2024年3月16日に北陸新幹線が開業する福井県の若狭・三方五湖エリアは、自然・歴史・食文化のすべてに恵まれた地域です。観光地としてのポテンシャルが高い一方で、地元の事業者からはインバウンド獲得に向けたノウハウ不足を心配する思いがありました。その課題解決の切り札として「若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムプロジェクト」の取り組みがなされました。
観光庁では、「地域一帯型ガストロノミーツーリズムの推進事業」で、インバウンド需要を見据え、地域一体となって付加価値の高い地産地消メニューやコンテンツ、食体験造成などに取り組む地域を支援しています。
その推進事業の一つとして、観光地域づくり法人の三方五湖DMOが計画した「ジャパネスク 北陸 若狭・三方五湖 食と観光のテロワール~地域一体となった日本古来の「御食国」の食材と世界最高峰のフランス美食文化とのマリアージュ~」が採用されました。同時に立ち上がったのが、「若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムプロジェクト」です。
同プロジェクトのテーマは「歴史と自然、地域資源を活用したガストロノミーツーリズムの推進」。主なターゲットは知的好奇心の高い欧米の富裕層を想定しています。ガストロノミーツーリズムは、「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」のことで、欧米を中心に注目が高まっています。
プロジェクトは、「メニュー開発」と「ガストロノミーツーリズムモデルツアーの実施」が2本柱です。まずメニュー開発は、フランス大使館総料理長のセバスチャン・マルタン氏が全面的に協力しました。マルタン氏は若狭・三方五湖エリアの優れた食材を選び、若狭・三方五湖エリアの料理人や高校生を対象に、それを使ったメニューの料理講習会を行いました。
また、モデルツアーは11月に3日間の日程で実施されました。在日外国人ら15人が参加し、酒蔵や昆布蔵、へしこ小屋などを巡りました。参加者からは、食材の歴史や製造について知ることができ、とても有意義な時間を過ごせたとの声が。ツアー2日目の夜には、マルタン氏による地元食材のコース料理がふるまわれました。
ツーリズムプロジェクトとは?
観光庁では、「地域一帯型ガストロノミーツーリズムの推進事業」で、インバウンド需要を見据え、地域一体となって付加価値の高い地産地消メニューやコンテンツ、食体験造成などに取り組む地域を支援しています。
その推進事業の一つとして、観光地域づくり法人の三方五湖DMOが計画した「ジャパネスク 北陸 若狭・三方五湖 食と観光のテロワール~地域一体となった日本古来の「御食国」の食材と世界最高峰のフランス美食文化とのマリアージュ~」が採用されました。同時に立ち上がったのが、「若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムプロジェクト」です。
同プロジェクトのテーマは「歴史と自然、地域資源を活用したガストロノミーツーリズムの推進」。主なターゲットは知的好奇心の高い欧米の富裕層を想定しています。ガストロノミーツーリズムは、「その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム」のことで、欧米を中心に注目が高まっています。
プロジェクトは、「メニュー開発」と「ガストロノミーツーリズムモデルツアーの実施」が2本柱です。まずメニュー開発は、フランス大使館総料理長のセバスチャン・マルタン氏が全面的に協力しました。マルタン氏は若狭・三方五湖エリアの優れた食材を選び、若狭・三方五湖エリアの料理人や高校生を対象に、それを使ったメニューの料理講習会を行いました。
また、モデルツアーは11月に3日間の日程で実施されました。在日外国人ら15人が参加し、酒蔵や昆布蔵、へしこ小屋などを巡りました。参加者からは、食材の歴史や製造について知ることができ、とても有意義な時間を過ごせたとの声が。ツアー2日目の夜には、マルタン氏による地元食材のコース料理がふるまわれました。
若狭・三方五湖エリアは、ガストロノミーツーリズムのカギとなる「自然」「歴史」「食文化」すべてに恵まれた地域です。これらの豊かな地域資源を高付加価値な料理や旅行プランに生かすことで、有名観光地を巡る旅では飽き足らない層のメッカとなる可能性を秘めています。
若狭・三方五湖エリアには、海と湖に囲まれた日本でも稀有な自然環境があります。リアス式海岸が美しい若狭湾は国立公園に指定されており、絶景スポットが豊富です。三方五湖は、水月湖・三方湖・菅湖・久々子湖・日向湖の5湖からなり、国際的に重要な湿地として福井県で初めてラムサール条約に登録されました。
古来から日本の要港があった若狭・三方五湖エリアは、仏教をはじめ大陸の先進的な文化が伝わった地域です。奈良・飛鳥時代には「御食国(みけつくに)」として豊富な海産物や塩を朝廷に献上しました。江戸時代から近代にかけて海産物を京都へと運んだ道は「鯖街道」として現在も親しまれています。
さまざまな郷土料理や行事食、「へしこ・なれずし」に代表される貴重な加工技術が受け継がれ、今も地域の食を支えています。三方五湖には淡水魚介類の食文化があり、伝統のたたき網漁で獲れるコイやフナの刺身は美味で、地元を中心に食されています。また、ウナギ料理は地域における重要な観光資源でもあります。また、若狭地方は和食に欠かせない箸の生産も盛んで、「若狭塗箸」は全国1位のシェアを誇ります。
若狭・三方五湖エリアには、海と湖に囲まれた日本でも稀有な自然環境があります。リアス式海岸が美しい若狭湾は国立公園に指定されており、絶景スポットが豊富です。三方五湖は、水月湖・三方湖・菅湖・久々子湖・日向湖の5湖からなり、国際的に重要な湿地として福井県で初めてラムサール条約に登録されました。
古来から日本の要港があった若狭・三方五湖エリアは、仏教をはじめ大陸の先進的な文化が伝わった地域です。奈良・飛鳥時代には「御食国(みけつくに)」として豊富な海産物や塩を朝廷に献上しました。江戸時代から近代にかけて海産物を京都へと運んだ道は「鯖街道」として現在も親しまれています。
さまざまな郷土料理や行事食、「へしこ・なれずし」に代表される貴重な加工技術が受け継がれ、今も地域の食を支えています。三方五湖には淡水魚介類の食文化があり、伝統のたたき網漁で獲れるコイやフナの刺身は美味で、地元を中心に食されています。また、ウナギ料理は地域における重要な観光資源でもあります。また、若狭地方は和食に欠かせない箸の生産も盛んで、「若狭塗箸」は全国1位のシェアを誇ります。
ツーリズムプロジェクトについての
リポート
若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムプロジェクトで、料理指導・メニュー開発アドバイスを担ったのが、在日フランス大使館総料理長のセバスチャン・マルタン氏。来日して約20年が経ち、優れた日本の食材への造詣が深いトップシェフです。
マルタンシェフは、まず若狭・三方五湖の生産者を自ら訪ね歩きました。そこで出会った地域ならではの食材をテーマに、若狭・三方五湖エリアの料理人や高校生を対象とした「ガストロノミーの料理・メニュー開発」講習会を10月に2回開き、マルタンシェフ自ら調理を実演してポイントを解説しました。
また、11月に実施された若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムのモデルツアーでは、マルタンシェフによるスペシャルなディナーコースが提供されました。情緒溢れる空間演出も好評で、プロジェクトが推進する高付加価値・高単価化のヒントがたくさん詰まった一夜でした。
料理指導・メニュー開発アドバイザー
セバスチャン・マルタン氏
在日フランス大使館総料理長。1977年、フランスのナントで生まれ、幼少期より料理人を志す。「ラデュレ」シャンゼリゼ店やミシュラン二つ星店「グアルティエーロ・マルケージ」など数々の名店で修業を積む。
2003年に「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」六本木ヒルズ店オープニングに際し、来日。2004年から在日フランス大使のプライベートシェフを務め、現在は大使館総料理長。2013年フランス農事功労章 シュヴァリエ受章。
2017年「ラ・フレンチ・タッチ」を設立。日本各地を巡り、美食の探求を続けています。
料理指導・メニュー開発アドバイザー
セバスチャン・マルタン氏
在日フランス大使館総料理長。1977年、フランスのナントで生まれ、幼少期より料理人を志す。「ラデュレ」シャンゼリゼ店やミシュラン二つ星店「グアルティエーロ・マルケージ」など数々の名店で修業を積む。
2003年に「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」六本木ヒルズ店オープニングに際し、来日。2004年から在日フランス大使のプライベートシェフを務め、現在は大使館総料理長。2013年フランス農事功労章 シュヴァリエ受章。
2017年「ラ・フレンチ・タッチ」を設立。日本各地を巡り、美食の探求を続けています。
マルタンシェフは、2023年8月に1週間をかけて若狭・三方五湖エリアの農漁業の生産者を訪問しました。
同行した三方五湖DMOの美浜町健康楽膳拠点施設「こるぱ」館長の岩本克己氏は、生産者に食材の歴史的背景や気候風土、栽培の特長などを熱心に聞くシェフの姿に感銘を受けたといいます。
「私の自宅にシェフが宿泊し、地元食材の試食、それを使った料理の試作を繰り返しました」(岩本氏)
そうして選ばれたのが、ウナギ、ふくいサーモン、アオリイカ、若狭マハタなど魚介、ナスや椎茸、紅映梅、若狭米など農作物、若狭牛や鹿肉などの食材たち。
熊川葛や昆布、米酢、へしこといった加工品もマルタンシェフがセレクトしました。「若狭・三方五湖の食材のポテンシャルは非常に高い」とシェフは太鼓判を押します。
マルタンシェフが選んだ食材を使ったメニュー開発講習会が、2023年10月2日と30日の2日間、美浜町の交流施設「こるぱ」において開催されました。講習会ではマルタンシェフが厨房に立ち、地元のフレンチシェフやフードクリエーターがサポート。参加者は若狭・三方五湖エリアで旅館や飲食業に従事する人たちが中心で、2日間合わせて幅広い年代の約30名が集まり、関心の高さが伝わってきました。
飲食・旅館業の従事者に対するメニュー開発研修①
1回目の10月2日(月)の講習会ではウナギやふくいサーモン、鹿肉をメインに使った料理が披露されました。参加者はシェフの招きで席を立ち、厨房近くでシェフの調理を間近に見ながら熱心にメモをとる姿も。途中、シェフがウナギをつるし切りする様子に驚きの声があがりました。
ウナギはフリッターや赤ワイン煮込みで供され、賞味した参加者は「自分の店では、ウナギを炭火焼きの蒲焼きで提供しています。シェフのウナギ料理も酸味が爽やかでとても美味しい。調理法の幅が広がりそう」とヒントを得た様子。
また、「今日教わったサーモンのリエットは和食店でも取り入れやすい」との声や、「ナスのキャビアという料理は、ナスをミキサーにかけて簡単に作れるのでぜひ取り入れたい」との声も聞かれました。
DAY2 2023.10/30
飲食・旅館業の従事者に対するメニュー開発研修②
2回目となる10月30日(月)の講習会には新たな参加者が加わり、1回目を超える人数が集まりました。高級魚・若狭マハタや黒毛和牛・若狭牛をメインにした料理、へしこサラダ、若狭米で作るパエリアなどの実演が行われ、参加者は調理の秘訣をシェフに熱心に質問し、試食で味を確かめていました。
「マハタのクネル」を食べた参加者からは、「高客単価の旅行客は量より質を求めており、マハタをすり身にするという発想は新鮮で参考になります」という声や、「皮を乾燥させて焼いたものが添えてあり、パリパリの食感がアクセントになって美味しい」との声が。また、フランス料理の神髄ともいえるソースを学ぶために参加したという女性は、「昆布を使ったタルタルソースがとても印象に残りました。この地域は海も湖も山も近く、新鮮な食材の宝庫。その持ち味を生かせるソースの開発に役立てたいです」と手応えを感じていました。
DAY3 2024.1/15
美方高校・食物科の生徒に対するメニュー開発研修
2024年1月15日には、福井県立美方高等学校において「若狭・三方五湖ガストロノミーの料理 メニュー開発・研修」が開催されました。参加したのは、美方高校の「食物科」で学ぶ2年生29人の生徒たち。食物科は県内県立高校で唯一、厚労省の認可を受けた調理師養成機関で、卒業時に国家資格である調理師免許を取得できます。
当日は、マルタンシェフが東京のフランス大使館からオンラインで参加。若狭・三方五湖の魅力と食材について語り、未来の食のエキスパートたちにエールを送りました。続く実習では、小浜市でフランス料理店「LA PETITE PLAGE(ラ・プティプラージュ)」を営む三宅寿宜シェフが講師を務め、地元特産品をふんだんに使った「マハタのグジョネット 紅映梅のクレームと蔵囲昆布のタルタルソース」の調理デモンストレーションを行いました。
その後、生徒たちはいよいよフランス料理の調理にチャレンジ。作ったのは「山内かぶらと合鴨のカイレット 牡蠣と牛蒡のピューレ添え バルサミコと赤ワインのソース」です。カイレットとはハンバーグのようなフランス南部の郷土料理で、三宅シェフは若狭町山内の伝統野菜「山内かぶら」を混ぜ込むことで瑞々しさを加えました。デモンストレーションの後、生徒たちは各班に分かれ、三宅シェフや食物科の先生のアドバイスを受けながら新感覚のフランス料理を完成させました。
生徒たちは自分たちが作った料理を味わい、立教大学名誉教授の村上和夫氏による「組み合わせて作る新しい食」の講義を受け、売れるメニュー開発の理論を学びました。
生徒からは「山内かぶらを調理したのは初めて。蕪を焼いて持ち味を引き出す技を学べ、良い経験になりました」との声や、「レストランで出てくるような本格的な料理を、みんなで協力して作ることができました。とても達成感があります」「合鴨というジビエを扱えたのが新鮮でした」などの感想が寄せられました。また、講師からは、限られた時間内で手際よく料理に仕上げた生徒たちの力量に感嘆する声が聞かれました。これからの若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムを担う高校生たちが、数多くの気付きと自信を得たメニュー開発・研修会となりました。
若狭・三方五湖ガストロノミーツーリズムプロジェクトでは、11月17~19日の3日間、モデルツアーも実施しました。ツアーは旅行会社の旅工房が企画し、三方五湖DMOが開いたもの。ツアーには在日外国人ら15名が参加し、若狭・三方五湖エリアの食文化や自然、歴史にまつわるスポットを巡りました。
まず1日目は敦賀駅を出発し、高級昆布の専門店「奥井海生堂」を訪問。天然利尻昆布を2年、3年と専用昆布蔵で寝かせて旨味を増す「蔵囲昆布」は有名シェフからの評価が高く、マルタンシェフも講習会で使った昆布です。昆布蔵を見学した参加者は「日本の“だし”の奥深さを知ることができた」と目を輝かせていました。2日目は日本酒「早瀬浦」を醸す三宅彦右衛門酒造、3日目には日向へしこ酵房「日の出屋」のへしこ小屋も見学し、地域の食文化への理解を深めました。
三方五湖の一つである水月湖で発見された7万年分、長さにして45mの年縞を展示する「福井県年縞博物館」や、「美浜町レイクセンター」など主要観光施設も訪れ、レイクセンターでは再生可能エネルギーを活用して運航する電池推進遊覧船に乗船しました。
ツアーのハイライトになったのが、2日目の夜に県道三方五湖レインボーライン山頂公園駐車場にあるレストラン&カフェ「RAINBOW」でふるまわれたディナーです。マルタンシェフが調理を担当し、若狭まはたや若狭牛、参加者が蔵を見学した昆布などを取り入れたコース料理がふるまわれました。それぞれの料理に合わせた日本酒やワインも一緒に供され、参加者からは「素晴らしいマリアージュ」との声が。若狭和紙で作られたランプシェードの明かりがともる空間演出も大好評でした。
ガストロノミーツーリズムプロジェクトは、若狭・三方五湖エリアの事業者に多くの気づきをもたらしました。フランス大使館総料理長による料理講習会に参加した飲食店や旅館のスタッフからは、地域の食材の素晴らしさを再認識したとの声が多数寄せられました。また、インバウンド向けに特別な食材を用意しなくても、普段使っている食材の調理の幅を広げることで十分対応できるとの自信を得ました。講習会で学んだ料理を実際に取り入れる動きも広がっています。
ガストロノミーツーリズムのモニターツアーも、インバウンドの真のニーズを探る絶好の機会となりました。参加した外国人のアンケートを踏まえて内容を磨き上げ、来年度にもツアーの販売を始める予定です。
さらに、同プロジェクトの大きな成果として、生産、加工、観光といった地元産業の連携が深まり、インバウンドの誘客に向け地域一丸となって取り組む機運が育まれました。今後の若狭・三方五湖エリアに期待が高まります。
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三方五湖DMO株式会社
〒919-1122 福井県三方郡美浜町松原35-16-2
TEL:0770-47-5344
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