「おいしい魚の文化を守るため、全国の浜の漁師たちと手を結んでいきたい」坪内知佳さん【ふくい人に聞く】

坪内さんは大学在学中に結婚し、萩市へ移住。そこで翻訳と経営コンサルタントの事務所を設立した。

ある時、経営難に苦しむ大島の船団から相談を受けたことが縁で経営に関わるようになり、その後、請われて25歳で船団の代表に就任した。

坪内さんは、「それまで魚をさばくどころか、ろくに触ったこともなくて。『若い娘が何も知らんくせに』って、最初は本当に怒鳴り合いばっかりでしたね」と振り返る。

以前は水揚げするまでが仕事で、商売に関してはどんぶり勘定が当たり前だった漁師たちに、きめ細やかな「お客様目線」の必要性を粘り強く説き続けた。

坪内さんが都会で営業活動をする際に彼らを同行させ、自分たちが獲った魚が料理店で食べられている様子を実際に見せると、漁の現場での意識が大きく変わったという。

取引先の数と出荷量は少しずつ増え、事業は軌道に乗っていった。

現在はシングルマザーとして小学生の息子と暮らしている。大島の漁業の振興に尽力するのは、彼のためでもある、と坪内さんは話す。

「わたしにはたまたま縁があって住んでいる土地でも、息子にとってはたった一つの故郷なんです。将来まで長く、この地が栄えていける形を作るのが私の役目だと思っています」 

萩大島の成功モデルを全国に広げるコンサルタント業務にも着手していて、この福井県内での仕事にもつながっている。また現在は、海外への販路の展開も模索中だ。

「大島で成功した6次化のビジネスモデルを水平展開させる〝8次化〟が次のステップです。日本のおいしい魚料理の文化を存続させるためにも、全国の浜の漁師たちと手を結んでいきたいですね」