犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。「まっさらなノートでリスタート。」

犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。「まっさらなノートでリスタート。」

福井新聞社が発行するローカルライフマガジン「月刊fu」で連載中のエッセー《犬と猫と人間(僕)の徒然なる日常。》

福井県出身の編集者、小林孝延さんが、犬1、猫2との暮らしを、のんびりと綴っています。

第11回は、小林さんが子どもの頃の福井の正月に思いをはせながら、年末年始の心の習慣について語ります。

 

* * * 

小林孝延(こばやし・たかのぶ)

 

編集者。福井県出身。扶桑社発行の雑誌「天然生活」「ESSE」元編集長。石田ゆり子著「ハニオ日記」(扶桑社)、「保護犬と暮らすということ」(扶桑社)などを編集。犬1、猫2と暮らす。釣り好き。新著「妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした」(風鳴舎)が好評発売中。

第11話:まっさらなノートでリスタート。

この連載が掲載される頃にはすっかりお屠蘇(とそ)気分も抜け切って、もはや節分ムードかもしれないが、一応、書いてる時点ではまだ年末ということでご容赦願いたい。

* * *

で、お正月。

僕は毎年お正月になるとこれまでやっていなかったことをひとつ新しく始めることを目標というかテーマにしてきた。

保護犬を飼うこともそうだった。

キックボクシングを始めたのもそう。

自分の名前で本を出すこと、腹筋を6つに割ること、お酒を断つこと。

どれも簡単そうにも見えるけど、ちょっとがんばらないとできないレベルのもの。

この微妙なハードルの匙加減が重要だったりする。

でも、がんばってそれを成し遂げたとき、いままで見えなかった景色が見えてくることも知ったし、人生が大きく変わることも経験した。

* * *

子供の頃、大晦日の除夜の鐘がかすかに聞こえ始めた頃、そそくさと防寒着を着込んで近所の神社まで家族で初詣に出かけるのが恒例だった。

これは福井だけなのか?

全国的にそうなのかは知らないけれど、氏神様にご挨拶するまでは口をきかないようにということで、すれ違うご近所さんとも、静かに黙礼するだけ。

しんしんと降る雪の中を歩く厳かな空気が大好きだった。

境内ではスルメと日本酒とみかんが振る舞われた。

当時はおおらかだったから子供達も日本酒を舐めるくらいは許された。

いつも昼間に見ることしかないクラスメートと深夜に顔を合わせるだけでどきどきした。

初詣が終わって家に帰ってきてもなんだか気持ちが昂って布団に入っても眠れなかったなあ。

* * *

からりと晴れた日が続く東京のお正月。

何年暮らしても箱根駅伝の熱狂にはいまひとつ乗り切れないし、湿気を含んだ鉛色の北陸のお正月の方が性に合っているなあとつくづく思う。

今年は初めて年末をひとり家で迎えた。

おせちもひとりじゃ食べきれないし、スーパーに売ってる小さなお惣菜をお皿に移すだけで十分だ。

あれ?

なんか僕さみしいおじさん?

まあ、そうはいっても犬と猫がずっとそばにいるからなんやかんやと忙しいし、家中どこにいてもくっついてくるから、常に体温を感じて心はほかほか温かいのである。

* * *

ただ連続する日々の1日にすぎない。

それでも、年末年始で一区切りつけることで、心が新たになる。

まっさらなノートを新調してそこにお気に入りのペンですらすらと字を書いていくような新年の始まり。

いろいろあったけど去年は去年、心機一転都合よくリセットもできる。

* * *

年末に大きな決断をひとつ。

2024年はすでに今までに体験していないことが始まることがすでに決まっている。

でもまだ内緒。

▲近所の公園で福と一緒に見た初日の出。もう6年も前になるのか。びゅんびゅん時間が過ぎていく

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