【特集対談】受け継ぐ “お直し” The Suit Speaks.―装いの内側で―

(左)藤田伸朗氏、(右)SARTO代表 檀正也氏

「お直し」。それはただの修理でも、サイズ調整でもない。―大切な一着に、もう一度命を吹き込む魔法のような行為だ。

銀座を拠点とする洋服お直し専門店「SARTO(サルト)」の代表・檀正也さん。創業25周年という節目を迎えながらも、今なお“次の挑戦”を追い続けるファッション界の重鎮だ。

北陸の地にサルトの哲学を持ち込み、ショップインショップ型のリメイク・お直しサービス「the SARTO」を展開する、DEN planning代表・藤田さん。

東京と地方、それぞれの立場から語られる“お直し文化”の現在地と未来。そして話題は、1着の服を次世代に「受け継ぐ」という、新たな価値へと広がっていきました―。

―PROFILE―
 聞き手:藤田伸朗 氏 
「the measuring order salon代表/フィッティングマイスター。株式会社DEN planning 代表取締役。アパレル一筋の1970年生まれ。カジュアルからスーツ、タキシードまで、多彩な経験値でのスタイリングを得意とする服好き。職歴からもインポートへの造詣も深く、グローバルなセンスや提案に惚れ込む経営者やリーダー、ファッショニスタからの評価も高く、年間約200着以上の指名を得る。この「スーツオヤジ図鑑」の企画・発行人でもある。

 「SARTO」代表:檀 正也 氏 
サルト株式会社代表。2000年に有限会社サルト設立。2007年サルト株式会社へ組織変更と共に東京都渋谷区に本社移転。2009年サルト銀座店オープン。工房兼事務所を移転し現在に至る。構造から服を作り直すテクニックは、ロンドン、ミラノの一流テーラーをはじめ、世界各国の一流メゾンから高く評価されている。体形と個性に合わせたカウンセリングと職人による洋服の修復・補正、サイズ直し、リフォーム、テーラーメイド、かけつぎ、革製品の加工、各種カスタマイズを手掛ける。
SARTO 銀座本店 東京都中央区銀座2-6-15 第一吉田ビル2階
https://sarto.jp/

「売る」から「直す」へ。 意識のギャップと可能性。

 お直し文化を北陸でもっと盛り上げていきたいです。 

 藤田  金沢でthe SARTOを始めた時、高級セレクトショップに『サイズ直し以上のこともできますよ』って営業に回ったんですが、『新品が売れなくなるからいい』って断られてしまったことがあって。その気持ちは理解できますが、東京ではどうですか?

 檀  よく聞く話ですね(笑)。

でも今、サルトが入っているのは百貨店や高級ブランドのフロア。『高級ブランドだからこそ、ちゃんと直したい』っていう意識があるんです。

“ちゃんと”っていうのは、パターンを理解して、技術を持ったフィッターがしっかり見てくれるという意味。

お洒落な人ほど、ちょっとしたお直しでバランスが崩れた経験があると思うんです。

人口比率的に都心部と地方の格差はあるかもしれませんね。

サルト銀座店は、世界的メゾンブランドから直接連絡があったりもしますから、消費者に限らず販売側の意識にも変化の差はあるのかもしれません。

 藤田  クルマのメンテナンスみたいなものでしょうか。

好きで乗ってる愛車を整備に持って行ったら『古いから買い替えましょう』って言われたら、やっぱりモヤモヤしますよね。

でも、車好きな担当者が気持ちを汲んで、あまり売上にならないメンテナンスにも対応してくれる、そして、提案してくれる。

そうなったらタイミング次第では新車を買いますよね。

“モノ”ではなく“想い”を繋ぐ。受け継ぐお直し

 先輩からもらったスーツのお直しを見て「やっぱり返して」って言われたそうです(笑) 

 檀  最近増えているのが“受け継ぐお直し”です。

おじいさまやお父さまの服を、お子さんやお孫さんが着られるように直してほしいって。

藤田さんのところでもありましたよね?亡くなったお父様のスーツを息子さんが就活用にと、お直しされたケース。

 藤田  ええ、あの時は感動しました。息子さん無事に東京で採用決まりましたよ。

お直し中にもお父さんの思い出話をされてました。整理してたら服がいっぱい出て、身長が同じくらいだから着れそうなのが何着かありそうだとか。

 檀  若い世代ほど、そういう感覚を自然と持っている。

わざわざ“サステナブル”とか言わずに『これ、かっこいいじゃん』『直して着れるじゃん』っていう素直な気持ちですね。

それで仕上がった服を家族に見せたら、皆が涙を浮かべて喜んだ…そんな報告も珍しくありません。

それで次はお父さまがスーツを作って欲しいと来店されたり。

お直しは“文化”だ。街と人に根ざす未来へ。

 藤田  “受け継ぐ”って、色んなカタチがありますよね。

亡くなった旦那さんの服をリメイクして奥さんが着たり、あと、職場の先輩が後輩に譲ったり。

昔はよくありましたよね、先輩が『コレ、着ろよ』って。

 檀  それでブランドを知ったり、着こなしを真似てみたり。

そういう文化、戻ってきてますよ。最近も『先輩からもらったスーツを直したい』というお客様が来て。

仕上がりを見て先輩が『やっぱり返して』って言われたそうです(笑)。

洋服に対する想いや関心が広がるだけでも僕らは嬉しいですよね。

だから藤田さんが北陸ではじめてくれたthe SARTOのような存在はとても重要なんです。

 藤田  “お直し文化”を、北陸でもっと盛り上げていきたいです。

 檀  今回創刊された『スーツオヤジ図鑑』、すごくいいと思います。

たとえば“前社長から新社長に受け継がれる一着”みたいな企画もぜひやりましょうよ。

 藤田  いいですね! ビフォーアフターとして二人一緒に登場してもらって。そのときは『SARTO特集号』ですね!

EDITOR’S NOTE

“既製品はお直しして完成する”とも言われます。たとえばジャケットの袖丈やパンツを数センチ詰めるだけで、カッコよく素敵になります。

一方で、”受け継ぐお直し”は、大切なものに思いを込めることで完成します。

きっと継がれる方の思いに寄り添えるフィッターが、さらに次の後継者にも引き継げるような直しや提案をしてくれるはずです。

服は生きています。余程のことがない限り、服(生地)に適したケアメンテナンスでずっとお気に入りの服を着ることができます。

デザインに飽きればリメイクしてもいいでしょう。あなたが着ている服はあなたの生き様や性格までをも映し出します。

ご自身の、そしてご家族のクローゼットを見直してみませんか。

服を受け継ぐことは、思いをリレーすること。

誰かの顔が浮かんだら、気軽にthe SARTOまで問い合わせしてみてはいかがでしょうか。


the SARTO(金沢店)
石川県金沢市泉一丁目5-4 ザ・ビルヂング金沢泉1F
☎076-218-4176
東京銀座のSARTOのお直しサービスを受けることができる、日本海側初となる店舗が石川県金沢市にある「バーカウンターのあるスーツ屋 the KANAZAWA」に2023年より併設オープン。姉妹店であるthe TOYAMAでも同様のサービスを受けることができる。

※本記事の情報は取材時点のものです。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

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