず最後に描き入れるという力強い眼が特徴的だ。墨絵を描き上げた後、必要と感じれば禅語の文字を書き加えて完成とすることもある

 

山口県出身。高校生の頃、日展作家の師の元で絵を始め、大学時代に初めての個展を開いた。僧侶として大本山永平寺での修行を経て、縁あって33歳で宗伝寺(若狭町)住職に。その後、徳賞寺の住職となった。

かつては日本画や水墨画を手掛け多彩なモチーフを描いていた。しかし僧侶の務めの傍らでは、どうしても制作にかける時間が限られてしまう。悩んだ末に、一筆で一気に描ける墨絵の世界にたどり着いたという。

それから禅僧として生きる大雲さんが、禅宗の開祖である達磨大師をモチーフに選んだのは自然なことだった。

 

「ただ目の前の白い紙に向き合い、無心になって筆を運ぶ。私にとって絵を描くことは修行の一つといえるんです」

美浜町佐柿の徳賞寺の多目的ホールでは、大雲さんの作品を展示しており、本堂などにも多くの作品が飾られている。「ル・サロン」入選作が一通り見られるとあって、県外からの来場者も多い。拝観無料。拝観希望の際はできるだけ事前連絡を ☎0770-32-1345

 

ところが還暦を迎える2008年、北京五輪の記念行事である大規模な展覧会用に作品を準備していた時期に、脊髄を損傷し意識不明の重体となる。手術で一命は取り留めたものの、2年間の入院の後に車いすでの生活となった。

「自分の人生は終わったと感じ、一時は絵に対する思いも諦めかけました」。

しかし不自由な体となった現実を見つめ、受け入れるからこそ描ける絵もあると考え、再び筆を手にするようになった。

 

達磨を描く際は、デッサンや下絵などは一切しない。何にもとらわれることなく、ひたすら筆を動かし、決まって最後に眼を描き入れて完成させる。

「仕上がってから、こんな顔の達磨さんになったかと自分で驚くこともありますね。知らずと私の心を鏡のように映し出している気がします」

大雲さんの創作活動には大変な気力が必要だ。体調は現在も万全ではないが、気が充実する少しの時間を待って、筆を持つ。

 

「禅の考え方では、そもそも過去も未来もなく今この時だけが存在する。私がこの瞬間を精いっぱい生きて絵を描くことは、禅の心を伝えることにつながる。生涯、可能な限り描き続けていきたいです」

 

 

大雲 道人(だいうん・どうじん)

1948年、山口県生まれ。
高校時代、日展で活躍した日本画家の多田院大氏に師事して絵を始める。
曹洞宗大本山永平寺で修行後、縁あって若狭地方の2つの寺の住職となる。
後の永平寺貫主である丹羽廉芳禅師から画号を拝受。
92年には永平寺の機関紙「傘松」表紙絵を1年間担当した。
2012年、「ル・サロン」初出展で銅賞を受賞し以来毎年入選

 

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ふーぽ編集部
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